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神様は、少々私に手厳しい!  作者: 守野伊音
第二章:奮闘
43/100

43.神様、美女と少し仲良くなれました

 ヴァミリア様の綺麗な指が、優雅にカップを掬い取って口元に運ぶ。

「……貴女は、変わらないのですね」

「バムルア様は太っ……[痛い痛い痛い]」

 隣に座ったアリスが机の下で足を踏んでくる。やらかしたのは分かるけれど、王女様を前にひそひそ続けるわけにもいかず、どの辺をやらかしたのかが分からない。このままでは墓穴を掘り続ける気がする。

 慎重に行こうと、ごくりとつばを飲み込む。

「ヴァミリアです、ヴァミリアよ。昔は貴女を見上げたわたくしも、貴女を追い越すほどに成長致しましたの。成長、しましたのよ。成長」

「成長」

「そうです」

「巨大に成長なさ[痛い痛い痛い]」

 アリスが踏んだままぐりぐりしてきた。どうやら、立派な墓石も建ててしまったようだ。

 青筋の行方を確かめると、青筋を湛えた微笑みで、ヴァミリア様は一言一言強調してくれて聞きやすい。

「大きくなりましたの。子どもが、大きく、成長致しましたの」

「大きく」

「そうです」

 青筋は走ったものの、昔は私のどや顔に顔を真っ赤に憤慨していた姿を思えば、本当に大きくなったものだ。あの頃から綺麗で、今も面影がないわけじゃないのに全く気付けなかった。胸の中がじわりと温かくなるくらい感動する。本当に、あの小さかったあの子が。

「すっかり様変わりに武人さんになったのですね!」

「…………騎士アードルゲ、正直に答えなさい。わたくし、それほどまでに、その……ごつい、かしら」

 言いづらそうに口籠ったヴァミリア様に首を傾げていると、今まで足を踏んでいたアリスに頬っぺた引っ張られる。結局引っ張られるのか。

「貴様はっ……! 偉人をあれだけ美人と言い間違えたのに、どうしてこういう時は言えないんだ!」

「……私、何と言った?」

「武人だ」

 憮然と答えられて、慌ててヴァミリア様に向き直る。こんなに麗しく成長なさった一国の王女様を武人と呼んでしまうなんて。そりゃ、ごついと言われたのかと勘違いされるはずだ。

「申し訳ございません! 言い間違えたぞり! すっかり様変わりに大きく成長して、丸々と肥え太った美人[痛い痛い痛い痛い痛い]」

「申し訳ございません、ヴァミリア王女! 我が友は悪気だけはないのです! いや……賢さも大して……階段を落ちた事から運動能力に長けているわけでも……足は短く鼻も低い…………この者は、悪気もないのです」

 暗に他にも色々ないと言われている。事実なのが悲しい。

 座らないで王女様の後ろに立っている三人の騎士達の目には、怒りよりも憐れみが浮かんでいる。

 ヴァミリア様は、んっと小さく咳払いをした。流石王女様、咳払いまで上品だ。そのままにこりと微笑まれると幸せな気分になれる。その青筋さえなければ。

「ねえ、黒曜、貴女とは二人きりでお話ししたいわ。女同士、堅苦しい席ではなく、ねえ? 殿方のいない場所で、二人きりで再会を喜びましょう」

 目が全然笑っていなかった上に、額の青筋の嵐が怒りを如実に現している。アリスは片手で顔を覆って呻き、騎士達の目は憐れみだけになったが、カイリさんは欠伸をしながら髭の剃り残しを確かめていた。どうやら、また徹夜だったようだ。毎日お仕事お疲れ様です。



 そして、目の前に美女。以上! な席が出来上がった。一国の王女様と二人っきりという状況なのに、アリスだけでなく彼女の護衛のはずの騎士達まで心配げな瞳を向けていたのは私にだった。まあ、それだけやらかしたわけですが。


 美女は伸びた背筋のまま、またお茶を飲んだ。やらかした自覚はあるので、私は唾を飲み込む。笑顔だ。笑顔が大事だ。日本人ならできる!

