本の紹介55『遊☆戯☆王』(文庫版全22巻)高橋和希/著
魂が抱える光と闇の相剋を描く少年漫画の傑作。
ゲームが好きな内気な少年「武藤遊戯」が、古代エジプトから伝わる不思議なアイテム「千年パズル」を組み上げたことでもう一つの人格をその身に宿し、仲間達と共にゲームを通じて成長を遂げていく物語です。
ここでいうゲームは多種多少で、特に初期の1話完結スタイルの頃はアナログゲームやテレビゲームから様々な遊びが登場し、読者を楽しませてくれます。
本作で登場したいくつかのゲームは現実に商品化されていますが、劇中で登場した「マジック&ウィザーズ」というカードゲームが「デュエルモンスターズ」という名称で世界的に有名になっており、今もなお根強い人気を誇っています。私も小学生の頃はデッキを組んで遊んでいました。
本作をカードゲーム漫画と認識している方も多いと思いますし、カードゲームを主軸に置いたストーリーが占める割合が大きいのは事実なのですが、一貫して描かれているのは、人間の魂が持つ光と闇の相剋、もっと単純に言えば、人間がいかに自分の弱さに打ち克ち、未来へ進んでいくのかということです。
初期の頃に描かれた、悪人とゲームで対決し罰ゲームで成敗するというダークヒーロー路線のストーリーにおいては罰ゲームによって魂の闇の部分、自分の弱さと向き合うような描写をされていたように思います。
罰ゲームを受けた相手がその後どうなったか描かれていないことが多く、表面的には悪人を成敗してスカッと終わるという描写のように見えますが、彼らのその後の姿にも想像の余地が残されているように感じます。
途中からカードゲームの販促漫画になってしまい、初期の頃の面白さがなくなったという意見を目にすることもあるのですが、個人的にはむしろカードゲームがメインになってからの方が、作品のテーマがより明確化したように思います。
遊戯とその仲間たちが対峙することになる相手はいずれも強大な力を有しながら、心の闇、傷や弱さを抱えているキャラクターとして描かれており、決闘を通じて、如何にそれらを克服していくかということが描かれているように感じました。
改めて読み返して衝撃を受けたのは最終章である「王の記憶編」で描かれる視点の変化ですね。連載当時はカードゲームの動向ばかりに目が向いており、最終章のストーリーをきちんと楽しむことが出来ていなかったのですが、途中で大きな仕掛けが明らかにされるシーンでは、思わず唸ってしまう上質なミステリー作品に触れた時のような感動を味わうことになりました。この仕掛けの凄さは週刊連載の速度感ではちょっと読者に届きづらかったかもしれません。一気に読むことのできる状況でこそ、その効果は絶大なものになると思うのです。
少年漫画というジャンルにおいて、かなり奥深いテーマを扱っており、読み返すほどに新たな発見のある芳醇な作品であるように思います。かつて途中で読むのを辞めてしまった人も、まだ読んだことがない人も、物語の背景にあるテーマに注目しながら読んでみることをオススメします。終わり




