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第三話:暴動と協力

俺は覚悟を決めた。

草原の奴らだって同じ地球の人間だ。

見捨てるわけにはいかない。


俺達は森の村へ戻り、リックに草原の村について話した。


「……そうか、俺たちの他に飛ばされてきた人達がいたのか。

 で、そいつ等に食料を分けてやって欲しいと? 」

俺は静かにうなずきリックの反応を待った。

しばらくの間沈黙は続いたが「わかった、良いだろう。」とリックが決心した。


村のみんなにリックが説明する。

話は長かったがその内容は「生存者を助け、共に手を取り合おう! 」というものだった。

一部の人達は反対したがリックは、

「人手不足を解消できるかも知れないんだぞ! 」と一喝し、

「それに360日後のドラゴンを倒すために協力すべきだ! 」と説得。

反対の声も弱まり次第に大人しくなった。


リックが俺に、

「どのくらい人がいた? 」と聞いてきた。

「確か……。」

""後ろを振り向くと小さな小屋が数十軒はある。10人は入りそうな小屋だ。""

「10人入りそうな小屋が数十軒あった。」

「そうか……ここと同じくらい人数がいるならば 300人分を覚悟しよう。

 一人当たり 2キロくらい食べるとするならば、600キロ+@必要か……。」


リックは村の剣士に肉の在庫を確認し始めた。

巨豚(オーク)肉の在庫はどのくらいある? 」

「匹にして 15です! 」

「1匹あたり身長 2m~3m程で、体重は100~250だったな。

 荷車には 2mのが最大 3匹まで……。」

「規格別で分けました。

 2mが 8匹、2.5mが6匹、3mが1匹です。」

「となると、2m代を 8匹で 800キロ前後か。

 3m代 1匹追加で、荷車は 4台必要。

 今ある荷車は 3台。あと 1台必要だ! 」

「分かりました! 出来次第、肉を積みます。」

剣士系と魔法使い系にリックが草原の村への荷車作成と運搬準備を指示していた。

その間俺は、草原の位置をラビットと村の狩人達と確認しに行った。


――――――――


推定時刻、正午 5時頃 


日が沈みかけて来た頃。

「準備完了! 今すぐにでも行けます! 」

荷車に肉を積んでいた剣士が声を上げる。

リックの「日が暮れる前に前に行くぞ!」という声に、

村中のみんなは掛け声を上げ一気に士気を高めた。


村にいた人数は 300人くらい。

村に残るのは 250人くらいで、草原に向かうのは 50人。

剣士は 20人、魔法使いは 10人、狩人は 20人の編成。

肉を積んだ荷車は狩人達が(前で 2人と後ろで 3人の)5人掛かりで押して移動する。


森の中は騒がしく、遠くで沢山の巨豚がこっちの様子を伺っている。

こっちが大人数だからか襲っては来ない様だ。

しばらく歩き日が沈み空には満天の星空、ようやく草原に出る事が出来た。


あたりは暗く、草原の村の方には明かりが見えるが……。

あれは焚き火の明かりなどでは無く、

火事でも起きているかのような明るさだった。

すでに暴動が起きていたのか!?


「みんな急げ! 」

と俺が声を上げたとき、それを遮るようにリックが、

「狩人達は荷車を守りながら進め!

剣士達は暴動を起こす奴らをやれ!

魔法使い達は後方から支援しろ! 」と指示した。

すぐさま隊列を組み進攻を始めた。


村では隠されていたであろう食料を強奪する人達や、

家にプチファイアを放ち、必要に攻撃する人達がいた。

それに対抗すべく俺達がそれを阻止しに行った。


俺は森の村で貰った木の槍を装備し走る。

強奪していた剣士が俺に気が付き向かって攻撃してきた。

敵は我武者羅に木の棒を振りながら俺に近寄ってくる。

速さはそこまで早くないし、木の棒程度なら当たっても大したダメージにはならないだろう。

剣士の攻撃をかわしながら……隙を突く!


(すい)せ……ッ!』と言いかけた時、

敵剣士の『一線(いっせん)!!』


攻撃が早い!

「くそっ! 」

俺は慌てて足で地面を蹴り、その場で回転するようにし突きの攻撃をなんとか回避した。

さすがに突きの攻撃は当たったらタダジャ済まないだろう……。

遅い剣速で俺を油断させ、こっちの攻撃にあわせて、一気に距離を詰めて魔技を使ったようだ。


魔技を使った敵剣士が驚いているのが見える。

"必勝法が見破られてのか!? "とか思っていそうだ。


敵剣士はまた木の棒を降り始めたが、

俺は『ウォーターボール! 』と唱えそれが剣士に命中。

「ぐわっ! 」剣士の動きが遅くなった。

(今だッ! )


殴打(おうだ)! 』

素手での攻撃だが、水を浴びた剣士の顔面に当たった。

剣士は少しだけその場に立ち尽くした後に気を失い倒れた。


俺が戦っている間に味方の剣士達が他の敵を追い払い、

暴動を起こした奴らは森の反対側の山脈に逃げていった。

組織的な暴動のようだ。


――――――――


敵が消え魔法使い達が火消しをし、後続の狩人達が早速食料を分配し始めた。

飢えていた人達は涙を流し、感謝しながら燻製の肉を食べていた。


今日の暴動で怪我をした人が多く、

魔法使い達が回復魔法を多様しているが、プチヒールでの回復速度はかなり遅い。

その魔法使いに混じって俺も回復に貢献した。


あたりは暗く闇夜に包まれた頃、

ようやく怪我人達の回復は終わった。

3時間くらいはかかったかも知れないが、

幸いにも負傷者だけで死亡者はいなかった。


しかし、この世界には MPの概念が無いのか、かなり魔法を多用できた。

が、体力というか……スタミナをだいぶ消耗した気がする。


今日はここで野宿だが、

現状、寝る以外に体力を回復する術がない。


しばらく横になっていると、

「君は、確か…………"レベル 30"の……。」

俺はすぐに目を覚ましそいつをみる。

そこにいたのは……工藤だった。

最初は警戒したが、彼には敵意がないのが分かる。

初めて会った時から田原から身を守ってくれたからだ。


「少し話そう。」俺はそう言い、

工藤はうなずきその場に座り込んだ。


ここの草原の村を出た後や森での出来事、

森の村での狩りや食料確保、いろいろ話した。


その時、

「すまない! 」と工藤が謝り、

「暴動のきっかけを作ったのは僕なんだ!

 田原達が君を囮に使った事を自慢していて、僕がそれに反発したのが原因なんだ! 」

と告白した。それに対し俺は「ありがとう。」と感謝の言葉を返した。

工藤は何度も謝っていたが、俺は暴動の原因について追求した。


話によると俺をを忌避していたのは、

田原含め100くらいの人達だと言うことが分かった。、

ここに残った人達(被害者達)約 300人は、

田原達の圧力にずっと逆らえず何も言えずにいたそうだ。

そして俺が囮に使われた事で、工藤はそれに耐えれず反発したのが発端。

言ってしまえば原因を作ったのは、田原でもあり工藤でもあり俺でもある。

この暴動が起きなかったとしてもいずれは暴動は起きていた。

誰も悪くない。



真実が語られたが、

これをどうやってリックに伝えるべきか……。

ラビットは俺が囮にされた話を知っているし、

そもそも"レベルと職"を伝えたら、

また同じことが繰り返されるかもしれない。

何とかしなければならない。

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