 ほとんど音をさせずにカップを置いた王女様は、静かに私に視線を合わせた。

「黒曜、元気そうね」

「てめぇのせいでな!」

「…………おかげさまでと、言いたいのかしら?」

「申し訳ございません」

 早速やらかした。

「満面の笑顔で罵られるとは思わなかったわ……」

 ぶつぶつ言いながら長い睫毛が何度か瞬く。睫毛の下では、綺麗な紫色の瞳がじっと私を見ていた。

「話には聞いていましたが、本当に、あの頃のままなのですね」

「王女様は、ご、ご、ご機嫌うるるわせくであららせみられますたようでおよろこぶ申し上げます」

「…………無礼はもう今更よ。聞きづらいわ。普通に喋りなさい。貴女に作法なんて求めてはいません」

 去り際にアリスが教えてくれた言葉を言おうとしたけど、見事に舌が絡まった。自分でも何と言っているのか分からなかったので、そう言って頂けてほっとした。

「怒髪天……怒ってはない?」

「昔でしたら即刻罰を与えていたかもしれません」

「勘弁願います」

 へこりと頭を下げると、ヴァミリア様は初めてちゃんと笑ってくれた。

「今は、分かりやすい貴女が心地よいと思うくらいは疲れているの。そのくらい、成長したのよ。成長、成長ですよ。私も大人になったの」

 あの小さかった女の子がと、何だか目頭が熱くなる。気分はすっかり親戚のおばちゃんだ。

「お年を召したのですな……。ご年配になられて、およろこぶ申し上げます!」

「…………成長と仰い」

 やらかした瞬間は青筋が走っていくので大変分かりやすい。王女様、どうもありがとうございます! そしてほんとすみません。



 ふぅっと優雅に息を吐いたヴァミリア様が開いた瞳は、とても静かなものだった。

「貴女は、これからのことを聞かされているのかしら?」

「いいえ」

「そう」

 短く答えたヴァミリア様は、ちょっと困ったような顔で私を見る。

「わたくしも、昔はよく仲間外れにされてもどかしい思いをしたものよ。話を聞かされても何も出来なかったでしょうし、気を揉むだけだったかもしれないけれど、口惜しいものよね」

「はい」

「相手が心配してくれているのが分かるから、余計に聞けなくなってしまうの。役立たずと蔑まれていたのなら意地でも暴き出してやろうと思えるのに、わたくしが心痛めることのないようにと隠されてしまうと、何も知らないまま笑っていなければならないのよ」

 ちらりと私の肩越しに扉を見た視線の動きで、ああ、だから二人きりになるように言ってくれたのだと今更気が付いた。

「黒曜」

「はい」

「戦になるわ」

「……はい」

「だから、わたくしはここにいるのよ。兵を連れて、ここにいるの」



 三百年続いた戦争の中で、互いの国の守護伯は国境を守りきった。

 けれど今、ブルドゥスは内側から侵略を受けて、落ちた。ガリザザを後ろ盾として、グラースとブルドゥスの兵が協力したというのだから皮肉としか言いようがない。

 その軍は、国境を落としにやってくる。何とも奇妙な話だ。国の国境を落としにきた軍と、同じ服を着た兵同士が争うのだ。

「ロヌスターの沖合にガリザザの軍が確認されています。運良く嵐が足止めしていてくれていますが、嵐が止み次第上陸されるでしょう。あれが上陸し、王都を目指す前に、せめて迎撃の態勢だけでも整えなければなりません。ブルドゥスとグラースが落ちれば、あれは、この大陸を飲み込むでしょう。あれが姿を現して、偽黒を支持していた民が気づいたとてもう遅い。この大陸で、我々以上の軍を持った国は存在しないのです。一度落ちてしまえば、大陸自体がガリザザの手に渡ってしまう。その為には、何より、民意を一つに纏め上げなければなりません」

