人狼の工場
「ついたぜ」
開けた場所に出ると、人が横になれそうな十三個の黒い箱。
中身はほとんど空だったが、一番目と二番目の箱には男の子と女の子が眠っている。
この場所は気持ちが悪い。
「なんですか、ここ……」
青ざめた顔で、リュカが言う。
「オレも詳しくは知らねぇけど」
お前を見たのは十三番目の箱だった、とジルが続ける。
十三番目の箱の中身は空だった。
「やっぱ、ここに居たのお前なんじゃ……」
「……」
今まで、考えようと思ったこともなかったが。
アベルの夢を見てから、頭の中のロックが外れたようにリュカは思考を巡らせてしまう。
「ここは、人狼の工場かも……」
人狼は、ここで作られリリスの元で教育をうける。
「正解」
パチパチと、軽快な拍手と共に近付いてくる足音。
「オリジナルのアベル少年を使った影響で、一番と二番は使えんがな」
声の主は、ヘイムスクリングラ社のシェオル社長。
そこ傍らには、ケルベロスが寄り添う。
「お、俺たち以外にどっから」
驚いて居るジルを見て
「別に、入り口は一つとは限らねぇだろ。お前ら、王太子を部屋まで連れてけ」
シェオルが言った。
「お、おい、自分で歩くって」
彼の背後に居た研究員二人が、ジルを連れて行く。
「あ、王太子さん」
後を追おうとしたリュカを
「追っても無駄」
シェオルが引き止める。
「今なら、カインの末裔も干渉できねぇな」
シェオルは不敵な笑みを浮かべ
「契約更新しようか、アベル少年」
「契約更新……?」
リュカは、訝しげな表情を向けた。




