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男爵の元へ行く

準備をしろと言った割に何をするのか。私の今の格好は海に落ちる前とは違う。ガーデンパーティーに参加していた時に着ていたワインレッドのたっぷりとした布を引きずる様なドレスではなく、装飾のない肌着の白い裾が少し裾から見えているモスグリーンのウエストの締まったゆったりとしたワンピースの様な格好だ。足首を見せる丈なんてほとんど転生してから履くことはなかったし、いつも結い上げて髪飾りをつけていた髪を下ろしたままなのも落ち着かなかった。今更庶民の格好は違和感が拭えない。

「ねぇ、私の服はどこにあるのかしら?」

「あなたをここに運んだ後、びしょびしょだったので体を拭いて着替えさせました。」


着替えさせた?まさか彼が?胡乱な目つきで彼を見てしまったのだろう。私が聞く前に答えた。

「着替えは女性に任せましたよ。今海軍の船は港に停泊しています。船員の奥様をお呼びしてしてお願いしました。準備は必要ありません。そのままで十分お綺麗ですよ。」ニコリと笑った。彼はタラシの才能をお持ちのようだ。


とりあえず身だしなみを整えて船を降りた。外はまだ日も登りきっていなかった。いざ、馬車に乗り込もうとするとワイアットがニコニコと笑って手を差し出してきた。大人しくエスコートされることにした。彼の手に私の手を重ねた時、一瞬だけ彼の動きが鈍くなったように感じたが、本当になんでもないように私に続いて彼も乗り込む。今日の彼はやけにニコニコしている。昨日まで真面目そうな顔をしていたのに。


彼が持っていた荷物はあまり多くなかった。馬車の中で彼は私に朝食を差し出してきた。おそらく昨日食べなかったサンドウィッチだ。何も持っていない彼に食べるか聞いたが既に食べたと返された。にしては量が多い。今日一日分だろうか?領地まで遠いのだろうか。そんな予想は昼に再び出てきたサンドウィッチで覆された。彼は馬車の中でもずっと私にニコニコと笑いかけていた。


マーフィー男爵の屋敷に向かう途中の馬車の中は道が整備されていないようで、ひどく揺れた。乗り心地が悪い。領地内に入りそれにひどい臭いがする。2度ほど当たり屋にも会った。2回とも聞こえた話し声は子供のものだった。どうやら随分街が荒れているらしい。馬車の窓から見た街の景色はひどく汚れていた。治安が悪いだなんて、よくあるような、領主が不当に税をあげすぎて市民が税に苦しんでいる感じだろうか?私は父に言われた“実力を示す”ために街を観察した。


そんな街の様子を観察しているうちに屋敷に到着したようだ。出発と同じようにワイアットにエスコートされながら馬車から降りた。屋敷に到着して見た外観はあまり大きくない感じだ。少し古めかしいかんじで、アンティーク調だ。古いがセンスの良さげな外観だ。ついでに眺めた庭はキレイに春の花々が美しく咲き誇っていた。庭の手入れは良くされているようだった。花に目を奪われているうちにワイアットは屋敷の者に話を通していた様だ。


屋敷に通され中に入るとこれまた質素だった。客を通す玄関なのに花がいけてある花瓶も絵画も置かれていない。しかし掃除は良くされていた。迎えたのは家令だろうか?老齢な執事だった。


「私はマーフィー家に使えております。スチュアートと申します。今程、女中が旦那様に到着の旨を伝えに参りましたのでしばらくお待ちください。」

そう言われているうちにマーフィー男爵が迎えてくれた。

「初めまして。私はベアトリーチェ・マッキントッシュと申します。これからよろしくお願い致しますわ。」薄いモスグリーンのワンピースをつまみ礼をする。今まで来てきたドレスとは全く違い、パニエも入っていないので礼をするのにも違和感を感じた。


「ようこそ。ギャレット・マーフィーと申します。この度は大変でしたね。私はここ数年に男爵位を賜った者ですので、もてなしに粗が見受けられるかと思いますので、不便があれば申し出てください。失礼。今少し仕事が立て込んでおりまして、あまりお構いもできませんが、好きにくつろいでください。長い間馬車に揺られてお疲れでしょう。今日はもうお部屋をご案内させましょう。」

マーフィー男爵は終始優しそうに微笑んで、話終えると、マーフィー男爵は侍女に私達を任せて、早々に屋敷の奥に引っ込んだ。随分忙しいのだろう。ワイアットも荷物を持って着いてきた。


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