 カイリさんが急いで日本の文化を浸透させようとしていた理由が今更分かった。もう、時間がなかったのだ。自分達が属している場所の正当性が認められなかった住人達はどうするのか。最悪の場合、ここも内側から崩れていくことになる。そうなった時、終わるのはブルドゥスという国だけじゃない。大陸自体が呑み込まれる。

 だから急いだのだ。皆急いでいた。でも、誰も言わなかった。アリスさえ、何も教えてくれなかったのは、意地悪じゃない。

 優しすぎると変な文句が出そうになって飲み込む。おかげさまで追い立てられるように元気にならなくて済んだのだ。薬の量と頻度はちょっと多かった気もするけれど、穏やかに過ごせた一か月間は、彼らの優しさだった。



「一か月で何とかグラース内の乱は落ち着かせました。火種は未だ燻り続けていますが……後は残してきた者達に任せます。父王も兄も不在の状況下で……皆、よく頑張ってくれました」

「バム……バミル……バ、バミリア様も、大変奮闘致したことで」

「言いづらければヴィーで結構よ」

「ブイー」

「せめて愛称くらいは発音なさい!」

 面目ない。口の中でブイブイ言って練習する。でも、中学校の時からなのだけど、ヴァ行の発音がそれはもう苦手で苦手で。『下唇を噛んでヴィ』と教えられても、ブーイブーイ言い続けた挙句、噛み切った馬鹿はこの私だ。


「ブイー、ブイー、ブーイ」

「ヴィー」

「ブビ」

「こんなにも相手を殴りたい気持ちになったのは生を受けて初めてだわ。喜びなさい、黒曜。グラースの王女を野蛮な気持ちにさせたのです。誇っていいのよ?」

 せめて平手でお願いします。

 ゆっくりと持ち上がってきた握り拳に全力で頭を下げた。



 スパルタ先生のおかげで、なんとか不恰好ながらも発音できるようになった。王女様を愛称で呼べるという光栄の極みより、体育会系の感動が残ったが。


「ありがとう」

 お礼を言おうとしたら先を越された。教えてもらったのはこっちなので首を傾げる。

 その先で、ヴィーは頭を下げていた。一本の乱れなく結われた頭の分け目や旋毛部分は、髪や飾りで覆われている。

 慌てて顔を上げてもらおうとしたけれど、王女様の肩を掴んで引き上げていいものか悩んでしまい、結局わたわたと両手を振るだけになってしまう。ヴィーは指先まで綺麗な掌を揃えて、頭を下げたままだ。

「貴女を巻き込むわたくし達の無力を、どうかお許しください」

「ヴィー、頭部上げて、ヴィー!」

 わたわたしていた手が細い指に掴まれる。ゆるりと上がった視線が私の耳を見て、ふわりと緩む。

「騎士アードルゲと揃いの契りですね。……わたくしも、持っています。友が、おりますの。王都で兄はきっと生きています。そしてわたくしの友も、決して諦めず状況を打破しようと懸命に奮闘していることでしょう。……どうか、貴女の力をお貸しください。民の信頼を失った王族と、反逆者と名指された誇り高き守護伯の為に、どうか、手を貸してください。貴女の存在が、黒曜という名の存在が、民の心を取り戻す光となるのです」

