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油断大敵

 

 村を出で結構たった。今はドラゴンがいると思われる洞窟に向かっていた


 洞窟まではかなり距離があり夕方ぐらいには着くらしい。なので洞窟の手前で野宿して、明日討伐する予定でいた


 メンバーはオレを含めて6人


 和服に刀を持ったジン、身長は低いが大太刀をもったリュン、ひょろっぽい感じで鎖がまをもったヤン、一番の大柄で大盾を持ったブドウ、そしてキョウ


 ジンは村最強で他の者も精鋭らしい


 そしてキョウは妖術の使い手だった


 ちなみに魔法と妖術の違いはなんだろと思い聞いてみたがよくわからなかった


 それとキョウには生け贄のフリをしてもらうこととなった。つまりは生け贄を連れてきたと見せかけて不意を着く作戦なのだ


 道中は比較的楽だった。オレだけ


 ちょくちょく色々な魔物が襲ってくるが前衛の3人、ジン、リュン、ヤンがそれは見事に(さば)く、鮮やかすぎて拍車すらしたくなった


 そしてそれを抜けた魔物はブドウの盾によって止められ、キョウによって滅された


 とにかく見事。オレ不要


 そもそも隠れ里なのだからあまり人が来ないところに村は作られている


 そして大概人が来ないところとかは魔物が多く生息しているわけで普段から魔物相手に戦闘をしているので強いのは当たり前


 そして今オレの周りにいるのはそのなかでも精鋭


 守られるオレ、姫様気分


 姫様はキョウの方だった


 しかし一番活躍しているのはキョウ。妖術で牽制とかするので前衛も楽に戦闘が出来ていたのだ。そんな訳でブドウが中核たるキョウを専属で守っていた


 しかしどういうわけかキョウはオレが物凄く強いと思っている見たいで、今もろくに戦闘しないのはドラゴン討伐に全力を注ぐために温存しているのだと思い込んでいた


(いや、そんな期待を込めて見られても…)


 キョウ熱い視線に居心地を悪くしていたけれどもそんな事を言っていられない事態に陥った


 それはあと少しで目的の洞窟の近くというところでおきた


「くそっ、ギルズバトか!」


 ジンのこわばった声、どうやら焦っていたようだ。そして見てみるとそこには巨大なコウロギのような虫がいた


 ジンが戦いながら説明してくた


 このギルズバトはそれほど強くはない。実際オレでもそれなりに倒せているのだから。動きとかもそれほど早くなくきちんと見れば攻撃は避けられし当てる事も出来る


 しかしこの虫は集団で襲ってきて、さらには猛毒を持っているため噛まれるのは危険だったのだ


 現在キョウの妖術で牽制してもらいながら、お互いの死角をカバーして一定距離を保ちながら戦っている


 とにかく不意打ちで噛まれるのが一番危ないらしいのだ


 しかし、あまりにも数が多かった。捌いても捌いてもキリがなかったのである


 次第に全員疲れ始めだいぶ危なくなってきていたが…


「だいぶ減ってきたし、あと少しだろ」


 呼吸が乱れながらだがジンが告げてきた。今のところ誰1人噛まれるどころかキズ一つつけられていないのだ。とにかく現状維持で戦えば無事終わるだろうと思っていた


 しかし、その思いが油断を誘ったのだろう


 それは唐突に起こった



「きゃぁぁぁ!!!」



 キョウの悲鳴


 振り替えると尻餅をつき足にはギルズバトが噛みついているキョウの姿。とっさに駆け寄ると剣でギルズバトを切り殺す


 そしてキョウを見ると苦悶の表情をしていた



「くっ、姫様!」「この!」「おらぁぁ!」「ぐぬぬぬ」



 ジン達4人は駆け寄ることも出来ずギルズバトを捌いてもいた


「タケル!姫様を連れてとにかく一旦離れろ!!」


 ジンの叫びに従いキョウを抱えその場を急いで離れた


 相当痛むのだろう。半分意識を失ったようなキョウは肩を貸してもうまく歩けずにいた。そして唸りをあげ苦しんでいた


(とにかく距離を…安全な場所につれていかなければ…)


 どれ程歩いたかはわからない


 すでにギルズバトの姿はなく小川があったのでその場へキョウを寝かせてみる事に


 そして改めてキョウを見るとすでに顔色は悪く、脂汗も相当かいていてかなり苦しんでいた


 しかしオレにはどうする事も出来なかった


(くそっ!?どうすればいい)


