分析してみる
領地についた次の日。ぼんやりと目が覚めた。ベットの中で伸びをして上半身を起こして周りを見ると見慣れない景色が広がっていた。上品な白いレースのカーテンから漏れる朝日が薄暗い部屋に射し込んでいる。そういえばここはマーフィー男爵のお屋敷だ。部屋の場所がいいのか、なかなか幻想的だ。男爵のセンスは良いようだ。働かない頭でそんなことを考えてると部屋の扉をノックされた。侍女が起こしに来てくれた様だ。おそらく海水に落ちて拭いたきりであろう身体が嫌だったので、侍女に頼み体を拭いてもらった。その後他も身だしなみを整え朝食を済ませた。朝食の席にマーフィー男爵はいなかった。また忙しいのだろう。
私は今部屋の中にいる。ちなみにワイアットも一緒に。
さて何をしよう。お父様からの手紙の実力を見せるとはどうすればいいのか?今更なことを思った。具体的なことは何も書かれていない。よく聞く領地改革とか?どうやってやるんだろう。
私はこの土地のことを全く知らないし。
仕方がない、来たばかりなのだから。まずは知ることが第一歩だ。しかし本当にこんなところから第一歩とは随分先は遠い。
ワイアットに頼み家令を呼んだ。領地の現状について。データとか実際に見てとか、たしかに大事かもしれないけど人に聞いた方が早い。普通に楽だ。家令であればおそらく少しは領地経営に一枚噛んでいるだろうし。
「最近のこの領地はどのようなのですか?」
「この地は元々実り豊かな土地ではございません。民は土地税を払えなくなり、空いた領地は旦那様が人を雇い辛うじて領内の民に食べさせておりましたが、先日の水害で農地は駄目になってしまいました。人も多く領地を離れました。しかし、今も旦那様は速急に事態を収めようと務めておられます。」
畑を耕しても作物が得られないので、収入が得られない。領民は土地税が払えないくなり、土地が空く。領主側は土地が荒れて使えなくなることを危惧し、人を雇って土地を耕させるが、痩せた土地で得られる少ない収穫では領民の食べる分が辛うじて得られても輸入に回せる作物がなくなることにより領地の収入がない。
領主側は収入がないのに人を雇って耕させたことで赤字だろう。領地の赤字を領主の家の財産で賄っているので、そのうち領主の家が倒れるだろう。領主と領地の財産を同じにしていることで領地と共に領主まで借金の地獄に陥る。決して贅沢な生活をしているわけではないのに。
そんなうちに先日の大雨だ。川が氾濫し畑を襲った。大規模な水害で春に種をまいたばかりの農地は水を被った。もうめちゃくちゃだ。まさしく泣きっ面に蜂だ。とうとう食べるものを失った領民は実りのない土地を復興する気力を失い流された家をそのままに被害のない地へ移動した。これによって一部の場所に多くの何も持たない人が集まり、生活を始めた。
街の状態はまるでスラムのようだ。今この領地にいるのは食べるものも、住むところも、仕事もないので金もない、そんな人々なのだろう。少しでも金がある人は早々にほかの領地に移動したはずだ。このままでは、多くの人が飢餓でなくなるだろうし、それらの死体がそこら辺に多くあれば、蝿や鼠がわき病気が蔓延し、領地と領主の家とが共に倒れることを見越して、損をしないように。
このままではマーフィー男爵も領民も救われない。
まさかこんなに重いものと彼は向き合っていたなんて。仕事が大変でなんてそんな言葉で片付けられない。彼はどれだけの努力で昨日の夕食を共にする時間を作ってくれただろうか。
これは大変だ。早急に解決しなくてはなるまい。しかし私にこの土地での権利など何も無い。
とりあえずマーフィー男爵と話がしたい。彼は現状をどう考えていてどうするつもりなのか。それを知りたかった。
時間をとってもらえるか可能性は少なかったが、昼食を一緒に撮りたい、話すことがある旨を男爵に伝えてもらった。男爵からは昼は無理だが夜ゆっくりと時間を作ると返された。まあ予想通り。時間をとってもらえただけ上出来だと思うことした。