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その2

 日焼け防止のため、わざわざグラウンドにゲルを建てる生徒会副会長の金澤先輩。確かに色白で睫毛が長い。そして凛として、ちょっとつり目な感じが、まさに猫のようである。(こんな先輩を貴方は、どう思いますか?) 


 そんな金澤先輩に辟易したように額に手をあてながら青葉先輩が尋ねた。


「金澤くん。君はゲルに映像機器を持ち込み、空調を効かせて体育祭を観戦できるけど、外にいる僕らは、室内の様子が一切分からないんだよね。中等部の時は、そこまでしてないよね?」


 さすがお金持ちが集う学園です。モンゴルからの直輸入でしょうか? 初夏とはいえ日差しが強くなる中、ゲルでの観戦は、さぞかし快適だったことでしょう。


「建てようとしたのだが、兄上に止められたのだ。だから学園のテントで我慢したまでのこと。去年兄上が高等部を卒業し妨害がなくなったから、何の問題もない」


 金澤先輩に、お兄さんがいたとは驚きです。しかも先輩の型破りな行動を監視してくださっていたとは。でも家族なら去年も止めることができたのではないですか?


「留学されていたからな」


 僕の疑問を和泉先輩が端的に答えた。


(あなたは、僕の心が読めるのか?)


 和泉先輩の話にウンウンと頷きながら瀬谷先輩が話を続ける。


「今、イギリスに行ってるんだっけ。末っ子のコイツに甘い奴らが止めるはずもないか」


 この瀬谷先輩の話から、お兄さん以外の家族は金澤先輩に甘いらしい。お兄さんの海外留学で目が届かない状況になり、先輩のゲル建設が実行されたようです。いや、止めるべきでしょう! グラウンドにゲルですよ。放牧の民の住居なんだからデカイはず。それを体育祭の邪魔をせず建てるなんて。


(そんな金澤先輩を、僕はどう評価すればいいのでしょうか?)


「親父の許可は取ったんですか、金澤先輩?」


 確かに! 櫻森くんのお父さんは、理事で高等部の学園長なんだから注意するんじゃないのかな? この櫻森くんの質問に金澤先輩が答えました。


「許可など必要か? 僕の肌にシミができるのを、ただ黙って眺めていろと?」


「金澤……シミは、すぐにできない」


 この和泉先輩の的を射たツッコミに役員一同、拍手喝采です。それに対して金澤先輩が言い放つ。


「何を言う。予防することは必須事項だ。常に最高のコンディションでいなければ真琴に失礼だろう」


(すみません。真琴って誰ですか?)


「なんで俺に失礼なんだよ! そんなの俺は頼んでないぞ!」


 あ、瀬谷先輩のことですか、了解しました。ところで金澤先輩は瀬谷先輩に片思いしてるんですか? さっき青葉先輩も金澤先輩に〈愛しの瀬谷先輩〉って言ってましたね。


「だが、色白で華奢な子が理想と言っていたぞ。まさか……嘘をついていたのか!?」


 愕然とした様子の金澤先輩。瀬谷先輩のために頑張っていたのに、それが無駄なことだったとは思いたくないですよね。そこに和泉先輩からのツッコミが入った。


「夫婦漫才は、それくらいにしておけ。それよりも彼の処遇を考えろ」


 そう言った和泉先輩の視線が僕の方に向けられる。一方、青葉先輩は魅惑的な笑顔で漫才コンビに声をかけた。


「和泉くんの言うとおりだよ。君たち二人が去年のことを蒸し返すから話が脱線したよ。元に戻すから瀬谷くんは、口をはさまないでね」


(魅惑的……いや、これ完全に怒ってますよね。頭から角が出ているような幻覚が見えます)


 打ちひしがれている金澤先輩と苦虫を噛み潰したような顔をした瀬谷先輩に釘をさして青葉先輩が話を続ける。


「先ほどの金澤くんの案は魅力的だね。だけど櫻森くんの言ったとおり、学園長の許可は必要だと思う」


 すると櫻森くんが青葉先輩に告げる。


「親父には俺から今回のことを伝えておきます。金澤先輩、今年も建ててもらえますか?」


 丁寧な口調でありながら怒気が混ざっているような気がします。


「……」


 金澤先輩が返事をしないため、瀬谷先輩が仕方がないと返事を促した。


「金澤、返事は?」


「……意味がないことをしていたんだぞ」


 そう言って、うなだれたままの金澤先輩。そんな先輩に瀬谷先輩は言った。


「俺は、お前の型破りなところ、らしくて良いと思うけどな」


「分かった! 去年と同じ場所でいいのか?」


 瀬谷先輩に褒められて、金澤先輩は顔を上げて嬉しそうに青葉先輩に返事をした。


(ツンツンしているようで、懐いた人にはデレデレなんて本当に猫みたいだな)


 僕のBL脳には、しっかりと金澤先輩の頭にネコミミが装着されました。 

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