序説
「俺は…実は神だったんだ…」
「はぁ…?バカじゃねえの?」
俺の名は中神正野、特に頭がいいわけでも、運動が優れてるわけでもない普通の高校に通う一般市民だ。少し前までは。
そして俺が真剣に事実をいってやったのにバカよばわりしたクソ野郎は親友の涼宮天満。
涼宮は古い付き合いで、小さい頃からよく遊んでいる、
とても無邪気で、そのくせ性格が悪い、
容姿は、性格がそのまま描かれているような顔立ちだ。
スタイルはいつも不良っぽくきめて、喧嘩腰である。俺には合わないタイプなはずなのだが、なぜか馬が合う。
でもこいつはたまに奇妙になる、
常に先が読めないのだ、
本当の性格さえも長い付き合いだというのにわからなくなる、こいつは昔から、一人で行動してるところを見たことがない、謎が多いやつだ。
「ぇ…頭でも打ったの?」
そしてこっちの幼馴染の有紀春香。
スタイル抜群、成績優秀、容姿端麗で、常に上位に君臨する女王。
有紀はピンクがかった桃色の髪の毛に、それに合った桃色の瞳の持ち主、魔除けだのの巫女らしきことをやっているらしいが、そんな姿を見たことなど一度もなく、実際にはなにしてるのか正確には知らなかった。
「うっせーな、俺だってバカみたいだとは思ってたんだけどいいたくなったんだよ」
「じゃあいいじゃん、はぃ、それでなんなん、アニメでも見すぎで頭おかしくなった?」
こいつは今日中にも交通事故で死ぬかもしれない。いやまて、生命保険に入れてからでも遅くはない。
「ごめん…いくらかみっちが馬鹿でもフォローしきれない」
もの凄く申し訳なさそうに謝っているが、声とは裏腹に顔はニヤけていて微塵も心がこもっていないのが丸分かりだ、見た目は可愛い女なのに!見た目だけは!
「ぜんっぜんフォローしてねえじゃん!けなしてるじゃねえか!なんとなくだよ!あれだよ寝ぼけてました!すいませんでした!」
「「寝てねえじゃん(ないじゃん)」」
有無を言わさず息ぴったりに突っ込んできた。
あまりに気持ちいいくらいの即答に青筋がビキリと走る。
「細かいことで愚痴口いってんじゃねえ!あれか!人のミスとかをネチネチと繰り返しいじってくる最低やろうかお前らは」
「自分で墓穴っといてんなこといわれてもな」
「まああれだね~、こんな神いたら世界もう終わってるよね」
「だな。」
精一杯の反論は一言で切り捨てられ、再びけなしモードに話が戻った。
諦めずあくまで平和的に話しを進めようと笑顔を作る。
平和的に平和的に…
「よしお前ら喧嘩うってるんだな?」
まずは暴力という名の平和案でこの話を終わらせよう。
「あっはっはっはっは、冗談だよ冗談、だからまずはその右手に力を入れるのを止めようか」
涼宮は俺の右手を見て慌てて訂正した、意思が通じたのだろうか、予定とは違うが平和的に話しを解決できそうだ。
「うん、半分冗談だよ~、」
涼宮同様話が分かってくれたらし…うん?半分?
「…まあいいけどね、一応親友とか友達関係な間柄だろ?口ではそんなこといっても、信じてくれてんだろ?」
「「……親友…友達…?」」
なんでこいつらは間を空けたあとに疑問系で聞いてきたのだろうか。
なんでこいつらは、こういうときだけ無駄に息が合うのか。
「中学んときから一緒だった仲だろ?」
「…っフン」
なるほどなるほど、さっすが俺の親友だ。予想道理に鼻で笑って答えてきやがったよ。
「っしゃあああ!!!表でろやこならあああああ!ぶっころしてやらあ!!!」
「ンだコラ!上等だ!!てめーが変なこといったあとに親友だの友達だの言われて認めたら俺まで変な目で見られンだよボケェ!!!」
コイツには友情というものが無いらしい、話で解決しないならばどっちが上か今日こそ決着をつけてやる!
ゴングは両者の放ったパンチから始まった。
「いつもいつも飽きないね二人とも…」
「なに?またあの二人は喧嘩やってるの~?」
中神の黄金の右手が涼宮にクリティカルヒットし、涼宮の右手が中神の頬を貫いた。
野郎、いいパンチを食らわしてくるじゃねえか、少し足に来やがる…
だが、若干俺の方が有利なところか、俺より足がガクついてる。
「ぁ、さくちゃん、うん、なんかね。さくちゃんには聞こえなかった?」
「え?なになに?」
有紀と桜がなんか話しているようだけど、微塵も気にならない。
それほどに俺の意識は目の前の男に集中している!
「フフ、それがね、かみっちたらいきなり{俺…神だったんだ…}とかいったんだよ~?おっかしくない?」
ん?
「あははは、まじで?やっばシャメ撮ってツイッターにでも乗せようかな、「世界最強のバカここに舞い降りる」ってね!」
「っちょ!おまっ!なにいってんだよ!!!うそです!うそだからこっそり携帯のカメラこっちに向けてんじゃねえ!まじで乗せるつもりだったのか!?」
いくら集中していても、人生が危ぶまれる危機が訪れたら誰だって集中なんぞ切れる!
