第2章 開放された力
中神は巡る知識の一つを語る
それは神の記憶
歌うように発せられる言葉に力が宿る。
つぶやくように、
だがそれは力が循環していく。
その力は言霊である。
手からおぼれ落ちた『神』の力は円を描き、別世界にいる『神』の片割れの力を与えられた伝説を『召還』させる。
それは数ある中の3対の神獣。
エスタロスは雷の槍ですべてを打ち抜き。
ヒュドラは周囲を凍らせ動きを固め。
グレイブは黒い炎を獲物描けてはなつ。
グレイブの炎は化け物に当たる瞬間、とっさにその炎を避けた。
はずだった、
その黒い炎は避けたはずの化け物のを一瞬にして燃え消した。
少し前まで死を感じさせる脅威だった化け物は、力が宿った中神には手も足も出ずカタがついた。
これが…神の力…
すげぇ…
ただただ、自分が呼び出した神獣の強さに関心する。
でも、だったらなんで死んだんだ?
こんな力があったんだったら、なんであの男は死んだ?
これほどの力があったなら、最初から化け物を片付けられただろうに…
何か使えなかった理由があったのか?
「なんにせよ…危機は去ったっていうことか…?」
視線を感じる、
振り向くとグレイブが顔を険しくして睨んできている、
その目には殺意がある。
…ほほぅ、今の俺にそんな目を向けるとは面白い
少し俺の力を見せようじゃないか!
あまりの凄さにビビってしょんべんちびるなよ~?
石を拾って上に投げる
「ってぃ!」
石が手から離れた瞬間、超人的な力によって投げられた石は一瞬で塵となる
…はずだったが、最初に投げたときのように灰にならず、ヒューっという音とともに、コンッと頭に墜落した。
………あれ?
石が悪かったのかと思い、違う石を拾って握る
握り潰す気で力を入れても、石は砕けず
手に火を点そうと呪文を唱えるが、何も起こらず
いくら知恵を絞っても、もやししか想像できなかった。
「なんで!?」
カッコつけるどころかカッコ悪い場面を見せる羽目になってしまった。
グレイブといえば、哀れみの目を向けてきている。
く…そんな目で見るな!
さっきまではもの凄い強かったんだ!本当だぞ!
「ま、まあ…とにかくは、呼んだこの獣を帰させて…あれ?」
…どうやって戻すんだこいつら?
力がなくなっちゃってるんだよな…
じゃあどうやってこの獣を戻すんだ!?
化け物のあとは、神獣等をどうすればいいのかという問題が残った。
と、とにかく、考えてもどうにもならない
自力で戻れるのかわからんが、聞いてみるか…
「…あっ…っと…ありがとう…もう用事は済んだから、元の所に戻っていいよ?」
どうせ通じないだろうと思っていたが、言葉が通じたのか頷いたあと虚空に消えていった。
「おぉ…」
なんの支障もなく、素直に従ってくれたことに感動した
のだが、
何かが後ろにいる気配がしたと同時に、大きな影が差した。
おかしいな、なにやらデカイ影が・・・。
まさかそんなわけないよなー。
そう思いながらも、恐る恐ると後ろを振り返る。
『グルラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
「なんでえええええええええええええええ?!」
グレイブは睨んできていた
その口には、ギラギラと光り輝く牙が、向けられている、
どう考えても殺す気だ。
はっきりいって今の俺は力を使い切っているということ、
果たして俺はこんな奴に勝てるだろうか?
さてさて、ではどんくらいの差があるだろうか、見比べてみようか。
…グレイブはとても分厚い鱗を持ち、殴ればこっちのこぶしが砕けてしまいそうだね
それに加えてあのアギト、とっても鋭い、爪も鋭くて、掠るだけでも大怪我ものだ。
では俺はどうだろうか。
体の大きさ的に、踏み潰されて終わりそうだ、武器もない。
………うん!無理だ!勝てる気しねえ!。
力が無い今、機嫌を損ねないように下手にでて大人しく帰ってもらうしかない…
「…えっと、その、悪かったな。まだよくわからなくてさ…そのー、あの、大人しく元いたところに戻ってくれないかな」
グルギルグルという唸りを上げた、
承諾してくれたのかと思ったが、口を大きく開け噛み殺そうとしてくる。
「っひ!」
思わす手を前にかざし、目を強く瞑った。
だがいつまで立っても一向に死は訪れず、堪えきれずに目を開いてみると、グレイブは寸のところで動きを止めていた。
あと少しで粉々に噛み砕かれてしまったであろうというところで止まっている。
ボタボタと何か落ちる音し、何の音かと思えばグレイブは脂汗をドッと流している。
グレイブの見つめるその目はとても怯えて見えた、
だが、それは俺じゃない、
その目線の先は、後ろ…!
咄嗟に後ろを振り向くが誰もいない
「っ?」
…感…違いだったのか?
ゆっくりと前を振り向きなおす。
そこには何もなく、グレイブの姿は虚空に消え去っていた。
…・…・…
危機は去った
たしかに危機はさったんだども…
いつになったらこの結界とけるんじゃましょ!
