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閑話・生徒会役員のウラ話

 1年の【姫】福田隆。彼はビン底眼鏡が印象的な「ごく普通」の生徒であるーー。


 新しい学級委員たちとの合同会議が終わり昼食の松花堂弁当が配布されている中、生徒会役員は隣接する生徒会室に移動した。


「まさか素顔をさらしちゃならない存在がいたとは、芸能人も真っ青だな!」


 瀬谷の発言に金澤も賛同する。


「僕の提案は、理に叶っていたであろう? あのバカは黙っていれば貴公子、話せば下ネタ、歩く姿はチンピラを体現した男だからな」


 金澤の例えに一同、称賛の嵐だった。まさにその通りだからだ。「あのバカ」こと生徒会長は仕事をせずに好みの生徒を侍らせ、時にはコトにおよぶ、という今年の生徒会で唯一使えないやつなのである。


 瀬谷を追いかけて突飛な行動をする金澤だが、実は仕事のできる男である。今回も瀬谷のためと言いながら、1年の彼をバカから守るために考えていたのだろう。


「金澤くん。君さ、福田くんのこと気にいってない?」


 青葉から、からかうように言われて目を丸くする金澤に、今度は和泉が尋ねる。


「気づいてなかったのか?」


「……気づくも何も、今日会ったばかりの1年を気にいるなんてこと……そんなこと」


 いつもはハキハキ答える金澤にしては、ボソボソとハッキリしない物言いになる。


「いいや、気にいったと思うぞ。だってお前、あいつが眼鏡を落として素顔がさらされた時に慌ててただろう? 『バカに見つかったらマズイ、どこか隠さないと』って言ってたじゃん」


 瀬谷の言葉に金澤が呆然としていた。自分が言ったことを覚えてなかったようだ。だが近くにいた瀬谷に小さな呟きは、はっきりと聞こえていた。


 幼馴染みの3人ーー青葉、和泉、瀬谷が幼稚舎から初等部に上がり、家族から甘やかされて育った金澤が櫻森に入学し、しばらく経ってからの頃、あることがきっかけで瀬谷と金澤は口論になった。


『僕の言うことは叶えられて当然……』


『なら俺は、お前の言うことは全部聞かない! 人間は、叶えられないものだってあるんだぞ!』


『そんなことない! パパに言えば!』


『そのパパだって、全部を叶えてるわけじゃないんだ。お前の兄ちゃんはいいヤツなのに、お前はスッゲー嫌なヤツだな!』


『兄上は、家族に愛されている僕のことが気に入らないのだ! だから僕も兄上は嫌いだ。そんな兄上がいいヤツなわけがない!』


『だったら、もう俺は何にも言わない。ずっとそのままでいればいい!』


 金澤は初等部から櫻森に通うことになった。それまで通っていた所でも同じように傍若無人に振る舞っていたらしい。そのせいで遠巻きにされ、それでまた癇癪を起こして……の繰り返しだったと後で本人が言っていた。


 兄からのお小言が気に入らなかった金澤が嫌がったため、両親は兄とは別の一貫校に幼稚園から入れた。しかし先ほどのような状況になり、少しずつだが考えを改めていた。しかも、このまま初等科に金澤が通うなら別の一貫校に編入する、と他の父兄からの相談を受けた校長が金澤の両親にその話をした。ようやく両親は現実を知ることとなる。


『だから言ったじゃないか。アイツは男なんだから自分だけ守られるじゃなく、相手を守ることを教えないとダメだって』


 女の子が欲しかった両親は、歳を重ねるごとに女の子のように可愛い金澤を蝶よ花よと育ててしまった。それに対して兄は男らしく、跡取りということもあり幼き時からしっかりと周りを見つめ、両親や弟に苦言を呈していたのだ。


『私がアイツを監視するから、櫻森に編入するようにしてください』


 初等部に通うその兄の一言で、金澤は櫻森に入ることになったのだ。最初は駄々を捏ねて行こうとしない金澤だったが、家族の様子が今までと違うことは薄々感じていた。同じようでも腫れ物のように扱われている気がしたのだ。


 居心地が悪くて学園へ。兄と共に車で向かう際には、兄からのお小言が待っていた。だが金澤は見事にスルーをして耳を貸さなかった。そうして起きた瀬谷からの「言うこと聞かない」宣言。しかも兄のことを誉めた瀬谷を金澤は許せなかった。


 でもその日から金澤の周りは、誰も近寄らなくなった。取り巻きもいない。自分に失礼なことを言った瀬谷の周りには、男女問わずたくさんの子が集まり、笑顔で仲良く遊んでいる。


(何が自分と違うのだろう?)


 金澤は、そこから瀬谷を観察することにした。自分と何が違うのか、なぜ自分と周りとは距離があるのか。しばらくして、なんとなくだが瀬谷を見ていると分かった気がした。


 彼は家族ではなくても、理不尽なことから守ろうとする。瀬谷に守られた者は安堵し笑顔になり、諌められた者は諭され反省する。人との仲を取り持ち、慕われる瀬谷のことが羨ましくなった。自分も怒られた時に反省していたら、今頃は瀬谷や他のみんなと仲良くできていたかもしれない、と。後悔はしても、瀬谷から拒絶された自分から声をかけることはできなかった。

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