彼が私の騎士な理由
「そう、お気の毒ね。それはそうと貴方、私の騎士になるとはどういう意味なの?」
「どう意味も何もそのままの意味ですよ」彼はニコリと笑った。またはぐらかされそうだ。
「私は貴方に給料も出さないし、王宮近衛騎士団に推薦もできないわ。」彼は一瞬驚いたように目を丸くした。すぐにまた先ほどと同じような顔で笑ったが。
「そんなの期待してないですよ。貴女の生活費の中と私の生活費込みで男爵家持ちなので安心してください。というか何故いきなり騎士団の推薦なんて話になったんですか?」
「貴方、あの時ガーデンパーティーにいらしていたじゃない。海軍で功績を挙げたことを公の場で報告し騎士団に志願しようとしたんじゃなくて?」
彼はケラケラと笑った。私の予想とは違ったみたいだ。じゃあなんだと聞こうとしたらまた扉をノックされた。
「お夕食の準備が整いました。旦那様もそこでお待ちです。」
そこそこ時間が経っていたようだ。
結局はぐらかされてしまい、彼がなぜ私の騎士をしているのか聞けなかった。私は腑に落ちないままニコニコとした彼にエスコートされ夕食に向かった。
待女の言うとおりマーフィー男爵は待っていた。流石にワイアットは同席しないようだ。私の後ろに立っている。私が彼の前の席に座ったところで二人で祈りを捧げる。そしてお互いに食べ始めた。食事を初めて赤ワインを飲んだあとにマーフィー男爵が口を開いた。
「部屋の様子は如何でしたか?屋敷の様子も気になったことなどありませんか?」手を止めて彼の柔和な笑みに視線をやる。
「素敵なお部屋だと思いました。屋敷全体が掃除が行き届いていて綺麗でした。お庭の手入れもきちんとされているようで可愛らしい春の花々をお見かけしましたわ。屋敷の中に飾ってみたら花の精が春を呼び込んでくれそうなほどに。」
「それはよかった。明日から屋敷の中に花を飾らせましょうか。」
「きっと屋敷の中がより明るくなるでしょうね。」
そんな和やかなまま夕食は食べ終わり彼はまたすぐに屋敷の奥に引っ込んだ。
私も特にすることもないのでそのまま部屋に戻り寝た。
その日はそんな感じで終わった。