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復活の儀式

「これより、復活の儀式を執り行う」


クルーエル修道院長シスター・ベルナレッタが宣言をする。

年齢は四十代後半、厳格な女性。


ルヒトとリュカが修道院に来た時は


「院長は、体調不良のためお会いできません」


面会を断られた。


(しかし、どこかで見たような)


ルヒトは、シェオルから渡された資料を思い出す。


行方不明になった担当エージェントと同じ顔。


(同一人物……いや、操られている可能性も)


ルヒトが思考を巡らせていると


「……」


ベルナレッタから氷のような視線。


明らかに、向こうはこちらを意識している。


ルヒトは修道女たちの輪の中に紛れ、ベルナレッタの視線から逃れた。


中央にに置かれた柩の蓋が、修道女たちによって開けられる。


(不気味だなぁ……)


震えるリュカに気付き


「怖がることはありません。私達は奇跡の瞬間に立ち会えるのですから」


サラが手を握ってくれた。


(女の子の肉って、柔らかそう)


今は考えちゃダメだ、とリュカは首を振る。

クルーエル修道院の女性たちは、完全な吸血鬼ではない。

しかし、何らかの形で吸血鬼の血が混ざってるのは確かだ。

人狼の食欲は理性で抑えているが、吸血鬼の血が混ざった修道女を見ると腹が減る。


「しかし、物騒ではありませんか? 野犬に襲われるなど……」


柩で眠っている少女は、昨夜獣の唸り声を聞いて外に出たという。

そして、野犬に襲われたと聞いて、ルヒトはサラに尋ねる。


「クルーエル修道院では、野犬は復活の象徴なのです」


そう言って、サラは右肩の痛々しい傷跡をルヒトとリュカに見せた。


獣の鋭い爪で傷つけられたような傷跡に


「これは……」


ルヒトは眉を寄せる。


「私も野犬に襲われ、院長に復活させてもらったのです」


ランプの明かりが消され、講堂は闇へと閉ざされる。


(これでは、中央で何が行われているのかわかりません。いや、夜目の聞くリュカ君なら……)


この暗闇なら、リュカの正体に周りは気づかない。


ルヒトはリュカのフードを取ると


「見えますか?」


小声で聞いた。


「……そんな」


動揺しているのか、声が震えている。


再び、ランプに火が灯る。


「……あれ、わたし」


起き上がった少女。


「おかえりなさい、シスター・ルシア」


そう言って、ベルナレッタはルシアの手を取った。


「院長は、素晴らしい方だわ」


「いつか、私も復活の儀式を……」


修道女たちが、口々に言っている。


「ルヒトさん、あの子……廊下の掃除してる時に見ました」


リュカはそう伝えると


「その時は、混じってませんでした」


「……リュカ君、あの暗闇で何を見ました?」


ルヒトが尋ねると


「院長が、あの子を吸血鬼みたいに噛んでました……でも、あの人は吸血鬼じゃないような」


何か別の存在、とリュカは言う。





























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