表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

プロローグ+

「きゃっ」


 市を行き交う人々で溢れたある日の昼下がり。

 葵色の服の少女はまたしても人混みから抜け出せずにいた。

 そしてお約束通り、今日も通行人の一人に体当たりをくらわせてしまった。


「ご、ごめんなさ……」


 慌てて謝ろうと顔を上げて、やっぱり少女は驚いた。


 少女の丸い瞳いっぱいに、黒い外套の女が映りこむ。

 その波打つ蜂蜜色の髪はまるで黄金、憂いを帯びた瞳は琥珀のように美しく、肌は陶磁器としか思えない程白く滑らかだった。


「あ、あの、ごめん、なさい……」


 少女は美しすぎる女を前に、大分しどろもどろになりながらそう言って……既視感にとらわれた。

 女神が慈愛に満ちた表情で微笑む。

 薄紅色の唇が開き、女は……

 

「怪我はないかい? マドマーゼル」


 おんなは、言った。

 

 少女の思考回路は久しぶりに活動を停止した。


 鈴を転がすような女の声から発せられたキザな単語のせいか、それとも馴れ馴れしく頬に触れられたせいか、それは定かではない。

 

「シア〜?」


 遠くの方から、聞き覚えのある男の声がした。


「まったく、無粋な男だ。 可愛いマドマーゼル、またどこかでお会いしましょう……アデュウ!」


 少女に投げキッスを残し、女は優雅な動きで人混みを去っていった。


 その後、この市で少女を見かけた者はいない。

 少女の家の前を通った男の話によると、「美形はみんなオカマ」「女神様はマドマーゼル」とか何とか聞こえたらしいが、一体何があったのか。

 街の人々に分かることと言えば、この世の者とは思えない程の美男美女が北に旅立った、ということだけであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