吸血鬼を狩る者
「息子たちって言われてもな……」
丁寧な言葉を崩したルヒトは、長い黒髪のヴィックを捨てる。
「お父さん?」
そして、呆然としているリュカの方に視線を向け
「俺も、こいつも……あんたの記憶はないぜ、アダム」
アダムと呼ばれーーベルナレッタは唇の端を歪める。
「不公平だろう。お前らは人間に混ざる中、私はこうして生き続けるしかない。吸血鬼の血を飲まなければ、肉体を維持するのも困難だというのに」
ルヒトは眉を寄せ
「だから、ここに吸血鬼の牧場を作る!? さすが、最初の吸血鬼は頭がイカレてる」
アダムの行動を否定する。
「我らが父に、無礼な……」
気を荒立たせたネレイアを
「よい」
アダムが制す。
「お互い、悪い話ではないだろう。お前は正気を繋ぐことができ、人狼は飢えずにすむ」
「……てめぇ」
完全に、体のことを見抜いている。
苦い顔をしているルヒトの隣で
「貴方は、お姫様の魔法で蘇った王子様?」
リュカはティア王国の古い言い伝えを語り出す。
「人として朽ちていれば、このように苦しむ必要もなかっただろう」
「……ふーん」
だったら、と切り返した瞬間、リュカの声質が低くなる。
「いけない」
止めようとしたネレイアの横を通り抜け、狼の姿のリュカは跳躍。
アダムの左肩に噛みつき
「ここで、死ね」
そのまま、リュカは床へと押し倒す。
苦痛に表情を歪めながら
「……アベル、お前の執念には感心する」
ベルナレッターーアダムの体は、人として朽ちた。




