その4
小学校に到着するまでの間、渋谷くんから雄大のことを色々質問されました。やはり渋谷くんは雄大のことが好きなんですね! 僕としては、絶対くっついて欲しい! そして僕の妄想のために、ぜひとも一肌も二肌も脱いでください!
「福田くん、ここ……まさかだよね?」
そうこうしているうちに我が母校、公立の小学校に着きました! もう卒業して三年が経っているんですね。元々、創立が戦後まもなくだったので結構な年代物ではありますが、耐震対策とか校舎の塗り替えとかで意外ときれいになっております。
(僕らの時代は、外壁を囲うように足場やら防塵カバーとかで外の景色は見えなかったもんなぁ)
なんて感傷にふけっていたら隣で愕然とした渋谷くんの姿が。一体、どうしたというのでしょうか?
「……こんなに狭いところで、六年間も過ごしてきたの? 本当に?」
渋谷くんからしたら、我が母校は狭いらしいです。櫻森の初等部は都心部にあるので、むしろそちらの方が狭いのでは?
「……狭いかな?」
思わず聞いてしまいました。櫻森くんも渋谷くんに訊ねます。
「広さは櫻森の初等部とそんなに変わらないと思うが?」
(櫻森くん、貴方は別の学校の初等部に通っていたのでは?)
「狭い……というか自分たちが大きくなったから小さく感じるってことじゃない?」
鶴間さんの一言で渋谷くん、櫻森くんがなるほどと納得しました。言われてみれば、そうですね。僕たち縦にも横にも育ってますからね。だから在校時と今では違って見えるのかもしれません。
「言われてみれば、そうかもしれない。なるほど……興味深いね」
渋谷くんはやたらスマホで写真撮ってますが、何かに使うんでしょうか?
「これを送信して……よし、OK!」
渋谷くん、何かやりきった感を出してます。するとすぐに彼のスマホの着信音が鳴りました。誰からでしょう?
「あ、もしもし? 届いた? どう? 使えそう?」
どうやら送った何かを使えるか確認しているようです。何を送ったんでしょうか?
「そう……それと色々と新しいネタを仕入れたから、それはまた後で!」
「渋谷くん、一体誰と話しているんだろう?」
櫻森くんに話を振ってみたが、僕の質問には答えてくれず、しかもフイッと視線をそらされた。どういうことですか!?
「……うん、分かった。じゃあ、また後で!」
話が終わったのか、スマホをしまう渋谷くんに直接訊ねてみた。
「渋谷くん、誰と話していたの?」
「えっ、あ……ああ、立川くんに……連絡をしてた」
「立川くんに? 何で?」
「……彼も一緒に行きたがっていたから……その……報告?」
何かハッキリしない物言いに疑惑の目を向けると渋谷くんが櫻森くんに視線を向けた。怪しい。この二人、何か隠しているとみた!
「ねぇ、何か二人して隠しているでしょう?」
二人に詰め寄るけど、なかなか答えようとしない。おかしい、絶対におかしい! こうなったら是が非でも聞き出してやる! と意気込んでいたら、呆気なく答えを知ることができた。なんと鶴間さんからである。
「あ、もしかしてタッシー新聞のことでしょう!? てっちゃんが見せてくれたんだけど、結構な売れ行きなんだって?」
「あ! 鶴間さん、何でそれを!?」
渋谷くんの慌てた様子と鶴間さんの話に一瞬、思考が停止してしまいました。何ですか、その情報。
「……はあ!? な、何それ! タッシー新聞? それって僕のこと!?」
「……【姫】、実はな、今一年の学級委員たちで【姫】の情報紙を作成していて……それが一部の生徒に漏れてだな……隔週で新聞として発行することになって……すまん。内緒にしていたこと、気分を害したよな?」
綺麗に整えられた眉を八の字にして櫻森くんが謝ってきましたが、僕はそれどころじゃありません! 隔週で発行って一体いつからですか! そんなものを欲しがる人がいるんですか? というか、誰ですか、そんなものを作ったヤツは! プライバシーの侵害ですよ!
「福田くん……内緒にしてたのは、ごめんなさい。でもね、外部からウチの学園に入るのって結構、大変なんだよ? だから入学前から君のことは噂になっていたんだ。で、入学してからは憶測で色々な噂が次々と広がっていって……そういうこともあって、僕たち一年の学級委員で福田くんの好感度アップ大作戦、ということで広報誌みたいなものを作っていました!」
頭を膝につきそうなほどに下げて謝る渋谷くんに僕は、何と言っていいのか分からず、その姿を見つめることしかできなかった。
(悪気があったワケではなく、僕のためというのは分かりました……でもね、広報誌? 好感度アップ? 別にいらないんですけど! 待てよ、さっき渋谷くんがスマホで写真を送っていたのは、この新聞の素材だったのか? ということは、この小学校訪問は新聞の記事になるのか?)
渋谷くんの隣でオロオロしている櫻森くん。そして余計なことを言ったかも、と不安そうな鶴間さんに僕はため息をつくしかなかった。




