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マーフィー男爵という男

侍女に案内されて部屋についた。侍女に通された部屋の内装は品良くまとめられていて、綺麗に掃除されていた。家具も痛んでいないようだ。それなりにちゃんともてなす気があることは分かった。彼は本当に忙しくて、社交辞令に世辞の一つ、お茶の一杯も共に飲むことが出来なかったのだろう。


ここに来るまでにおおよそのことは分かった。だが私はまだ分からないことがある。何故私はマーフィー男爵の元にこなければならなかったのか。侯爵領に戻れないのは王都が近いから。なら別に王都から離れたどこかの領地でよかったのではないのか?そう思わずにはいられない。私がマーフィー男爵領に行くことが決まった決定打は何なのか。私は私を保護する領が過程を知らない。だからどんな状況だったかはわからなないが、もしもどこの領も私のことを引き取りたくないというのであれば何故この領が?マーフィー男爵は私を押し付けられて断れなかったのか?全くわからない。悶々としていると扉がノックされた。

「お嬢様、お紅茶をお持ちしました。」

「お入りになって。」


侍女が室内に入って来た。何故かワイアットも一緒に。屋敷に到着してから夕食までの時間暇だと思いっていたが丁度いい。私はこの男のこともよく分からない。何故彼は私についてきたのか。私の騎士になるとか。私と彼は初対面のはずなのに。

可愛らしい白い小さなテーブルの席に着く。仕方が無いので彼にも席を進める。ジャムを入れて飲むことが多かったがここの紅茶はミルクティーが主流なのだろうか。とても美味しい。侍女が入れた美味しいミルクティーを飲みながら彼に聞いた。

「マーフィー男爵はどのような方なのかしら?私全く存じ上げないの。ワイアット、貴方ご存知かしら?」

「あの人は元海軍提督ですよ。海の戦士の名を持つ我が国の英雄です。まあそれも辞めさせられたんですけどね。あの人のいた時の海軍より今はだいぶ地位も下がっちまいましたけどね。」


彼は苦笑を浮かべながら教えてくれた。

13年前にこの国の海を隔てて東にある国が攻めてきたことがあった。その時も海軍の活躍で彼らにこの国の土地を踏ませずに海上だけで肩をつけたのだ。


人々の人気と数々の功績が認められて得た発言力、影響力を持つために貴族に危険視されたのだろう。元々平民の多い海軍だ。平民寄りの意見が多くなり貴族と対立したのだろう。海軍の国政の介入を良しとしない者達に海軍の提督に痩せた土地を押し付けた。男爵位と共に。領地経営に専念するようにと提督の立場を奪った。領地経営の勉強などした事がないであろう彼に、痩せた土地と領主の名を押し付けた。そして今回私を押し付けた。なるほどそういうことか。やっと納得した。


それにしても、もし戦争が起きたらこの国はどうするのだろうか。今までさんざん守ってもらった海軍の地位を下げたくせに今度は頭でも下げるのか。今私たちが普通に暮らせているのは、13年前のあの戦争でこの国が戦地にならなかったからだ。今の海軍の機能しない状態では海にぽっかり浮かんだこの国に、敵が周りから攻め入ったならば多くの血が流れるだろう。戦地となった場所は勝っても負けても悲惨だ。もし勝てたとしても、敵軍が撤退し残るのは土地も街も荒れ、家も食料もなくなった、人として生活出来なくなった場所だろう。私はもしもを考えてなかなかやばい国だと思った。


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