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その3

 体育祭ーーそれは僕、福田 隆がBL生活を楽しむ上で、必要かつ重要な行事の一つである。若く麗しい男たちの熱い闘志と淡い恋の駆け引きが、僕のBL魂に火をつける!


「では、ここからは運動部総合部長である瀬谷から説明してもらう」


 今までの話を聞いていなかったので、後で櫻森くんか柳橋くんに聞こう。今、立ち上がった人は、さっき僕に声をかけてきた人の一人だ。瀬谷さんっていうのか。へぇ、やっぱり運動部の部長なんだ。そうじゃないかと思っていたんだ。だって焼けた肌にあの体躯だよ! しかも脳筋だよ! 間違いなく、この人は体育会系だ!


 あ、この学園には運動部が8つあり、その部の長と生徒会をつなぐ役割を運動部部長と呼ばれる人が請け負うのだ。今年は、この人が選ばれたんだね。ちなみに文化部も同じで、文化部総合部長がいるんだ。


「オッス! 瀬谷だ、よろしくな。これから今年度の種目について説明するぜぇ」


 ……挨拶からして体育会系ですね。そういえば資料を見たら、応援合戦という演目があったような? この人、応援団長にいいんじゃない?


「例年のことだが、各学年6クラスを半分に分けての紅白戦で行うぜ。種目競技は紅白対抗と学年対抗だからな」


 正直な話、参加するよりBL観戦することに意義がある腐男子としては、できるだけ競技には参加したくないんだけどなぁ。


「【若】と【姫】は、競技には参加せず応援団員として各組の士気を上げてほしい!」


 え、競技には出なくていいんですか! 良かった。運動音痴の僕が参加していたら、皆の足を引っ張っていたよ。これ以上、同級生たちに距離を置かれたくはないからね。


そんなことを考えていたら隣の人が「すみません」と一言告げて挙手をした。


「先輩。できれば俺、どれか一つ競技に参加したいんだけど」


 なんとっ! 貴方は、出なくてもいいのに、あえて参加するアクティブ派ですか。え、僕ですか? もちろんインドア派ですが、何か?


「櫻森か。編入組だから教えてやる。競技に参加したらお前は確実に死ぬぞ!」


 さっきまで説明するのが面倒くさそうな感じだった瀬谷先輩が、いきなり真面目な顔して櫻森くんを指さした。先輩、人を指でさしちゃダメですよ。小さい頃に言われませんでした?


「はぁ? 死ぬって、どういう意味ですか?」


 怪訝そうにたずねる櫻森くん。あってはならないこと

だけど、事故で亡くなることもあるから、死ぬわけないじゃん、とは言えない。でも、確実にってどういうこと?


「お前のような優良株、一緒に参加する生徒が狙わないわけないだろう! どさくさ紛れに抱きついたり、キスしようとしたり。おまけにライバル同士が競技にかこつけて殴る蹴るの大騒ぎになるからな。それでも参加したいなら、万が一の事があっても生徒会は関与しないぜ。それに……」


 瀬谷先輩が僕のほうに視線を向ける。


「相方を一人にする気か? 今のままだと他の一般生徒がイチャモンつけてくるぞ。肉体というか精神が死ぬからな。覚悟しておけ」


「……諦めます」


「オッケー。じゃあ、話を続けるぞぉ」


 もしや、この容姿で【姫】だなんて許さない! と僕に絡んでくるということですか? それは困りますが、櫻森くんが絡まれるのは全然問題ないので、是非とも参加させてください! あ、でも愛する柳橋くんのことを考えれば参加しない方がいいか。



(どさくさ紛れにキスされる櫻森くん。それを見た柳橋くんの胸がチクリと痛む。どうしたんだ、と考えてみてもよく分からない。でも可愛い子たちに囲まれている櫻森くんに段々と苛ついてきて、くるりと背を向け、その場を立ち去ったのであったーー)



 なぁ~んて美味しいシチュエーション! やっぱり参加させた方が良くない? ボーイズのラブは、こうでなくっちゃね!


「話を続けるぞ。そこのビン底メガネっ! ちゃんと聞いてろよ!」


「は、はいっ!」


 や、やばっ。脳筋だけど、野生の感が働くタイプなんだな。よし、観察日記にメモしておこう。


「開催日時は、今年も6月の第三週の土曜日だ。だが熱中症対策のため競技を減らし、時間も短縮する。9時開始は変わらないが、14時に終了。昼休憩はなし。終了後に各自、昼食をとることになるぞ」


 熱中症かぁ……。本当、毎年この暑さはキツイです。我がご母堂様も、以前おっしゃっておりました。


(私たちの時代は30度なんて温度、沖縄でしか聞いたことないわよ。夏は、高くてもだいたい28度くらいだったかしら。あと、熱中症じゃなくて熱射病だったわね。扇風機でも過ごせたんだから、やっぱり今より涼しかったんだねぇ)


 と、エアコンの効いた涼しい部屋で団扇で扇ぎながらアイスを食べてましたね。そういうところ、やはり姉上と親子だなぁ、と感じる瞬間でございます。


「で、本題の競技だが色別と学年別で3種目ずつ。色別は学年混合だからな。分かっているか、ビン底!」


 えっと、ビン底って、僕のことですよね。確かに眼鏡はビン底ですけど。しかし僕には、ちゃんと名前があるのです。まだ知り合って間もない先輩に、昔のあだ名で呼ばれるとは!

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