決戦
「一旦引き返したらどうだろうか?」
翌日、キョウが眠るなか皆に提案してみる
「それは出来ればやめた方がいい。このまま討伐に行く」
ジンの反論になぜかと尋ねてみた
するとドラゴンが期日を設けていてその日までにキョウを連れていかないと村を襲ってくると言ってきた
そしてその期日が今日だったのだ
ならば村で全員で迎え撃ってはと再度提案したのだが、それだとドラゴンは上空から攻撃してきて、我々には対空手段がほとんどなくまず勝ち目がないのだと。なので洞窟のなかなら飛べないのでまだ勝てる見込みがあると
その後も話し合いが行われたが結局結論がでずキョウが目覚めるまで待つ事となった
キョウ自体は顔色も良くなり穏やかな寝息で寝ているだけだったのであとは目覚めるのを待つばかりだったのだ
そして昼近くになったら目覚めたキョウ
「助けていただき本当にありがとうございました」
目覚めて深々とお礼を言ってきたキョウ
しかし体調がまだよくないのか頭を上げたら顔が赤くなり視線をそらしたのだった
キョウが起きて改めて話し合った結果討伐は続行される事となった
キョウは、もう大丈夫だと言っていたが、オレはそれは嘘ではないかと思ってしまった。それは昼食を食べたときのキョウの反応を見たからである
昼食は薬膳粥を食べたのだ
またギルズバトの大群遭遇する可能性があり、ならば先に解毒作用のある薬膳粥を食べとけばある程度予防になると思ったのと、念のためキョウを解毒させとくためだったのだ
薬膳粥を作り終えた時キョウは少し赤い顔をしていて、さらには食べ始めた時にはうつむき顔が真っ赤になり頭から湯気が出ていて少しずつしか食べなかったのである
心配になり声をかけるとかすれるような小声で
「いえ…その………おもい………だして…………しまい…………ますから」
最後のほうは良く聞き取れなかったが相当体調が悪いのではと思ってしまったのだ
しかしなぜジン達はあんなにニヤけた顔をしていたか不思議であった
オレが分からなかった理由はそういった事はリリィとしているわけで、あれも緊急時の仕方がない事で特に気にしていないのだが、キョウはそういったことに免疫がなく過剰に意識しているだけだったのだ
食事が終えたところで改めて洞窟へ向かう事にしたのだ
すると今度はギルズバトに遭遇する事なく洞窟まで行けた。キョウの方ももう大丈夫のようだった
そしていよいよドラゴンとの決戦が始まるのだった
洞窟を進むと開けた場所に出でそこにはドラゴンが横になり寝ていた。どうやら洞窟と言ってもトンネルのようなものだったらしくて上は吹抜でよく空が見えたのだった
オレたちが近づくとドラゴンは気がつき身を起こし2本足で立ち上がると4メートルぐらいになりそしてオレたちを見下した
「ヨウヤク来タカ」
唸るようにしゃべるドラゴン
オレたちは一言もしゃべらず近づく
「サァ我ガ贄トナレ」
一定距離のところで止まるキョウ以外のメンバー
キョウはうつむいたまま近づく
「コレデ我モ」
直後、顔を上げるキョウ
そして妖術を放った
「グヲォォォォ」
爆音と共に声を上げるドラゴン
しかしそれで終わりではなかった
キョウが妖術を放つと同時に駆け出しドラゴンに近づくジンとリュン。飛びかかるように切りつけ、遅れてオレとヤンも切りつける
そしてブドウがドラゴンのあごに、それこそアッパーをするように盾で体当たりをしてドラゴンを押し倒し叫び声をあげて倒れた
完全なる奇襲
しかしこれで終わるはずがないとわかっていたのですぐに構えるオレたち
「貴様ラ許サンゾ」
やはりそこまでダメージが与えられなかったのか身を起こし立ち上がるドラゴン。しかし即座にジンとリュンが切りかかりそして下がり距離をとったのだ
ドラゴンはそれを追うように前足の爪で攻撃してきたが元から離れていたのでジンとリュンは軽々しく避ける
そして下がった腕がある方から切りかかるオレ。だがオレもジン達みたくすぐ下がり距離をとったのだ