「友……」

 私にそんな壮大で重要なこと出来ないとか、私の存在が凄まじい偶像化してるとか、色々思う所はあったけれど、私が拾えて口に出せたのはそんな何気ない言葉だった。

 ヴィーはドレスの胸元から一本の首飾りを取り出して見せてくれた。同じ大きさの紫色の石と金色の石が並んでいる。

「わたくしとブルドゥスの第一王女アルヴァラは、唯一無二の親友なのです」

 ちょっといたずらっ子みたいな顔で笑ったヴィーに驚いた。

「王子様方々は、大層犬猿の仲でした」

「あら、わたくし達は殿方のような意地の張り合いは致しません。まあ……その、色々と、ありますけれど」

 ちょっと気まずそうにヴィーの顔が逸れる。

「色々」

「…………その、まあ、色々、かなり」

「かなり」

「…………主に、騎士ルーナのことで」

 予想だにしない名前が飛び出してきて、思わず吹き出してしまった。そういえば、今尚ルーナを想っていると聞かされていたはずだ。なのにすっかり忘れていた。

 ヴィーは、ちょっともじもじしながら視線を逸らし続ける。その耳が赤い。

「だ、だって、素敵なのですもの! あの、物語の挿絵から飛び出してきたかのような立ち姿! 誰と交わしても決して膝をつくことのない剣の優美さに、それを驕らない清廉な心!」

「セイレン!」

 って、何!

「驕らず、貶さず、我欲に走らず、常に騎士の鑑として燦然と輝き続ける若き騎士が、目も眩むような美貌なのですよ!? 慕わない女がどこにいます!」

「サンゼン!」

 って、何!?

 いま質問できる雰囲気ではないので質問を飲み込む。後でアリスちゃんに聞こう。覚えていれば。

 セイレン、サンゼン……セイレン、サンゼン……センゼン、サンザン……センセイ、サンザン……先生、散々!

 原型どこ行った?

 早速忘れて必死に思い出していると、ヴィーは口端を吊り上げて皮肉気に笑った。

「しかも、貴女一筋です。…………最高でしょう?」

 思わず咽こむ。

「ヴィーは……ルーナが」

「好きです。ずっと、あの方をお慕いしております」

 十年で、少女は美女になった。けれど、その瞳は変わらない。大きく綺麗な紫色の瞳がちょっと熱で潤んで、幸せそうに綻ぶ。その先には、いつだってルーナがいた。

 どうしよう。いや、こればっかりはどうしようもないけれど。

 多分、私は見るからに挙動不審になっているだろう。おたおたと両手を上げ下ろし、きょたきょたと視線を彷徨わせる。きょろきょろさせるほど範囲は広くない。ヴィーを見たり、ヴィーを見たり、逸らして見たり。

 そんな私の様子に、ヴィーは楽しそうにころころと声を上げて笑う。

「あら、焦っているの? どうしましょう、わたくしこんなにも魅力溢れる女になってしまいましたし、焦るのは致し方ありませんね。そんなに悩んで……どうしましょう?」

これは女の決闘とかやるシーンだろうか。手袋投げつけて決闘だろうか。どうしよう、手袋持ってない!

「て」

「て?」

「手袋取得してくるじょ!」

「せめてわたくしに関係ある事柄で悩みなさいよ!」

 青筋の嵐!

 関係はあるんだけど、それをうまく説明できないでわたわたしている私に、ヴィーは呆れた目を向けた。

 どうしよう。どうしようもないけど、どうしよう。

 それに、ルーナは。

 ぎゅっと拳を握ると、それに気づいたヴィーが私の手を取った。細くて、綺麗な指だ。

「……大丈夫よ。騎士ルーナは生きています」

 驚いて顔を上げると、ヴィーは真剣な瞳で私を見つめていた。

「だって、そうでないとおかしいもの」

「え?」

「わたくしは、ずっとあの方を見てきました。ずっと、お慕いしてきましたから。けれど、あの方の背中や横顔ばかりです。あの方の瞳はいつでも貴女を探していました。……わたくし、貴女が再び姿を現したと聞いて、嬉しくてならなかったのです」

 両手で私の手を握って、顔の前まで持ち上げたヴィーは、ちょっと泣きそうな顔をした。慌ててされるがままだった手を握り返す。泣きそうな人を見ると慌ててしまう。私が握り返したところで何ができる訳でもないのに、ヴィーは嬉しそうに笑ってくれた。

「これでやっと、あの方が笑ってくれるのだと思って、本当に嬉しかった。……大丈夫よ、黒曜。十年間、ずっと貴女を探し続けてきたあの方が、ようやく貴女と出会えたというこの時に死んだりするはずがありません。きっと生きています。そうでないと、このわたくしが許しません!」