「ッチ」
「舌打ち!?今舌打ちした!?」
ゴガシャン!!!!
っと、唐突に大きな音がした
音のした方を見れば、教卓がひっくり返っている
チョークを握力で粉砕したのか粉があちこちに飛び散っていて
その先には青筋をいくつも浮かべた岡本が立っていた。
「コラァアアアア!そこさっきからうるせーんだよ!静かにしろやああ!」
担任の岡本先生は体育系で威厳がある顔つきだ、
体型もでかく、がっちりしている、
普段温厚でも授業中に大声出してたら誰だって怒るだろう。
「うるせー!!!こっちは今大事な話してんだ!!邪魔すんじゃねえ!」
「こっちは今忙しいんだ、もう少しまてや!!!」
「ほぉ…俺の授業より大事なことか、なるほどね?」
岡本の顔の額にはどでかい青筋がピクピクと浮かんでいる
普段あまり怒らない人が怒ると人一倍怖いというのを聞いたことがあるが、本当のようだ。
やばい怖い。
「そ、そうだよ!!…だから少し待っててもらえませんでしょうか?」
「お、おう、もう少しで終わるからもうちょっとだけ待っていてはもらえないでしょうか?」
「威勢があるのか無いのかよくわからないねそれ」
「じゃあその大事な話とやらを先生に教えてくれると先生うれしいなあ」
顔は笑ってるけど目は笑ってない…
半端のない威圧に抵抗できず、口が動いてしまう。
「え、えっとですね、じ、実は俺は…かっ」
「か?」
えぇい!なんでもいい!いうしかないッ!
「神だったんですヨ…」
一瞬の静寂、それから教室がざわめき始めた
みんな俺に注目している
そしてその目線には哀れみの感情が手に取るようにわかってしまう
正直後悔っていうレベル通り越して泣きたくなってきた。
「…ッなるほど、お前の言いたいことはよくわかった」
エ?!通じた?!やった!
人間やっぱり追い込まれたときに正直に言うと通じるものなんだ!突き刺さる目線を鞭と例え、岡本の発言が救いならば、
これぞ『アメと鞭!』神様ありが
「お前は授業よりも神だという妄想に浸るほうが大事だと…っ」
ちがう!!!!!!
鞭と鞭だった。
「ほ、本当ですよ先生、信じてください!!!」
「そのへんにしとかないとまじで『俺は神だ!』っていってるのと同じだぞ?俺いい精神科しってるんだ、お前、一度見てもらうか、ぁあダメだ、精神がよくなったところでバカなところまでは直せねえよな、バカは一度死なないと直らないっていうしな…
そういえば、なんかいつもと口調ちがくねえか?イメチェン?モテナイからってカッコつけても気持ち悪がられるか、からかわられて余計にモテナクなるだけだぞ?」
「お前は俺の心配してるのかけなしてるのかどっちかにしろや!」
疑問も投げかけながら親友もといクソ野郎が少し心配になった目で俺に聞いてきた
心配してるってよりはこれとぞばかりにけなしてだけのようにも
思えるが。
「中神、喜べ、お前はスペシャル授業を受けさせるに値する」
スペシャル授業はまさにスペシャルで、生徒の態度次第で地獄でも大地獄にでもなる授業だ、付きっ切りで教師に説教や反省文をひたすら書かされ時には荷物や倉庫整理の肉体労働が待っている。
「そ、そんな…」
「あっはっはっは、残念だったな中神ぃ~、こんだけ授業態度悪かったんだ、相当きついのが待ってるぜー?」
「そうだな涼宮、お前もスペシャル授業決定だ」
ハハハと笑っていた涼宮は、急にピタリと笑いを止め、笑った顔の状態で涼宮は固まった、笑顔から一転、絶望に染まった顔になる。
涼宮も同罪なら仕方がないがない、甘んじて受けよう、俺と一緒に地獄へ道連れだざまーみろ!
「そそそんな俺は悪くないですよ!中神君がいきなり話かけてきて、そんなふざけた話をしてきたんですよ!」
信じられないという顔で岡本を見て、俺を見てまた岡本を見た後、聞き取れるか聞き取れないかという境目くらいの早口で言い訳を言い出した。
この野郎、俺を売って自分だけは助かろうってか!
「ちがいます先生!涼宮君がそういえって脅したんですよ!」
「んだコラ!お前友達売って自分だけ助かろうってどういう脳みそしてんだ!てめーには心ってもんがねえのか!!!」
最初に親友を売ろうとしてたやつに講義された…フッ
「お前にだけはいわれたくねえ!」
「お前ら二人とも、あとで職員室に来なさい」
「「はぃ」」
放課後まで怒られ、夕日を浴びながらとぼとぼといつもの帰り道を歩く。
それは、いつもと変わらない日常。
そう、いつもと変わらない平凡な日々を今日も送るんだと思っていた。
「やあ」
その男に会うまでは