注意がオレに向き振り向いた瞬間ヤンが逆から切りかかり、そして下がり距離をあけた
隙を見てキョウが後方から妖術を放ち怯んだ隙にまたジンとリュンが切りかかった
現在陣形としてはドラゴンの正面にジンとリュン。右側にオレ、左側にヤン離れた後方にキョウ。ドラゴンとキョウの間にはブドウが陣取っていた
そして各自隙を見ては攻撃してすぐ下がるを繰り返していた
決して深追いをせず、深追い出来そうな時でもやらず徹底していた。これには訳があった。オレたちには一撃必殺になりうる攻撃できる者がいなかったのである
だからオレたちは持久戦をしようとしたのである。とにかくこちらがダメージを受けないよう気をつけて。手数はこちらの方が多いのだ、そして誰か1人に注意がいかないようにとにかく慎重に攻撃した
そしてこれがうまくハマった
ジンとリュンがメインで、オレとリュンが遊撃。キョウが牽制と砲撃として。ブドウには徹底してキョウを守ってもらった
キョウの妖術はかなり牽制として優秀で攻撃しようとするたび横やりを入れるような感じだった。また、ドラゴンが誰かを攻撃しようとするとこちらは誰かが攻撃してドラゴンの邪魔をしていたのだった
なのでドラゴンの攻撃は誰にも当たらずオレたちは無傷で戦えていたのだった。ただドラゴンが放つ炎のブレスだけは気を付けなければならなかったが、炎のブレスを放つ時は動作でわかったのと、その時は必ずキョウが妖術を使ってくれたのだった
妖術様様といった感じだった
だがドラゴンは明らかに隙をうかがっていた。おそらくキョウを狙っていたのだろう。しかしこちらとしてもキョウの牽制が攻撃の要だとわかっていたので隙を与えず徹底的に休みなく攻撃し続けた
さらにはブドウの存在が大きかっただろ。キョウを攻撃しようとしても防がれるのは目に見えていたのだった
しかし恐れていた事が遂にその時が来てしまった…
だいぶ疲れがたまってしまったのかジンが一瞬避けるのが遅れて爪がカスったのである
「ジン!!」
皆ジンを心配して声をかけた
そして
一瞬動きを止めてしまったのである。そしてドラゴンはそれを見逃さなかった。その瞬間一切脇目も降らずブドウに特攻したのだった
頭でブドウを吹き飛ばしそのままキョウの目の前に立つと爪で引っ掻いたのである
「キョウ!!」
キョウに襲いかかる爪、だがドラゴンが特攻したタイミングですでに回避行動に出ていたのだ。しかしこの時不運にもキョウの服に爪が引っ掛かりキョウは投げ飛ばされてしまったのである
あと5㎜でも離れていればそんな事にはならなかったのに…とにかく不運としか言えなかった
「きゃぁぁぁぁ!!」
悲鳴と共に飛ばされるキョウ。そして地面に落ちると転がりそして動かなくなってしまった。いくら直接攻撃が当たってはいないがかなりの高さから落ちたのだ、無事ではないだろう
ジンとリュンが慌ててドラゴンに切りかかるとドラゴンはその場を離れて避けた
「タケル!!キョウを頼む!!」
ジンの声に駆け出しキョウのもとへ向かうオレ。だがこれが間違っている事はオレはわかっていた。はっきり言ってジン、リュン、ヤンの3人でドラゴンを抑えられるはずがなかったのだ
しかしキョウは攻撃の要。そして一旦退却するにしても同じだった。キョウの妖術による牽制がなければ逃げ切ることなど不可能だったのだ
なので危険をおかしてでもキョウのところへ行かなければならなかったのである。とにかくキョウの無事を確認しなければいけなかった
キョウのところに着き声をかけるとゆっくりだが起き上がった
「すみません。ですがまだ戦えます」
肩を押さえて痛々しそうとしていたがどうやら無事だったようだ
そしてドラゴンの方を見てオレは落胆した
なんとか凌いではいたが確実な防戦一方だったのだ。攻撃を回避することに必死で反撃など出来ずにいた。そしてブドウの方も見てみたらなんとか無事のようだったがかなりダメージを受けていた
はっきりいってこのままでは確実に全滅してしまうこがわかってしまったのだ
(なにかないのか!?)
