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第4章 謎

今日は金曜日、今の時間は自習だ、

『やっと休みだー』や『明日□△のゲーセンいこーぜー』だのクラスメイトの会話がちらほらと耳に入ってくる。

 いつもと変わらない平和な日常、

 神になってから1週間が経とうとしている。

 あれから特に変わった変化は何も起きていない。

 

 あの男はなんだったのか、眩い光のあと、忽然と姿を見せていない。

 

 男はどうなったのだろうか?

 

 考えた所で安否がわかるはずもない。


「神になったのはいいけど、これ、あの黒い化け物倒しただけで、はいじゃあ役目終わりー!なんてことねぇだろうな…?」


 力を貰ったときは、自分が神と自覚ができた

 

 だがしかし、今はどうだろう?

 

 なんでもできるんじゃないかという力は何一つ足りとも残っていない。 


「なにか再び『神』となるための条件とかがあるのか?」


 それとも、力を使うとしばらくは反動で使えないのか?くそ、そういえば俺あの男から神の物語聞いただけで、力の使い方を何も聞いてなかったな…また化け物がでてきたらどう対処すればいいんだ、情報が足りなさ過ぎる…っ!


「参ったな…」  


 あの男は、多分力の謎についても多少のことは知っていただろう、あのときに、本当なら力についても詳しい説明したんじゃないか。


 ここんところ、ため息ばかりついてる気がする。

特に今日は神の力のことばかりを考えては憂鬱になるの繰り返しをしていた。

 なぜなら今日はとても暇なのだ。

 いつも隣の席にいるはずの涼宮は欠席だった。


「あいつが休むなんて、いつぶりだよ…」


「今日は寂しそうだなー?いつもはうっとうしがったり嫌がったりしてるやつに限って、いなくなると『僕、寂しい!』とかいいだすっていうあれか?」 


 クラスメイトの木崎天満が話しかけてきた。


「そんなんじゃねえよ、ただなんとなく、珍しいと思ってな」


「…まあな、あいつが休むなんて、稀中の稀だしな」


 あいつはちょっとやそっとじゃ休まないような奴なのだ。

 木崎も中学から同じクラスと一緒で、涼宮のことをよく知っているからこそ、俺の意見に同意できるのだ。

 涼宮は、中学2年のとき、40度の高熱を出しても平気な顔で学校に来て突然ぶっ倒れた

 車に引かれて全身打撲の重症を負っていても学校にくるという、馬鹿レベルの超人なのだ。 


「っとなると…」


 複雑な家庭の事情かなにかか…。

 

 「ねえねえ~」

 

 …突然に有紀から声を掛けられた。

 いつも元気爆発で、見ればこっちまで元気になるような笑顔に、今は少し疑念の色が混じっている。


「なんだよ?」


「そういえばかみっち、あえて聞いてなかったんだけど、先週の土日、全身が筋肉痛だったんだよね?」 


「ああ、そうだな。」


 先週の日曜日に有紀から『かみっち、今日暇?暇だよね、私が暇ってことは、かみっちも暇ってことだよね、っていうことは、モチロンおkってことだよね?というわけだから、明日の9時に○×駅前で待っててね。』というメールが届いた。

 なにがというわけでなのだろう、

 こいつは俺のことを何だと思っているのか、

 言いたいことは山々だったが、とりあえず『悪い、くっそ忙しい、まじで、昨日から全身が筋肉痛っぽくて非常に痛いのであります。』と返事を返しといたのだ。


「いやね?いまさらだけど、たかが筋肉痛くらいで私と涼宮の約束を断るなんて、おかしいなと思ったから。」


「俺が約束したのは涼宮だけで、お前とは約束した覚えはねえ」


「私の買い物の誘いを断るんだもん、何かとても重大なレベルで痛かったんでしょ?」


「なに、お前有紀さんの約束サボって家に引きこもってたのか?」


「今のどこをどう聞けば有紀と買い物の約束を破る話になるんだよお前は!」 


「ねえ、全身の筋肉が痛くなったのって、何が原因なの?」


「え?あ、えっと、それは…」


 どう説明すればいいかわからない、

 もし神だからうんぬんかんぬん、化け物とうんぬんかんぬん言うものならば、『真面目に答えなさい!』と怒りだしてしまうかもしれない。

 適当に誤魔化すしかないよな…

 元々、そんな話をするつもりはさらさらない、神だと真実をいったときは、面白い冗談と認識されたが、あのときは今思えば失言中の失言だと思う。

 本当になんであんな恥晒しな真似したんだろうか、お陰で怒られもしたし。


「先週の金曜日、川沿いの草むらで、遅くまで横たわって寝てたんだけど、そのこと涼宮からは聞いてるんだろ?」


「なにそれ?初耳なんだけど」 


「何だって?」


「いやいや、何だって?じゃなくて、そんなん初耳中の初耳だよ?」


 初耳中の初耳ってなんだよ

 頭の中で突っ込みながら、考える

 有紀は嘘を言っているようなには見えない。


「…忘れただけじゃなくて、本当に聞いてない?」


「本当に聞いてないって、

 大体一週間たたないのに、この私が忘れるわけないでしょ?」


 有紀の記憶力には本当に凄まじく、忘れることがないんじゃないかと思うほどに記憶力が高いのは知っている。

 とすると…どうゆう風の吹き回しだろうか?