最初はすぐに解けるかと思い5分くらい経過しても消えそうにないからしょうがなく穴が開いてないか探し、
見つからないから強引に壊して抜け出そうと思って殴ったり蹴ったり石を投げつけたりしたけどビクともしねえし、どうしたもんか…
「あの時みたいに力がぶわって溢れ…そういえばどうやって力を手に入れたんだっけか」
…たしか真っ白な場所があって、それで…
「ッ?!」
思い出そうとした瞬間、激痛が起こる。
考えようとするとこめかみに激痛が走りそれ以上追跡が出来なくなるように痛みが阻害してくる、
それでも痛みを我慢すると、頭の中で何かを喋りかけてきた。
「だめだ、どうしても顔がわからねえ」
いくら思い出そうにも、顔が思い出せず、思考を断念するが、考えることを止めて尚も勝手に喋りかけてくる、
つまりはそういうことなのだろう
こちらに喋りかけてくる人物の話に意識を集中させる。
『…・---…-・---…---・---…-・--…・----…・…-----』
全ての言葉を聴き終えた瞬間、突如意識を保てなくなりその場に倒れこんだ。
・…・…・…・…・
「おい!起きろ!風邪引くぞバカ!」
罵声とともに頭上でゴンッと、鈍い音がした。
目にお星様がキラキラと降りてくる、正確には思いっきり頭を殴られたようだ。
「ぎゃあああああああああああああああああああ、いってえなぼけえええええええええ!」
鈍くなっていた意識は衝撃のあとぁら遅れてきた激痛によって一瞬で我に帰った。
「っぉ、やっと目覚めたか」
「誰でも目が覚めるわ!!!なんでいきなり頭殴られなきゃいけえんだよ!」
「なにってお前、こんな真夜中にこんな場所で寝てるやつが悪い、たまたま買い物の帰りに気づいて、最初はびっくりしたぞ?だが、俺はあえてなにもいうまい、俺は優しいからな、親切に風邪引かないように起こしたんじゃないか!」
もうちょっとマシな起こし方を知らんのかこいつは…
「…まぁ、ともかくサンキュ、ってうわぉ!まじで真っ暗だなおぃ!今何時だ?」
「今?もう11時だぞ、いくら疲れて寝たんだか知らんが、親とか心配してんじゃねえのか?たまに俺と夜までつるんで遅くまで帰らないときもあるだろうが、メールくらいしてあんのか?」
「っげ…やっべぇ、してないかも…」
「やっちまったなぉい、岡本に怒られた日に親に怒られるなんてお前、ついてないランキング1位の日だけのことはあるな!クククッ」
「うるせー…
しっかしよくこんな真っ暗の中俺がわかったな?道の真ん中で寝てたならともかく、俺下の茂みで寝てたんだろ?」
「…あぁ、なんか下見たら暗闇にでっけぇ粗大ゴミがあったからよ」
「おいこら粗大ゴミって俺のことか?
…って待て待て、
そういえばなんで涼宮、お前…なんで俺の運勢のこと知ってるんだ?俺お前に今日の運勢いった覚えねえぞ?」
俺は涼宮にいった覚えなんてないはずだった、
誰かに喋った覚えもない、からかわれるだけだと思って言わなかった、言ったとしたらそれはあの場所にいたものだけ…
「…」
「涼宮?」
「アハハハハ、お前を起こそうとしたとき、寝言で『ちくしょー!不幸日ランキング1位じゃねえか!』とかなんとかいってたぜ?」
「…そ、そうなんか?!」
いつもと変わらない涼宮だ…
そうだよな、涼宮があんなふざけた場所にかかわってるはずねえよな。
「ま、まじかよ、涼宮お前言うなよ!?皆や特に有紀には!ってなんだそのにやけ顔!その手があったか的な顔してんじゃねえ!」
「クククッ、どうだろうなぁ~?いやぁ!来週が楽しみだね!中神君!君が親友で心底よかったと思うよ!うん!さて、もう時間だ!遅いし俺は帰るな!じゃぁな!」
そういうと涼宮は颯爽と駆け出し暗闇の中に紛れ消えていった。
よく考えれば普通のことだ、
そういえば涼宮はしょっちゅう夜中にここを通っていると言っていた。
だが、買い物にいっていたといっていたが、手に何も持っていなかったような…
…気のせいだろう
今の時間は暗いし、何か持っていたとしてもよく見えない。
「こんなに疑心暗鬼になってるなんて…疲れているんだなきっと…」
しかし、あれは夢だったのか?
試しに石を拾って投げてみる、
何も起こらないで地面に落ちた。
まあ、そうだよな、あんなのが現実に起こってるわけないよな…
「っ痛つ…」
突然頭の奥に痛みが走った
それだけじゃない、次第に痛みが強くなっていく
「あ、ぐ…あ、頭が…割れそうだ!」
痛みが強くなっていくごとに、目の前が真っ白になっていく、
だが、意識がハッキリとしている
何も見えなくなるほどに目の前が真っ白になると、突然声が聞こえた。
『君に力を与えよう、
君に誰か大切だと思える者達を守れる力を授けよう、
だか君はまだこの力を知らない、
君はまだこの力を使いこなすことができない、
だけど君はこの力の正体を知るだろう、
いつか君はこの力のすべてを使いこなす日が来るだろう、
それは何ヶ月、何年、はたまた何十年と掛かるかもしれない、
でも焦る必要はない、
真実は逃げることがないのだから』
「これは…」
夢と同じ声
それだけじゃない
それは夢が終わる直前に言われた言葉だ
「夢…じゃない?」
本当に…本当に僕は神になったのか?
もう痛みは治まり、視界も直っていて声も聞こえない。
…いや、これは重症だな…涼宮に頭を殴られたせいで可笑しくなったんだ
石を拾い、もう一度力を入れる
ぐっと力を入れてみるが、石はびくともしない
…ほれ見ろ、神っていわれたって、夢の時みたいに力なんてないじゃ…
頭にまた痛みが走る
すると、手元でバキリという音がした
見れば手には割れた石が納まっている。
それどころか、手には強く握ったときにできる跡が全くない。
人間の力で、それも無意識で、手になんの跡を残さず割るなんて可能だろうか?
…。
夢…じゃ…ない……?…。
「………は、あははははははははははは!!!」
いいだろう!
やってやるよ!
なぜなら…僕は…いや
「俺は神だ!!!」