クルーエル修道院
「私は、ルナ。こちらは、妹のリナです」
女子修道院に潜入するにあたり、ルヒトは姉のルナ、リュカは妹のリナと名乗ることになった。
リュカの方は「暴力的だった兄に顔を傷つけられて、素顔を見せることができません」とルヒトが説明したところ怪しまれるどころか、同情された。
「今日から、あなた方の指導を担当します。シスター・サラです」
亜麻色の髪の、大人しそうな少女。
(ミリアム先輩と同じ十五、六歳でしょうか……性格は真逆そうですが)
ルヒトが考えていると
「……あ、あの」
リュカが、サラの周りを回る。
「何やってるんですか」
ルヒトが引き離すと
「だって、あの人」
少し興奮している、リュカに気づいた。
「混ざってるよ」
修道院での生活は質素なものだ。
早寝早起き、決まった時間に食事をして祈りを捧げる。
そして、午後はそれぞれの使徒職に励む。
健康的な生活とは無縁。おまけに周りはリュカを除いて、女性ばかり。
イリアから教わったナチュラルメイクの腕が上がる反面、ルヒトは神経をすり減らしている。
リュカは箒を片手に
「ルヒ……じゃなかった。ルナ姉さん、疲れてますね」
「うう、タバコ、酒……」
修道院の食事では腹を満たせないので、リュカはこっそりトマトジュースを飲む。
ルヒトはイリヤから渡された、禁煙ガムで耐えている。
「それで、他の方も混ざってるんですか?」
ルヒトに聞かれ
「昨日一日見てましたけど、普通の人もいるみたいです」
リュカが答える。
「ルナさん、リナさん講堂へ集合です」
サラが、二人を呼びに来た。
「まだ、ミサの時間ではありませんよね?」
不思議に思い、ルヒトはサラに尋ねる。
「これから、講堂で復活の儀式がおこなわれます」




