うまい飯は武器だ!
怪しげな森の中を歩いていた
取り敢えず神様と一緒にこの世界に来て、この先に村があるからそこに行ってと言われたのだかすでに小一時間歩いている
少し歩けば村に着くからと言われたし、実際それほど時間がかからない距離だっただろう
ではなぜ小一時間も時間がかかっているのか?
答えは簡単だ
かなりビビりながら慎重に向かっていたからである
神様と分かれ歩き出した瞬間いきなり変な虫に飛びつかれ慌てて倒したのだか正直怖かったし、それに意外にしぶとかったのである
《見切り》と《危機感知》があるため攻撃はすべて避けれてまずダメージを受けなかったが不意打ちにはどうなるかわからないし警戒しながら進むしかないのだ
しかも森はかなり不気味。むしろ本当に人が住んでいるのかさえ疑問に思ってしまうぐらいだった。そんななかオレ1人……ホントに大丈夫か?
心細いなかそんなこんなでやっとの思いで無事村につき一安心。特に怪我とかなくいそいそと村に入ろうと思っていたのだが
「なんだ貴様は?人間がなんのようだ?」
頭から角の生えた鬼人と遭遇して村の入り口で止められた。しかもかなりがたいのいい2人組で、村の入り口、門番だったみたいでこちらをかなり警戒している
「あ、えーと、なんて言ったらいいか……ドラゴン討伐と言えばわかりますか?」
取り敢えず事情を話そうとしたらその瞬間門番の二人は互いに見合わせると先程よりも怖い顔になり威嚇してきた
「貴様には関係ない事だ!」
さすがにこれには困った
神様の話では協力者、というよりは要請者のはずなのにまるで邪魔者扱いしてきたのだ
どうしようかと迷っていると
「まって、その人は勇者ですよ」
奥から美しい声がした
「ひ、姫様!?」
慌てた様子で道をあける門番。そして奥から現れたのは角が生えてはいるが可愛らしい女性だった
長い髪に巫女服、同い年ぐらいだか服装と雰囲気が女性を年上のように思わせていた
「ごめんなさい、村の人が驚かせてしまったようですね」
深々頭をさげ謝罪してきた
慌てて取り繕うと安心した表情になる女性。そして話をしたいからと案内されてかなり大きい屋敷に招かれた
すると威厳がありそうな人と対面した。するとその鬼人もこちらを威嚇して警戒している雰囲気。どうやらこの鬼人もあまり、と言うか全然歓迎していない感じがした
「わしはゴドゥ、この鬼人族の村の長をやっている、そしてこっちが娘でこの村の巫女をやっている」
「キョウといいます」
挨拶が終わると渋々ながらだがゴドゥは話してくれた
まずこの村には100人程度の鬼人族が住んでいたのだった。そして彼らはかなり珍しい魔力の持ち主でここは隠れ里だと
そんな村を見つけたドラゴンが生け贄に巫女、キョウを差し出せば他の者は見逃すと
もちろん納得出来ないのでドラゴンを討伐する事にしたらしいのだ
しかし倒せるか微妙らしい
ならばよそに協力を得ればと思うがここは隠れ里、出来ればよそには協力を頼みたくないだと言ってきた
そんな時キョウが神託を受けて協力を得ても問題ないであろうオレの事を知り、協力してもらおうと告げるがゴドゥや他の村人はやはり賛同しかねていたのだった
「討伐は3日後に出発する、付いてくるなら勝手にしてくれ、それとあまり村の中をうろつくな」
それだけ告げるとどこかに言ってしまったゴドゥ
残されたキョウは申し訳なさそうにしていた
「ごめんなさい。父はよそ者が嫌いなんです」
深々頭を下げて謝罪してきた
こちらとしては勝手に倒してくれるならそれで構わないのだが出来れば協力して確実に倒したかったのである。そんなわけで勝手に付いていくことにしたのである
そのあとはキョウの案内で村の中を少しだけ見て回ったが村人は遠巻きに見ていて警戒していた
こんな状況で果たして協力してドラゴン討伐出来るか心配になってきた…
それと案内がてら話をしてみてわかったのだがキョウだけが親しげなのは協力者が現れるように神様に願い、神託を得たので要はタケルを呼び寄せたのが自分だと考えていたからであった
(今の状態で協力してドラゴンを討伐出来るか?)