 必死に頭を使いどうにかキョウを救えないか考えたが、しかしわかるはずもなかった


 そうしている間もキョウは苦しんでいた


 そんな姿を見ていると胸が締め付けられ自分の無力さに腹がたった


 とにかくキョウを救わなければ…


 その思いからだろう、袴を少しめくり傷口を確認するとオレは口をつけて吸出した


 今さら手遅れだとは思うがやらないよりマシだろうと…


 しかし結果としてそれが1番正しかった


 いくらか血と一緒に毒を吸出し、傷口を布で塞ぐと丁度ジン達が追い付き合流したのだった



「ジン!!バルナト草とミルゾ草、それにゴゾ草、ティバの実、チルークの葉は近くに生えてるか!?生えてるならすぐとって来てくれ!!」


「あると思うがなぜ?」


「いいから早く!!!」


 オレの緊迫した声に納得はしていないが従い取りに行くジン。そして手伝いとしてリュンが同行


 残ったヤンとブドウに指示を出し料理を始めたのだ


 この時何がおきたか?


 それは毒を吸出した時、つまり毒を口に含んだ時たまたまスキル《味覚繊細》が発動してさらに《食材鑑定》が発動したのだ


 どういう理屈だったかはわからないが結果とした解毒方法を知れたのだ。しかし薬草調合の知識がないため解毒薬を作ることが出来ない…


 そこで同じく薬草を使う《薬膳料理作製》を試しに発動したところレシピがわかったのだ


 レシピさえわかればこっちのもの、あとは時間との勝負だった。ジン達が薬草を取りにいっている間に下ごしらえを整えるとリュんが一足先帰って来た


 まずはそれらを煎じておく、そしてジンを待つことに……


「すまない、遅くなった…」


 戦闘の時でも見たことのない汗だくで疲れきったジンが残りの薬草を抱えてやって来た


「構わない、よく全部見つけてきてくれた」


 ジンから薬草を受けとると仕上げへと取り掛かった


 急いで作ったがそれでも時間がかかってしまった。すでにキョウの顔色は相当悪く呼吸も荒い。もう意識があるのかさえわからないぐらいだった


 キョウを抱き起こすとスプーンで薬膳粥を口に近づけて



「おい!キョウ!しっかりしろ!!とにかく食え!!」



 体を揺すりキョウに声をかけるが反応が鈍い


 なんとか口を少しだけ開けているがとても食べれそうになかった


(くそっ!!なんとか…なんとか食わせないと…)


 薬膳粥さえ食べさせればなんとかなるのだ


 とにかく頭を使いそして思いついた。オレは自分の口に薬膳粥を入れると躊躇なくキョウの口につけ、口移しで押し込んだ


 無理矢理に強引に押し込んだ


 すると少しだけキョウの喉が動き飲み込んだのだ


 しかし口を離すと飲みきれなかった薬膳粥がこぼれ落ちたのだが今はそんな事気にしている場合ではない


 即座にまた自分の口に含むとまた口移しで押し込んだ


 先ほどより多少多く飲み込んでいたとは思うがまた薬膳粥がこぼれ落ちた


「そうだキョウ!とにかく飲み込め!!」


 声をかけそして3度目の口移し、今度ははっきり飲み込んだのがわかったがやはり全部は飲み込めずまたこぼれ、そしてオレは意を決し


「キョウ!今から思いっきり押し込む!だからすべて食え!!」


 それだけいうとオレは自分の口に溢れんばかりに薬膳粥を入れてキョウに食わせた


 キョウの喉が何度も動いて必死に薬膳粥を飲み込んでいた


 そして口の中が空になったらもう一度繰り返し再度目一杯食べさせた。そしてキョウを見ると顔色もだいぶ良くなり呼吸も落ち着き始めていた


 しかし良くなったと言っても端から見ればまだ顔色とかも悪かった。そしてその後も何度も繰り返し作った薬膳粥をすべてキョウに食べさせた


 すべて食べさせた時にはだいぶ落ち着いていたがぐったりしていて意識があるのかさえわからなかった


 が、たぶんもう大丈夫だろ


 そしてキョウを見ると薬膳粥でだいぶ服が汚れていた


「すまないが誰かキョウを着替えさせてくれないか?」


「それはタケルがやってくれ、我々は見回りがてら席をはずすよ」


 ジン達はそれだけいうと立ち去ってしまった


 そんな訳でなるべく見ないようにキョウを着替えさせる事にした。幸い下に着ていた着物はほとんど汚れていなかった


 そして取り敢えず着物を小川で洗うと近くの木に干しておくことにした


 しばらくしたらジン達が戻ってきたのでそのまま交代でキョウの様子を見ながらそのままここで野宿することにしたのだった




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