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そして天使が舞い降りる?

 今、二階の部屋に行くには、ものすごく勇気がいる。なぜなら僕の部屋に行くためには、階段を上ってすぐに姉さんの部屋があり、その前を通って行かなければならないからだ。


(どうしよう。サインは貰いたいけど、これ以上は姉さんの不興を買いたくない。しかしサインは欲しい!)


 そんな憐れな僕に、神様は手を差し伸べてくれたのです! そう、神の使いである天使が僕の目の前に舞い降りました!


「福田くん。もし二階に行きづらいなら僕の家にある在庫品にサインをしたのを渡すけど?」


 部屋の入り口で立ち往生している僕の右隣をしっかりと確保している柳橋くん。彼からの提案に僕の心が歓喜に打ち震えております。だってキミテル先生自ら手渡されるバイブルが僕の元にやってくるんですよ!


 いつも(姉さんの同人誌を買いに行ってお喋りしている)ブースにいないキミテル先生が、サインをして僕に手渡しですよ! 興奮しないワケないじゃないですか!


「えっ、マジですか!? あ、ちゃんと本の代金は出しますからね! そういえば以前、バイブルたちは数量限定で売り切り終了、在庫は持たないって売り子さんに聞いたんだけど……それって嘘なの?」


 そうなんです。キミテル先生は部数限定なので、入場後は最初に立ち寄らないとバイブルがゲットできないのです。しかも再版がないから逃したら一生会えないバイブルもいるんです! だから初期の作品の何冊かは、ゲットできなかったんです!


(くぅ~、もう少し早く知っていれば! 悔やまれる、僕の腐男子としての情報収集能力の低さを!)


「ああ、それね。もし落丁とか誤植があった時のことを考えて、数冊取ってあるんだよ。指摘されても肝心の本がないと分からないからね」


 キミテル先生、最高! 偉いよ、柳橋くん! 読者のことを考えているのが分かります。そうか……それなら最初からそうしてくれたら良かったのに。そしたら金沢文庫社員も突撃しなかったし、姉さんの怒号もなかったしね。そしたらサイン本は、初期の僕が持っていないバイブルでお願いしようかな!


「だからさ、今度は家に来ない?」


 柳橋くんのお誘いに一旦思考が停止しました。はぁ? お待ちください………家に、家に来ない? じょ、冗談ですよね? いくら何でも、それはマズイでしょう!


「や、柳橋くん……それ、本気で言ってる? 僕は一般ピーポーでございますですよ!? そ、そんな財閥のお宅なんぞに、あ、足を踏み入れることなんて、お、おそれ多くて無理でございます!」


「遠慮することないのに。僕の家族は、そんなこと気にするような人たちではないよ」


 ご辞退申し上げたのに、セレブ御用達のキラキラエフェクトをばら蒔きながら柳橋くんが僕の顔を覗き込む。え、だって、こんな家じゃなくて屋敷ですよね? 執事のセバスチャンがいて、メイドさんがいて、番犬としての大型犬がいて、入り口の門扉が重厚で、敷地には森があるんですよね?


「【姫】、今の全部、口にしているからな。確かに屋敷で合っているが、それ以外は若干の偏見が混じっているぞ」


 左隣にいる櫻森くんが訂正してきます。やっぱり君は柳橋くんのために行動するのですね。さすがです。僕が見込んだだけのことはあります。僕の存在を忘れて見つめ合っている二人の邪魔はしたくありません。さっさとこの場を離れましょう! まずはリビングで両親の非常識に戸惑っている金沢文庫社員を救出してあげましょう。


「父さん、母さん! 回転寿司に行くなら二人で行ってくればいいだろう! あんなゴミゴミした場所で、この人たちが食事できるワケがないでしょう? すみません、皆さん。こんな両親の相手なんかしなくていいですから」


 ペコペコと頭を下げて謝る僕に(金沢文庫の)現場責任者である青葉先輩が笑顔で返す。


「大丈夫、気にしないで。それに新しい経験ができて視野が広がったと思うから。ところでさっき、柳橋くんと何か話していたようだけど……ずいぶん楽しそうだったね?」


「え? ああ、さっきはキミテ……柳橋くんの家に……!」


 ヤバかった。柳橋くんが同人作家であることを秘密にしたいって言っていたから、ここでその話はできない。でも話をしていたことは先輩たちも知っているから、ここは誤魔化すしかない。


「柳橋くんの家に、なに?」


 青葉先輩の笑顔が怖いです。今、僕は蛇に見つめられた蛙の気持ちがよく分かります。


「や、柳橋くんの家に……あ、遊びに行くことを提案されました!」


 そうです、僕は間違ったことは言っていません! だから堂々としていればいいんです!


「き……今日、家に来たので、今度はウチに来ないか、と。けど恐れ多くてお断りしようかと思っていたんです」


 すると、その話を耳にした(金沢文庫の)現場監督が食らいついてきた。

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