「わ、わしも許さないじょり!」

「わし!?」

「噛んだじょり……」

 勢い込んだら老人みたいになった。

 言い方は残念になったけれど、私もヴィーと同じように信じている。絶対会える。絶対、ルーナは生きている。絶対だ。根拠はないけれど、そう、信じている。


 ぐっと両手を握り返したら、ヴィーはくすりと笑った。

「他の誰ともこのような話はできませんが、ヴァルとならお互いを律さず心のままに語り合えるのです。あの方は決してわたくし達を見てはくださいませんでしたが、わたくし達はそれでもよかったのです。少し言葉を交わせただけで、お互い自慢しますのよ。わたくしの方が多く見て頂けた、わたくしの方が多く言葉をかけて頂けた、と。まあ……その、それでよく、その……諍いも、しますけれど」

「バム」

「誰ですの、それ」

 いきなり真顔になるのは、ほんと勘弁してほしい。

 さっきまでの、顔をほんのり赤くさせてもじもじ身を捩っていた可愛い人はどこに行ったというのか。

「わたくしの親友の愛称を呼ぶ許しを差し上げたというのに!」

「ビャル」

「ですから、誰ですの、それ」

「バムゥ」

「黒曜」

 にこりと笑ったヴィーの額に縦横無尽に走り回る青筋。ゆったりと優雅に持ち上がってくる握り拳。

「誇っていいのよ……?」

 瞬時に私の額はテーブルにめり込んだ。

 土下座する時間も惜しかった。後ちょっとでも遅かったら、王女様の高貴な握りこぶしが私の頬にめり込んでいた気がする。これ、絶対脅しじゃない。本気だ。


 テーブルに額をめり込ませている上で、ふぅと上品なため息が聞こえてきた。

「黒曜、わたくし達はね?」

「はい」

「最早、あの方に選んで頂けるなどという幻想を抱いてはいないのです」

「…………はい」

 さあ、顔を上げてと優しい声と手に促されて身体を上げた私は、壮絶な笑顔を見つけて動きを止めた。背中を嫌な汗が流れていく。

「でもね?」

「は、はい」

「それもこれも、あの方が誰にも余所見をせず一途に貴女を想っていたからであって、別に貴女に負けただなんてこれっぽちも思ってはいません!」

「おっさる通りでござります!」

「誰が猿よ!」

「仰れるられる通りでございます!」

 暴れ回る青筋に三度土下座の用意に入った私の肩が、むんずと掴まれる。頭突きをくらいそうなくらい美女の青筋が近い。

「更に!」

「はい!」

「どこの馬の骨とも知れない女が黒曜を名乗って、世間的にあの方の隣に立つ理由を得たのが気にくわないなんて、これっぽっちも思っていませんわ――!」

「仰れるれるれうれうれうれる!」

 がくんがくん揺さぶられて目が回る。

 尋常じゃない声量に驚いたのか、廊下で待機していたらしいアリスちゃんと騎士三名が「失礼します!」と飛び込んできた。

 そんな彼らが見たのは、私の胸倉を掴んで馬乗りになったヴィーと、がんがん揺さぶられて上着が肌蹴た私である。


 沈黙が落ちた部屋の中で、ヴィーがぽつりと呟いた。

「…………わたくしの行き遅れ理由が、また一つ増えました」

「……災難ですにょ」

「他人事のように!」

「さ、災難ですにょ――!」

「言い方を変えればいいというものではありません! もう、もうっ……! 貴女と再会した際には、もう昔のわたくしとは違うのだと言えるように努力してきましたのに! 貴女、もう、どうしてそう珍妙なのよ! もうっ、馬鹿――!」

 結局ヴィーにも頬っぺた引っ張られた。

 両手でみょんみょんされながら、私、一生化粧しないほうがいいんじゃないかなと全然関係ないことを思った。



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