今宵は宴と共に眠ろうぞ
どうしよう。全く寝れない。
壁がけ時計は、長針が三、短針が十二を少し通り過ぎたところ、つまり十二時十五分を指し示している。
電気を消して暗くした部屋は、目がなれたせいで明るく感じる。仕方ない。水でも飲むか。
ベッドを降り、リビングに続く扉を開ける。
--眩しい。電気はさっき消したはずだが……あれ? 消し忘れたんだっけ?
光にも目が慣れてきて、色んなものが見えてくる。姉ちゃんだ。姉ちゃんが椅子に座り、背もたれに首を乗せてぐでーんとしている。なにやってんだよ、姉ちゃん……。首痛めるぞ。
姉ちゃんが俺に気づく。半目でにやりとこちらを眺めてくる。
「遊ぼうか」
姉ちゃんが放った言葉を合図に、俺は素早くゲーム機--テンテンドースコッチ--を棚から取り出した。
FEVER・TIMEの始まりだ。
駄菓子、コーラ、ノリのいい音楽を糧に、俺たち2人の宴は続く。腹が減ればポテティを、喉が乾けばコーラを、刺激が欲しくなればゲームをハードモードにして、欲を満たし続ける。最高だ。
--それは唐突にやってきた。
瞼が重くなり、思考が鈍くなる。眠気だ。
ぼんやりとした頭で理解する。そうか、姉ちゃんはこれを狙っていたんだ。夜中に遊びつくし、脳と体を疲れさせ、眠る。深夜テンションを逆に利用する高等テクニック。
やっぱり姉ちゃんはすごいや。
ソファーでだらしなく眠る姉ちゃんが、今は少しかっこよく見え……いや、かっこよくはないか。
「おや……すみ……」
最後におやすみをして、心地よい興奮の中、俺は意識を落とした。
ちなみに、次の日遅刻した。