 あいつがいかにもネタの話に使いそうなのに、有紀に話してなかったのか、てっきりもう話ていたのかと…。

 いや…あいつなりの配慮だろうか、以外な一面だな。


「私が知ってるのは、夜中に『神だ~』って叫んでたのだけだよ?

 もしかして、あの時から好からぬことを考えてて、それが筋肉痛に繋がったとか?」


「なるほど、中神のことだ、『俺は神だぜぇーうえっへっへ』といって、人通りの少ない夜道、一人帰る途中の女性を襲って、警察に通報される派目になって逃げ回ったから筋肉痛とか?」 


 木崎が唐突にログでもないことをいってくる。


 よくもそう根も葉もない嘘をいえるな…。


「おい、俺のことを何だと思ってやがる」


 だが木崎は俺の発言を無視、

 そのまま構わず続ける。


「そして、調子に乗って不良に喧嘩を売って、ぼこられて、逃げ惑う派目になるとか?」


 何故だろう…

 俺は一言も会話に交じって支障も変更させるような発言は一切していないはず、そもそも俺はさっきから否定の意を示しているはずだ。

 なぜだ、なぜこうも俺の敬意を跳ね除けた上で、侮辱にも似たストーリを作り上げられるのだ!


「ええ~!かみっちだっさーい!」


『老若男女』『男女平等』の言葉が頭に過ぎる、

 落ち着け、平静を保つんだ、このくらいで怒ってては、中神正野という名が廃る!

 

 もう学校で『神』だ!と叫んだ時点で、中神正野という存在は廃っていただろうに、それに気づかず自分に言いつける。


「挙句の果てには巧みな会話術を使って、女性を騙してホテルに連れ込む!!」


 自分に言いつけている最中にも、木崎の妄想はヒートアップしていた。

 いくら有紀でも、こんなふざけた冗談を相手にはしないだろう・・・。


「ええ?!そ、そんな!かみっち見損なったよ!変態!スケベ!色情狂!淫乱!破廉恥!歩く猥褻物!」


 なぜ俺は根もはもない嘘で精神に傷を負わなくてはならないのだろう。

 

 俺なにもしてないよね、なんでこんなに心を抉られなきゃいけないんだ?


「そして、ホテルであんなことやそんなことやこんなことやどんなことまで・・・!!なにやってんだ!!!」


「しらねえよ!」


 全力で身に覚えのないウソ話を否定する。

 これは誰がどうみてもくだらない話にすぎないはずだ。

 なのにどうしてだろう、

 有紀が本気で軽蔑したような目で睨んできている。


「悪かった、よくわからないけど俺が悪かったから!

 そんな変質者を見て失望したような目で見ないでくれ!」


 さすがに精神攻撃の嵐に耐えられずに中神は叫ぶ、

 だがここまで言われてもまだ怒らないでいるのは、廃る以前に男としてどうなのだろうか…

 いやいや、落ち着け!大きい器の持ち主じゃないか俺!


「有紀も本気にしてんじゃねえよ! 

 せめて冗談でしたと笑い飛ばしてくれ!

 そんな目で見られるようなことはしてねえし、やりもしねえよ!」


「有紀さん、騙されちゃだめだ、そういって有紀さんまで騙して狙っているんだこいつは」


「かみっちならありえそうだね!」


 もうやだ…

 本当にこいつは俺のことを何だと思ってるんだ?

 純粋な女子に言われれば誰だって傷つく

 友達でもあり幼馴染でもある有紀を狙うわけないだろうに!

 全くこいつらは何いってるんだか…。


「かみっちが…私を狙ったりなんかしたら…」


「狙わねえよ!」


「か、かかかか」


 …あれ?


 有紀の様子がおかしい、

 それどころか有紀は顔を赤らめている。

 その姿はちょっと可愛らしい、いつもの陽気な笑顔とは違った愛らしい顔だ。だが同時に、なんで顔を赤らめるかがわからない疑問が生じる。

 いきなり顔を赤らめる不意打ちに「え?」と口から漏れてしまった。

 なんで?どうしてだ?ひょっとしてマズイ状況?有紀が俺に対してそんな顔するなんて、案外可愛らしい


「か、体中…ピアスが付けられるように抉って穴だらけにしてやるんだからね!」


 ---そういって、愛らしい笑顔とともに、可愛らしいバッグにはそぐわない、細い護身用ナイフだろうか、柄を取って中にあるギラギラした物を見せてくる。 

 

 ---前言撤回。

 

 こいつはいつもこんなものを持ち歩いてるのだろうか?

