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その2

お待たせいたしました。

新しいエピソードが完成しましたので公開いたします。

また手直しが入ると思いますが、お楽しみいただければ幸いです。

 今この場で謝るか、それとも会議後に三人でカフェへ向かう道中で……いや、新作スイーツを食べながら……よりも、食べ終わって落ち着いてからにしようか……などと悩んでオロオロしていたら、聞き覚えのない声が僕の思考を遮った。


「君、派手に転んだけど大丈夫かい?」


 僕たちのいる会議室の入口から見てーー左の窓際からホワイトボードの前を通り、右の廊下側へ沿うようにコの字型に机が並んでる。その真っ正面のホワイトボードを背にした上座の席に座る四人の内の一人が立ち上がり、心配そうに僕を見ていた。その場所からして生徒会役員の先輩だろう。


 明るい栗色の髪はボブっぽい短髪で、榛色のくりっとした大きな瞳。スラッとした鼻筋とふっくらとした桃色の唇は、小さな顔にバランス良く配置されており、しかも柔らかそうな色白の肌で華奢な体型とくれば、【姫】に選ばれる要素は十二分である。


「……おい、聞こえているのか?」


 その右隣に座っている人は、おそらく【若】だろう。まるで模範生の如く、きちんと切りそろえた髪と切れ長の瞳は、漆のように艶やかな黒色。ところで僕と同じ眼鏡男子なのに、どうしてこうも違うのだろう。ちゃんと理系の知的男子に見えるのだよ! 顔立ちもキリッとしていて近寄りがたい雰囲気はあるものの、僕の腐男子センサーは、苦労人で世話好きだと反応している。


 神様よ。『人は皆、平等』だと言いながら、この差は何ですか? 不平等ではありませんか。何、この仕打ちっ! もしかして僕が腐った男子だからですか? 腐っていたら神の恩恵に預かれないのですか! 


「おいおい、大丈夫か。先輩が聞いてんだから、ちゃんと返事しろって」


 ニカッと、いかにも体育会系男子らしい笑いを向けるその人は、陽に焼けた小麦色の肌と輝く白い歯を見せつつ制服を着ていても、そのガッチリとした体格は隠しきれない。つい「兄貴ッ!」と声を掛けたくなるような、でも容姿は先ほどの二人に負けないほどの威力がある。だが、すぐさま眼鏡男子に


「後輩をからかうんじゃない」


 と怒られ、頭を会議資料で叩かれていた。顔はいいのに、やはり頭は脳筋なのか? 


「あの人たちは生徒会のメンバーだから一応返事をしておいた方がいいよ」


「姫。眼鏡のレンズ、割れなくて良かったな」


 ちょっと二人共、いい加減にしてほしいんだけど! まず櫻森くん。君は、僕を小学生の子供と勘違いしてない? 片方の腕で僕の腰を引き寄せつつ、もう片方の手で頭を撫でるのは恥ずかしいんですけど! それから柳橋くん。ニコニコしながら僕の空いている腕に自分の腕を絡めるの止めてくださいっ! 腕を組んでいるように見られるじゃないですか。おかげで先輩たちが、めっちゃガン見してるんですけど!


 とりあえず柳橋くんの言うとおり、この場の空気を読んで先輩たちに声をかけておこう。


「すみません。ご、ご心配くださり、ありがとうございます。この通り、眼鏡は無事でした!」


「……君のことを心配して聞いたのだけど、まあいいか。会議を始めたいと思うので各自席に着いてもらえるかな?」


 どうやら最初に声をかけてくれた小柄な人が進行役のようだ。あの人が会長さんかな? 入学式で会長さんのお言葉があったんだけど、朝が早かったからウトウトして覚えてないんだよねぇ。


「では、今年度最初の役員会議を始めたいと思う。本来、生徒会長がいなくては始まらないのだが……新入生に言っておく。会長は、仕事を一切しない。名前も顔も忘れてくれてかまわない。その代わり、ここにいる者たちは覚えておいてほしい」


 な、何ですか、それは! 仕事をしないって職務怠慢ですよね? もしかして人気投票の弊害なのかな? でも僕の同人誌(バイブル)では、生徒会長って、俺様で仕事のできるお坊っちゃま、ってことになっているんだけどなぁ。


 まさか姉さん好みの昼間でもお構いなしに別室で性欲発散するタイプで、知能がソッチに全フリですか? しかも来る人拒まず去る人追わず、好みの子を全員食い散らかす顔だけ男子なんですね。オッケー、了解しました! 僕は絶対、会長様に近づきません。遠くからじっくり観察させていただきます。


 そういえば前に親衛隊の隊長だけが生徒会長のお手つきになれなくて、他の隊員たちからの事後話を羨ましく思っていたら、実は生徒会長の本命が隊長で、遊び相手ではないからこそ嫌われたくなくて手が出せず。でも自分の親衛隊の隊長をやってるくらいだから離れることはないなんて思っていて、お互い気持ちのすれ違いから隊長が身を引く決心をした途端に、生徒会長が慌てて関係を持とうとして余計に拗れるって内容の同人誌(ほん)があるらしい。


 こうやって簡単なあらすじだと読めるかも、なんて思うじゃない? でも実は姉さん向けで結構ハードな内容らしい。絡まってる時はお道具や淫語のオンパレードらしいし。『らしい』ばかりだね、と言われても、僕、読んでないから。詳しい話は、姉さんに聞いた方が……って、あれれ? いつの間にか椅子に座っている。え、一ヶ月後に行われる体育祭について? 


「……もしかして、もう会議始まってる?」


 まずいっ! ちょっと考え事していたら、だいぶ時間が経っていたようです。議題が三番目の体育祭に移っているじゃん! 最悪だぁ!

お読みいただきありがとうございます。

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