その3
あれ? さっき雄大は渋谷くんの自己紹介の前に彼の名前を知っていたみたいだけど、どうしてだ? まさか相手のステータスを確認できるのか!? そんなスキル、いつ手にしたんだよ! そのスキルがあれば、僕のBL観察に役立つかもしれないじゃないか!
「……隆、また口に出てる。気づいてないようだけどお前、昔から脳内で考えてること、小声だけど口に出てるからな。近くにいれば聞こえるんだよ」
僕に冷ややかな視線を向ける雄大。僕の考えてることが漏れてる? それが聞こえる?
「えっ? うっそだろう!? 口に出てるの!?」
「全部が全部じゃないけどな。注意しても妄想中は、こっちの声は聞こえてないみたいだし、もう、いいやって早々に諦めた。お二人さん、高校でもそうじゃないですか?」
話を振られると、二人は気まずそうに僕を見てから頷いた。
「ええ~っ、は、恥ずかしい! じゃあ、もしかしてさっきの妄想は……駄々漏れしてた!?」
なんてこった! 雄大と渋谷くんの愛のシンパシーが駄々漏れしていたとはっ! これはゆゆしき事態です! やはり観察するときは隠密行動でなければいけないな! どこで情報が漏れるか分からないからね。
「だから漏れてるって。すみません、こんな(妄想全開の天然な)ヤツですが、(根は悪くないんで)見捨てないでやってください」
雄大は頭を下げて櫻森くんと渋谷くんにお願いする。え、幼馴染みにそんなことをさせてしまう僕は、どれだけ頼りないんでしょうか? ちょっとヘコみます。
「綾瀬くん、大丈夫だよ。僕たちは彼の(本来の)容姿も(BL推しの)性格も分かった上で(面白いから)一緒にいるんだ。それに、なんか綾瀬くん(苦労人)の気持ちが分かるんだよ。目を離したら彼、(あの容姿なのに)何を仕出かすか分からないよね。『ああ、綾瀬くんも同じ(福田くんを守り隊)思いなんだ!』って思ったよ」
な、何ですか! その同じ思いとは!? それって二人は相思相愛ってことですか!
「……【姫】、口には出てないけど表情で何を考えているからは分かるからな?」
「や、やだなぁ、櫻森くん。別に僕は二人の仲を勘ぐったりはしていないからね?」
「……ニヤニヤしながら言われても説得力に欠けるんだが」
だって仕方ないじゃないですか。腐男子である僕は、そのためだけに生きているんですから。それを取ったら僕には、な~んにも残りませんよ!
「……二人と(隆のやらかし対策のため)情報共有したいので、メルアド交換しませんか?」
雄大は櫻森くん、渋谷くんに自分のスマホを取り出すと振ってみせた。心得たように二人も画面を準備すると、ピロリーンと音を立てて登録を完了させた。
「これで少しは安心できるよ。哲子さんの話だけだと不安で仕方なかったんだ!」
などと失礼なことを言いながら、雄大は僕たち四人に手を振ると、小学校とは反対にある駅の方に向かって歩きだした。
「……綾瀬くんもウチの学校に来れば良かったのに(そしたら福田くんのこと色々相談できたのになぁ)」
渋谷くんが寂しそうに雄大の後ろ姿を見つめています。やはり渋谷くんは雄大のことが気になっているのではないのでしょうか?
「たぶん、渋谷は【姫】のことを(小さい頃からのやらかしを)語れる綾瀬のことが(守り隊として)羨ましいだけで、恋愛感情はないと思うぞ?」
「え? なんですか、それ」
「彼、小さい頃から一緒なんだろう? つまり【姫】のいろんな(やらかし)エピソードを知っているわけだ。(何かやらかすかもと心配で)気になっている人(【姫】)のことを(詳しく)知りたいと思うのは当然のことだろう?」
「気になっている人……か」
それは雄大のことですね! アイツ、櫻森学園にいても遜色ない顔立ちだもんね。惹かれるのも無理ないよ……なんて、また口にしないように気をつけます! 二人とも、ジーッとこっちを見てますが漏れてないよね?
「綾瀬と柳橋(嫉妬丸出し)が会わなくて良かったかもしれないな」
櫻森くんの言葉に渋谷くんと鶴間さんが大きく頷きます。柳橋くんと会わせると何か起こるのでしょうか?
「……気のせいかもしれないけど、さっきから僕には聞こえない会話がされているように思うんだけど……そんなことないよね?」
「……ああ」(それは、先ほどの綾瀬と渋谷の会話のことか?)
「……そんなことないよ?」(福田くんって時々鋭い時があるよね)
「気にし過ぎだよ!」(この勘の鋭さ、てっちゃんがついていくように言うワケだ!)
「「「だから君の通っていた小学校に行こう!」」」
三人、芸能人のような華やかなオーラを放ちながら微笑みます。通りすがりの方々(特に女性)が胸を押さえて膝から崩れ落ちております! 大丈夫ですか!? 救急車を呼びましょうか?