現状を打破する方法をオレは必死で考えたが思いつかず
「キョウ!なんでもいい!あいつの、ドラゴンの情報をくれ」
キョウの肩を掴むと必死な想いで尋ねた。するとキョウも今はそんな事をしている場合ではない事はわかってはいたがオレの叫びにもしかしてと思ったのか
「あれはフレイムドラゴンだと思います。ドラゴンには他にアイスドラゴン、アースドラゴン等がいます」
基礎知識的な事から話始めたキョウ。何がきっかけになるか分からないのでオレもただキョウの語りに耳をすました
「また、ドラゴンの中にはあのように知識あり、人語を話す者もいるようで」
(違う、それじゃない)
分かってはいた…しかし
「ドラゴンが好んで食らうのは魔力量が多い者が多いと言われています」
(それじゃ駄目だ!!)
キョウの話に必死で耳を傾け心では苛立ち光明を探しだそうとしていた
「ドラゴンの伝承しましては過去に完全支配して世界を滅ぼそうとした人族の者もいまして、その者をドラゴンロードと呼ばれていたようで」
(違う!違う!!違う!!!!)
キョウは悪くない。しかしキョウの語りに苛立ちを覚え知らず知らずのうちに手を強く握りしめていた
「それと今から150年ほど前には聖騎士10名で討伐した事があるのですがそのときドラゴンを始めて食し大変美味だった事がわかり、さらには鱗は強力な鎧になったとかで」
「今なんていった?」
オレはキョウの語りを止め尋ねた。確かに聞こえた光明
そして
「強力な鎧に?」
「違う!?その前!?」
「大変美味で?」
「食べたのか?」
「えぇ…今でも高級食材ですよ」
「それだぁぁ!!!」
見えた光明
オレは叫んで喜んだ。そしてドラゴンを方をみた
スキル《食材鑑定》
するとあらゆる情報がわかったのである。つまりドラゴンは食材だと言うことだったのだ。それならばオレが持つ料理スキルが有効だと
「ありがとうキョウ、なんとかなるかもしれない」
キョウに礼をいい即座に駆け出した
いまだ防戦一方だがドラゴンはオレには注意を向けていなかった。そしてオレは側面に着くと改めて《食材鑑定》を使用し確認する
ドラゴンが食材だと改めて確認したところで剣を強く握り閉めると一気に走り出した
狙うところはただ一点
ドラゴンの背後。そして飛びかかり切りつける。ドラゴンの翼は食べられないから不要なところ。だから存在する切断ポイント。もう確実に外さない位置。狙いは翼の付け根
状況を打破する一撃。渾身の力を込めて
「うらぁぁぁぁ!!!!!」
スキル《不要部位切断》発動
そして
直撃して
パーン
切れなかった……
(な……に………?)
オレの放った渾身の一撃は高い音をたてて止まられていた。そしてキズ一つつける事が出来なかったのである
あまりの事にバランスを崩しながら膝をついて着地した
そして考えてしまった
(なぜ…だ?確かにスキルは発動していた……位置も間違っていない……ならなぜ切れない?何故だ………)
「タケル様ぁぁぁぁぁ!!!!」
キョウの叫び声で我に還った
すると目の前には絶望的な光景が……
もう回避不可能な位置にドラゴンのしっぽが迫っていたのだ
そして
「ぐわぁぁぁぁぁ」
ドラゴンのしっぽによる攻撃はオレに直撃。ほぼ防御などしていない状態で攻撃を受けて吹き飛ばされ、10メートル以上吹き飛び地面を凄まじい勢いで転がり止まった時にはボロ雑巾のようになっていた
「タケル様ぁぁぁ」
キョウは叫びながら痛みを我慢しながらオレに駆け寄ってきた。その顔は悲痛で涙ぐんでいた
(く……そ………)
オレはあまりの痛みに半分意識を失いかけていた。もしかしたら骨が折れてたりヒビが入っていたかもしれない。なんとか起き上がろうとしたが動かない体
キョウがなにかいいながらよってきていたが良く聞こえない
そしてうつろな瞳で見た光景
そこには絶望的なものが……
おそらくオレが吹き飛ばされ事に驚き動きを止めたジン達。それを好機とみたドラゴンはジンに脇目も降らず攻撃していた
おそらくジン、リュン、ヤンを順番に倒そうと考えその中でもジンを倒せばもう反撃出来ないと考えたからであろう
そしてそれは間違いなく正しくて、このままジンが倒されれば全滅は確実だろう
いや、もう全員殺されるのは確定しただろ
もう現実は変えられない
オレは絶望した
もうどうにもならいと
そして
ついには
オレは諦めてしまった