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その4

 ヤバイ、ヤバイ。いくら意に沿わない仕事でも1年間だけだし、ちゃんと最後までやり遂げようと思っていたのに! でも、目の前の学生たちを見てごらんなさいな。こんな恵まれた環境にいたら、僕のBL妄想が止まらなくなるのは仕方がないじゃないですか。


「じゃあ、3年は右側の机の前に集まってくれ」


「2年は左側の机に集合!」


「今年やっと、あの衣装を着れる。すっごく楽しみにしていたんだ。中等部から苦節4年。待ったかいがあったよ」


 と、いうことで一旦、各学年に分かれて話をすることになった。1年はコの字の中央にできた机のないスペースに移動する。


「姫。さっきの話、聞いてなかっただろう? 口が半開きになっていたぞ。それはそれで可愛いが」


 先ほどの失態をニヤニヤしながら櫻森くんに言われる。しかし同じニヤニヤでも一般人と美少年では、なぜこんなに笑いの質が違うのでしょう。いやらしさを感じさせないなんて!


 もし僕が(あり得ないけど)【受け】だったら、ここでドキッと胸が高まって、両手を組み胸の位置まで持ってきたら「えっ、何でこんなに胸がドキドキしてるんだろう?」なんてセリフを吐いて、頬を染めてジッと櫻森くんを見つめるんだろうなぁ。


 ーーあり得ない。話としては全然アリなんだけど、あり得ない。(大事なことなので……以下略)


 いざ自分に置き換えると一気に冷める。鳥肌がたってるよね、今。一瞬にして氷の世界に連れていかれたかのように、全身に冷気のベールが纏わりついている感覚です。


「福田くん、良かったね。無事、コスプレ回避できて僕も安心したよ」


 ニコニコ笑って柳橋くんが、こちらに近づいてきた。思わず見惚れてしまいました。優雅な足取り、もしやパリコレのモデルさんですか?


「回避と言えるかは、微妙なところだがな。ともあれ姫が、無事に過ごせるのであれば先輩に任せよう」


 うんうん、と納得しているのか二人が頷いている。よく分からないけど、僕の心配をしてくれていたようです。すると、そこに渋谷くんがやってくる。


「福田くん。君の袴コスプレを見たかったけどメイドコスプレも似合っていると思うから楽しみにしているよ。写真、一緒に撮ろうね。眼鏡有りと無しの両方で」


 渋谷くん。写真を撮ってどうするつもりですか? それに何で、そんなに嬉しそうなんですか? 疑問がいっぱいです。


「渋谷、勝手に写真を撮るのは規約に反するんじゃないのか?」


「親衛隊が撮るのは規約違反ではないですよ。あ、でも口の固い子にお願いするから大丈夫」


 櫻森くんと渋谷くんの間に火花が散っているエフェクトが見えます。ちなみに柳橋くんは僕の隣で二人の様子を見守っているようです。でも僕の腰に腕を回さなくてもいいんじゃない?  両脇で話をしているはずの先輩たちが、こちらをチラチラと見てきます。


「おいおい、柳橋。二人を止めてくれ。話ができないだろう?」


 あ、君は柳橋くんのパートナーである【若】の立川くんじゃないですか。背が高く、短く刈った黒髪。意思の強そうな瞳に、はにかんだ笑顔が魅力的で弓道部に所属している和装が似合う日本男子。矢を放つ所作がカッコいいと話題の好青年です。(柳橋くんからの情報)


 今回のコスプレは袴だから、まさに立川くんのための衣装ですね! でも部活と同じだからコスプレとは言わないじゃないのかな?


「いいじゃないですか。仲が良いことに何か不都合でも?」


 (柳橋くん、怒ってる?)


 それを聞いて立川くんが呆れた顔して話しかける。


「渋谷が櫻森とお前が一緒に矢面に立て、なんて言ったから機嫌が悪いのは分かるが、時間が限られてるんだ。さっさと終わらせよう」


 立川くん、真面目な人ですね。僕の中で好感度が一気に上がりました!


「そうだね……新作ケーキの件もありますし。仕方ない、二人とも話を始めるよ」


 大きなため息の後、柳橋くんが櫻森くんと渋谷くんを呼んだ。お互い威嚇しあっていたが、こちらを振り向いた二人が僕たちを見て驚いた顔をしている。真っ先に声を出したのは渋谷くんだった。


「ちょっ、柳橋くん! 何で彼の腰に腕を回してるんですか!」


「姫っ! ちょっとは抵抗しろ!」


 はて、どうしてアタフタされてるんでしょうか。同級生で(不本意だけど)同じ役員やっているんだから、それくらいで驚かなくてもいいのでは?


「……前回も思ったけど福田くんって天然なの?」


 立川くん。その発言、聞き捨てなりませんね。僕のどこが天然なんですか! そりゃあ、時々妄想してしまいますが、ちゃんと周りを見て対応できる空気の読める男だと自負しております。でなければ、隠れ腐男子なんて、できるわけがない。後で訂正しておかねば!

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