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与えられた時間は大切にしないと。夕食まで色々考えた。完璧な答えなど用意出来ないうちに夕食の時間がやってきた。

「今この領地が大変な状況にあることをお聞きました。私もなにかお力になりたいと思いまして、色々と考えてみましたの。私の意見をあくまで参考として聞いてくださらない?」

「ええ、お恥ずかしながらあまり上手くいっておりません。あなたの意見も参考にしたい。ぜひお聞かせ願いたいところです。」

「ふふ。ありがとうございます。私はやはり“施し”は必要だと思いますわ。如何でしょう。すでにご検討されておりましたか?」

「ええ、勿論。このままでは多くの民が苦しむでしょう。この家にもまだそれぐらいはできるでしょう。何度も回数を重ねるとあらば、借金も視野に入れています。」

「いいえ、“施し”は一度きりで結構ですわ。」

「一度きりですか...、ですが領地の状態はそれはもう悪いのです。そんなに早く改善するとは思えませんし...。それともなにか改善するのに良い方法でも?」

「いいえ、ですが“施し”に慣れてしまっては困りますの。労働を放棄されるかも致しませんから。それならそのお金で領地が汚いので民の人糞を買取りましょうか。」

「人糞を!?」私の正気を疑っている。だが、私は別に彼の家を潰す気は無い。

「このまま街が不衛生だと病気が流行るかも知れませんし、堆肥に使えるかと思いまして。牛や馬のものが使えるのですから人糞だって大差ないでしょう?」


押し付けられた領地の民を思って借金と言い出すとは、おそらく彼は根っからの善人なのだろう。だが、それでは現状の改善には至らない。教会に、金を渡し災害が起こったこと憂い希う、領地を出ていった元領民と同じくらい意味の無いことだ。神に跪いても現状は変わらない。

“それはもう悪い状態”だからこそ付け焼き刃な対応では現状維持すら叶わない。悪化の一途をたどるばかりだ。


まずは領民が生きること。そのために食料の配給と、衛生状態の改善だ。

領民に恩を売りたいから食料の配給は先に行う。それから、そこら辺に糞尿を撒き散らされたら臭いし不衛生だ。

糞は肥料にもなる。それらを撒くことで土地の地質を改善に繋がるだろうか。人糞の場合、寄生虫なども怖いから完全発酵は必須であろう。念のため生食を控えてもらえばいいか。そうなるとどうやって糞を集めるか。そんな事で金を得られるのであれば、彼らは血眼になってでも頑張るだろう。それに回収は人件費がかかるので回収する場所まで彼らに持ってきてもらおう。

これでそこら辺に糞が落ちていることはなくなるだろう。


私は日本人だったからトイレで用を足す習慣があるが、彼らにはない。というか、この国自体にトイレという概念がない。ある程度貯めて道にに捨てる。王都でさえそんなものなのだ。衛生状態の改善を理由に、彼らにトイレの概念を説いたとしても彼らは一日一日を生きることで精一杯だ。公衆衛生にどれだけの人間が重きを置いているだろか。民が、どれだけの人間が耳を傾けるだろうか。価値観が違うのだから仕方がない。糞を買い取るということで衛生状態の改善を図ろう。

私はまた続けた。


「今現在お金が市場に出ていないのは良くないでしょう。民もタダで貰ってばかりではいけません。彼らの“普通”を取り戻すために食べ物を買って貰いましょう。」

「ですが、民は金を持っていませんでしょう。」

「人糞を売って得たお金で買ってもらうのです。私達はお金は回収します。そしてまたそのお金で糞を買い取ります。そうすれば市場にお金が出回るでしょう?それから」まだあるのかと驚いた顔をしている。それに気付かないふりをして私は続けた。

「食料は買わずに貰いましょう。」

「貰うと言っても、何処から、」いくら私が箱入り娘だからって乞えばなんでも貰えるとは思ってない。だからそんな胡乱な顔つきでこちらを見ないで欲しい。

「他の領に物資を支援してもらえば良いのです。災害が起きたわけですからそれは正当な権利と言えるでしょう?要求は通るはずですわ。」ぽかんと口を開けたままの彼の顔を見てニコリと笑って続けた。

「別にこの領内だけで解決しなければいけないわけではないでしょう?私の家など私をここに置いていただいている借りがあるのですから存分に利用なされば良いのです。それから速急に領地と男爵家の財産は分けましょう。領地の借金は次の領主の借金ですわ。貴方と領地共に壊れてしまう可能性のある道を歩んではいけないわ。」私の勢いに彼はタジタジだ。

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