もう不安で一杯だった……
3日後
村の入り口に集まる鬼人達
そして人の輪が出来ていてその中心では
「タケルさん、気をつけて」「どうかご無事で」「帰ってきたらまたお願いしますね」「タケルにぃちゃん」「タケルどの」
そしてゴドゥまで
「娘の事は頼む」
村人全員でタケル達を見送る鬼人達
その表情は笑顔でまた心配そうな感じでいたのだった
どうやら鬼人達に受け入れられたようだった
しかし一体何がどうなってこうなったか?
答えは簡単
事の始まりは村の案内が終わり、そのまま長の家に滞在する事となったのだが夕食の際出された食事に問題があったのだ
ただ焼いただけの肉、よく分からない野菜、ごった煮の汁物。見た目もそうだが味も悪かった
はじめは歓迎されてないからこんなものを出されるのかと思っていたけれども皆、同じ物を食べていたのだった
そして夜、改めて話をしたいと部屋に訪れたキョウに聞いてみるとあれが普通でむしろ今日のは一応は客人のオレがいたので上質な物を出したのだと
そして、ここは隠れ里
外からの仕入れがないうえに何が食べられるかという知識も入ってこなかったのである。なので昔から食べられている物しか食べないと
仕方がなく取り敢えず我慢する事にしたのだが翌朝ついに我慢が出来なくなり昼飯の際勝手に作る事にしたのだった
すると出来上がった食事を見たキョウが味見がしたいと言って口にしたら絶賛
あまりの美味しさにそのままゴドゥに食べさせに行くとゴドゥもまた渋々ながらだが称賛、そしてそのまま芋づる式に広がった
結果村人のほとんどが食べたいと希望してきたのだが、さすがに量的に作るのは大変だったのでいっそ作り方を教えることにしたのだった
人数が人数だ…とても作れない……
さらに食材調達の事もあり《食材召喚》ではなく村にあるもので料理したのだった
結果オレは村に新しい食材の発見とその料理方法を伝授した形になったのだ
うまい食事をすれば機嫌がよくなるのは当たり前でさらにはそのうまい食事をこれからずっと出来るようにしてくれた人物に好意を抱かないやつがいるはずがない
なのでそれならばと討伐に向かうまでの間出来る限り料理教室を開いて何種類もの料理を教えたらオレは救世主扱いまでされてしまったのだ
そしてこの村で料理した事はオレにとっても新しい発見に繋がった
それは一番始め自分の食事を用意する時には発見した
まずは食材を用意しなくてはと思ったがどれが食材かわからなく《食材鑑定》をしてみたら、どの部分が食べられて、どの部分が食べられないか分かっただけでなく、切り方までわかったのだ
食材の知識がない場合勝手に説明がされるのだった
そしていざ料理しようとしたら、なんと包丁がなく仕方がなく切れ味の悪いナイフを使っていたのだがイラついて、スキル《不要部位切除》を使ってみたら豆腐でも切っているようにサクサク切れたのだった
スキルを使えば道具の良し悪しに関係なく上手く切れるのだ
そしてそのまま、《不要部位切除》を発動させたまま食べられるところを切ってみらまるで鋼鉄でも切ろうとしているみたく全く歯が立たなかったのである
スキル適用外の事をすると拒絶反応を示すと言うことらしいのだ
こうして鬼人族と友好を得てさらには新しい発見が出来てさい先良くドラゴン討伐に向かう事が出来たのだった
しかしこの討伐が壮絶なものになるとはこの時のオレは知るよしもなかった