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エスパー少女

作者: 鹿沼部直作

 

 洗濯機は回したし、ご飯はあと数分で炊ける。よし。次はゴミ出しね。今日のゴミの回収日はっと・・・・・・新聞とペットボトルか。

 リビングに積んである新聞を紐で縛りまとめ、沢山のペットボトルが入っているビニール袋、二つのゴミを持って玄関まで出た。

 両手が塞がっているこの状況。普通の人ならば両手で四苦八苦しながらドア開けようとするか、あるいは片方のゴミを置いた後にドアを開けて外に一つ置いてもう一つを取りに行くといやり方だ。

 だが、私は違う。そのどちらをしなくても良いのだ。それはどういうことかというと・・・。

 「むむっ!」

 私は玄関のドアをジッと見て念じる。すると、かかっていた鍵とドアチェーンが独りでに外れた。

 これはトリックではない。驚くことなかれ実は私、超能力者なのです。物凄いほどの力を持った超能力者なのです。

 スプーンを曲げるのは勿論、東京タワーだって飴のように曲げる念動力が可能だ。

 他には飛行能力・透明・瞬間移動・読心・未来予知等・時間停止・etosetora。まぁ、だいたいなんでも出来るって事で!

 しかし、この一見万能に見える超能力には、とてつもないほどの欠点がある。 

 「あぁ、面倒だからってつい使っちゃったよ・・・。これで私の残り少ないほんのちょっぴりの寿命が~」

 そう、この超能力は使えば使うほど、その人物の寿命が減るといった重大な欠点があったのだ。だが、それを知らなかった2年前の私は馬鹿みたいに超能力を使っていた。

 もちろん今はそんな事はしないように自制している。しているはずだったのだが、ちょっとした事ですぐに使ってしまうのだ。中々、昔の癖と言うのは治らんものです!

 私はゴミを集積所まで置きに行き、朝食の支度をしなければと思い駆け足で家まで戻った。

 「ふぁ~、おはよう、絵里ちゃん。今日も早いのねぇ」

 家に着くとそこにはまだ覚醒しきっていない寝ぼけ眼で母さんが廊下にいた。

 「おはよう、お母さん。朝食ならもうすぐに用意出来るから顔洗ったらお父さんの事を起こしてきてくれない」

 お母さんは、「わかったぁ」と言うとリビングから姿を消して洗面所の方へ向かっていった。

 「よし、お父さんがリビングに来るまでに朝食をテーブルに並べておこう」

 私は食器棚から食器を取り出して茶碗やお皿などに料理を盛り付けてお父さんの起床を待った。

 「ここ最近、絵里ちゃんが早起きなのにお母さんビックリよ。いったいどうしたの?」

 「どうもしないよ。ただの風の吹き回しでやってるだけだよ。それに早起きは三文の得って言うじゃん」

 もちろん嘘だ。ただの風の吹き回しで1週間以上も早起きしてる人がいるとしたら余程の暇人か、体内時計が狂っている人だ。それに三文なんて現代の貨幣価値に換算すると100円にも満たない。これだったったら寝てたほうがマシだ。

 「だとしても~、家事まですることもないんじゃないの? お母さんとしては助かるから嬉しいけどさ~」

 「家事するの結構好きなんだ。それに料理に洗濯、掃除。これら全て出来てればさ、一人暮らしにも困らないよ。あっ、あと主婦にもなれるね」

 「・・・もしかして絵里ちゃん・・・好きな人でもいるの? その人の為とかに頑張っちゃっている系? ちなみにその人は同級生? 先輩? 後輩? それともまさか先生とか!?」

 訝しむような目で見てくるお母さん、どうやら我が筒野家では一般家庭とは違い、父親ではなく母親の方が過保護気味みたいだ。

 「あはははっ、心配しすぎ。今現在は好きな人も気になっている人もいないかな~」

 もし仮に誰かが私を好きになって貰っても困る。それは別にお高く止まってるのではなく、さっき私が言っていた寿命の事に関してだった。

 私は超能力を使って自分の残りの寿命を知ることが出来た。その結果、私が行きられる余命は半年ほどだということがわかった。勿論、これから一切に超能力を使わないで生活していって半年ということになる。

 最初の頃は毎日、こんな能力を恨んだりした。毎日、涙が枯れるほども泣いた事もあった。自暴自棄になって心配している両親を言ってはいけないことをぶつけたりしてしまった。

 暫くの間は部屋にずっと引き篭もってたっけな。本当に馬鹿みたいに毎日だった。両親に呪詛のように罵倒して後悔して泣いて、泣いて、泣きつかれてた。そしていつの日には涙も枯れ果てた。

 だけど、そのおかげかどうかわからないけど、頭が冷静になって考えたのだ。

 残りの寿命がない。じゃあどうする? 部屋に閉じこもっていても何も解決にはならない。じゃあどうする?

 そうなると私の行き着いた結論はこうだった。

 『残りの寿命がなくるまで精一杯に生きる』だ。

 泣いて後悔して部屋で死ぬくらいなら、笑って後悔して死にたい。

 だから、私は死ぬ前に親孝行を死ぬほどやろうと思う。私が死ぬまでは、私が本来生きていた分以上に笑っていて欲しい。

 ちょうどご飯が全て食卓に並んだ時同じくしてお父さんがリビングに入ってきた。

 「おはよう、おとうさん」 

 余命幾ばくもない親不孝者の娘ですが、頑張ります!

 

 

 

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