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そして天国から地獄へ

 こんにちは! 新番組「突撃! 福田隆のオタク訪問」………もとい、お宅訪問のお時間がやってきました!


 現在、我が家のリビングダイニングキッチンには、なぜかドローンが一台、天井近くを飛んでおります。そしてダイニングテーブルには福田家のお三方が陣取っています。父、母、姉は、櫻森くんからの謝罪を無視して、日本語ではない何かを叫びながらゲットしたお弁当を食べております。


「IΔΣΦ! ΨΩαδεζ?」


「%&! @↑$\」


「∞<+=×!」


 地球では使われない、もはや宇宙語ですね。それでも家族である僕には三人が何を言っているの分かってしまう。


「これが松茸か! ということは国内産じゃないな?」


「別にいいじゃない! 美味しければ何だって」


「父よ、それ椎茸!」


 以上で副音声を終了します。全部訳していたら僕らが食事できません! さて、セレブたちの様子を見てみましょう。カメラさん、こちらです。


「こ、ここがリビングですか……なるほど」


 若干、顔を引きつらせた柳橋くんでしたが、しばらくすると慣れたようでテレビの前のソファに腰かけてお弁当を食べ始めました。


「せ、狭い……嘘だろう? ここに四人で暮らしているのか!? 俺には無理かもしれない」


 キョロキョロと視線を忙しなく動かして我が家の一番広い間取りを狭い、という櫻森くん。きっと彼の自室は、ここよりも広いのでしょうね。


(そうだよねぇ。寮だって一部屋に二人とはいえ、このリビングダイニングの二倍はあるもんね。しかもバストイレは別で、ウチよりも広いし。ワンルームマンションに行った日には、何て言うのかな?)


 考えるだけ無駄なので、僕もお昼をいただきたいと思います。ゆっくりと蓋を開けると、そこは和食の宝石箱でした!


(これ、アワビだ! こっちは海老だけど、まさか伊勢海老じゃないよね? 父さん、炊き込みご飯に入っているのは、どう見ても椎茸でしょう!)


 丁寧かつ綺麗に敷き詰められたお弁当は、目で楽しませ、味で楽しませてくれます。ああ、これぞ至福の時間ですね!


「櫻森くん、ありがとう。ここのも凄く美味しいよ! 手間がかかったであろう繊細な味わいに、彩り豊かな食材たちを、こうしていただける喜び。もう二度と食べれないと思うと、ゆっくりと味わって食べないとね! それなのに……はあぁ」


 思わずため息が出ます。うちの家族、味わうというよりは、かきこむようにガツガツ食べているんです……と、いうか食べ終わり現在、お茶を飲んで和んでいる状態です。おいおい、もっとゆっくり味わえよ!


「あ、お茶を出してなかった! ごめんね、すっかり忘れてた」


(こういう時、母親が「粗茶ですが」と言って持ってくるんじゃないの?)


「母さん、お茶を……」


「粗茶の粗茶ですけど、お飲みになります? お二人のお口に合うか分かりませんけどね!」


(ちょっと待て! その聞き方はないでしょう! 自分が歳が上だからってセレブな二人に失礼でしょう!)


「あ、いただきます」


「お、俺も試したい」


 櫻森くん「試す」って、君も何気に失礼ですね。一応、我が家のお茶は母さんの好みで鹿児島の知覧茶です。


「私の実家から送ってもらったお茶だから悪くはないと思うのよ」


 そういえば親戚に、お茶農家の人がいるって聞いたことがあった。その人から送って貰ったものなら大丈夫かもしれない。


「二番煎じでごめんなさいね。どうぞ!」


 そう言って見たことのない湯飲みが三つ、小さなリビングテーブルに置かれた。視線を母さんに向けると「昨日、百円均一で買ってきたの!」と満面の笑みを浮かべたまま、褒めてほしいのか、その場から離れない。


「百均って堂々と言わないでよ! あ、二人とも本当にごめんね」


 土下座をしようかと思ったが、それを柳橋くんが止めた。そして湯飲みを手にするとマジマジと眺める。


「これが世にいう百円均一の商品ですか! 意外と使えるのですね。これが百円で購入できるとは、すごいですね!」


「……これが百円。いくら割れても、これなら気にならないな。家族の土産に買っていくか」


(さっきから櫻森くんの発言に殺意が湧くのは仕方がないよね……金持ち、爆発しろ!)


 その頃の金沢文庫社員たちの様子は、というとーー


「……」


 ドローンから送られてくる食事風景を見て絶句する青葉。


「飢えた獣を見ているようだ」


 ありのままを伝える和泉。


「長年この家族の中で、よく過ごせましたね。尊敬します!」


 同情して涙を浮かべる渋谷。


「面白い家族じゃないか! さすがは福田のご両親とお姉さんだな」


 渋谷の発言に対して褒める瀬谷。


「……やはり福田を我が家の末席に加えるべきか?」


 己の願望を叶えるために暗躍しそうな金澤。


「懐かしいですね。私も貧しいながらもこんな家族でした。幸せそうですね」


 ちゃっかりワンボックスカーに同乗して、しみじみと語る大和運転手。


 その大和さんが近くの自販機で購入した宇治抹茶入りのペットボトルのお茶で各自、喉を潤しながら続きを見ることになる。

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