 いくら護身用のナイフでも、明らかに研ぎ澄まされたナイフは一般のナイフよりも十分凶器になるだろう。

 薄桃色の髪に鮮やかな色をしたピンクの瞳、

 それに桜のような赤らめたその顔はとても可愛いと思えた、

 その赤らめながらも笑顔でいい放ち、ゆっくりと右手に持ってる凶器をこちらに向けてこなければだの話だが。


「ままままてまてまてえええ!ちょっとなにしようとしてるの?!俺は何もしていないぞ!」


「ガイチュウハクジョスルベキダトワタシハハンダンシタダケダヨ」


「まって!冗談抜きで目が!目が本気ですこの子!誰か止めて下さい!」


 このままでは本気で殺られると思い助け舟をクラスのみんなに求める

 

「っく、中神め・・・有紀さんに気持ち悪がられるどころか赤らめられて恥ずかしさからちょっかい出すなんて・・・」


「くそ、羨ましい・・・」


「幼馴染だからって調子乗りやがって!」


「俺もあんなこといわれてみたい!」


「ゆ、有紀さん・・・そんな・・・本気だったのに・・・ガクッ」


「お、おい!誰か!ショックのあまりに倒れた奴いるぞ!」


 しかし助け舟は来なかった、

 それどころかちらほらと周りから妬みや嫉妬、嫌悪や殺意の言葉が聞こえる。


「お前ら頭おかしいんじゃねえの?!ナイフで抉られそうな俺がなんで理不尽な目で見られる!?明らかに俺が被害者だろ!」


「余裕あるやつに限ってそういうこというんだよ」


「そうそう、今日は涼宮がいないのをいいことにイチャイチャしやがって」


「ないないない!余裕ないわ!ナイフ突きつけられる男とナイフ持って脅してる女のどこにイチャツク要素があんだよてめえら?!」


「フフ、大丈夫だって!かみっちがそんな事しない人だって信じてるもん!」


「信じてるならナイフを俺に向けるな!」


 さっきのは冗談とでもいいそうな顔で言ってるが、明らかにさっきのナイフを持ってこちらを睨みつける目は本気だった。

 彼女にして、浮気なんぞしたら殺されるだろうな。

 中神は彼女にしたくないランキングナンバーワンを有紀と認定させた。


「はぁ、お前いつもそんな凶器をバッグに忍ばせてるのか?」 


 中神は心底疲れたため息をしながら言う。


「護身用ナイフといってよ~」


 キラリとよく研ぎ澄まされた先端が鈍い光を放つ。

 もはや鋭利な刃物だ。

 

「どこの世界に身を守る護身用ナイフから相手を殺す『凶器』に変える奴がいんだよ!」


「失敬ね!私は逃げるのは性に合わないの!立ち向かって、逆に追いかけてやるんだから!」


「護身用ナイフは身を守るためであって、相手を沈める道具じゃねえ!」


「逃げるだなんて悔しいじゃない」


「襲ってきた奴を追いかけてどうすんだよ!」


「…二度と襲わないように懲らしめてから、警察に突き出してやるのよ」


 コイツはなんて恐ろしいことをいうんだろうか、

 例え何があろうともこいつを襲うことはないだろう…

 死よりも恐ろしいことが待っているのだから。


「追いかけるだけでも脅威なのに、そんなナイフで追いかけ回って切りつけてから突き出したら、過剰防衛でお前が捕まるわ!」


「そんなん間違ってる!」


「お前の思考そのものが最初っから間違ってんだよ!」


 いつの間にか、口論が始まっていた

 

「…涼宮いなくても十分騒がしいな」


「…そうだね、しかも途中から話が変わってるし」


「仲がいいんだか、悪いんだか…」


---10分くらいの口論、

 

 疲れて中神と有紀は息を切らし、終わりがないと悟ったのか話を戻す方向にした。


「ぜぇ、ぜぇ…と、取りあえず話を戻すとだな」


「はぁ、はぁ…う、うん」


「ど、どうして筋肉痛、だったかまでだったな」


「せ、正確には草むらで寝てたのがなんでかってとこだったよね」


 有紀は的確に最初の話に付け加えた。

 よく覚えてるな、本当に記憶力がいい奴…


「そうだったっけか、そうそう、思い出した、そうだった。」


 ぼんやりだが、どこまで話したか思い出してきた。

 同時に先週の土日の出来事も鮮明に思い出してくる。

 そう、俺が土日に過ごした時間は、燃えるのような痛みと、不毛なメールのやり取りだった。

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