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chapterⅠ † 触れることの出来ないもの

おとうさん、おかあさん。

どうしてボクらのところに帰ってこないの?


小さな少年の、小さな声。それは薄れた記憶の中にある、古びた時代。


ごめんね。

おかあさんと、おとうさんは―――――………













「サーラさん、サーラさん」

「鬱陶しいです。死んでください」


 昨日からここの屋敷にいる。ちなみに泊まりました。4階の窓ガラスが割れた部屋使わせてもらってます。

 湊曰く


「家に帰る? 事情聴取するからここに残ってろ」


 らしい。警官のような仕事だなって思った。

 だからその間はここに住まわせていただいています。食事のほうは食べてないけど。


「毎回思うけどよォ……あんな冷たくされてよくべたべた出来んな」

「ドMなの?」


 未来さんと歩夢さんがゲームをしながら言った。ちなみに歩夢さんは途中で落ちたらしい。


「いやもう逆に嫌そうな顔を見てるだけでなんか嬉しくなっちゃって、いじめたくなるんですよ」

「Sだね。それも質の悪いドS」


 笑顔で物事を言う未来さん。テレビゲームとやらをやっていたらしく、こちらを見ないで言った。


「美咲ぃーちょっと一緒に来てくれない?」

「えっ……外出は湊の許可取らないと……」


 湊の許可が無ければ恐らく外には出られないだろう。バリアを張った張本人が許可しない限り、外の空気すら満足に吸えない。

 でも、あの湊だ。どうせ「却下だ」とでも言うだろう。私は街に行きたくもないし、自然にも浸りたくない。それを分かった上で彼に聞きに行くのだ。


 最低な想いを載せて、彼女は足を運ぶ。













「いや~よかったね。許可下りて」

「永遠に下りなければ良かったのに……」


 人々が行き来する騒がしい街。多くの商品が立ち並ぶ店。彼の性格なら高い確率で許可はしてくれないと思ったのに、彼が言ったことは彼女が予想して居ないことだった。

――――――――――『街に叶恋と? ……東部だけならいい』


「次あの店ね」


 彼が許可してしまったせいで、私は数え切れないほどの店に入っている。自信があったから聞きに行ったのに……。

 仕方なく叶恋に付いて行こうとした私の目にあるものが映った。同じ服を着ている人の群れ。なにかの集団だろうか? それともただの揃いで買っただけなのか。彼女にとっては全く分からなかった。


「どうしたの?」


 立ち止まった私に近寄って来た。彼女に振り向くことはなく、訳の分からない集団を見ていた。


「なんですか…、あの集団。テロリストか何かですか?」

「なに言ってんの? 学生だよ! が・く・せ・い・!」


 聞きなれない言葉を必死に理解する。学生ってなんですか。テロ組織のグループ名ですか? それとも会社の名前?

 考えた末に私は素直に叶恋さんに聞いた。


「学生って、なんですか……?」


 しかし帰ってきたのはきょとんとした彼女の顔で、「学生は学生」と爆笑しながら言われただけだった。


「学生ってゆうのは、えっとねー。いろんなことを学んでいる人のこと。あたしも学生ね」


 学ぶのなら自分ひとりでやればいい。他人の手をわずらわせなくても、解るだろう。私には理解出来ない。


「それより早く! セール終わっちゃうじゃん!」


 叶恋はそれだけいい、彼女の手を引いた。















「この服、似合うんじゃない?」


 手渡されたのは、クリーム色に近い色をした長袖のネグリジェ。一体何故、それを彼女は選んでいるのだろうか。

 確かに私はまだ一睡もしていないし(倒れたときは除いて)、そんなものは必要がなかった。だが、服は今着ているだけで、それを着て寝ろと言われても困る。


「せめて半袖に近いものでいいですから、寝苦しく無いものでお願いします」


 長袖では暑い。それに次の季節が夏だ。長袖で夜を何とかしようとは到底無理な話である。それに私は暑いのが苦手で、長袖なんて滅多に着ない。だから今も肩が出ている服を着ている。


「じゃあこれでいいよね。ちなみに拒否権はないからね」


 お金はあたしが払うしね。独り言のように呟く。

 私もお金は持っているものの、今日は生憎部屋に忘れてしまった。屋敷に戻るのも面倒くさいと叶恋が言うので、彼女がお金を払っている。拒否権がないのは当たり前だろう。


「あと、必要なものはないか……。帰ろー」

「あっ…」


 父と母と手を繋いで楽しそうに微笑む子供と、それを見て幸せそうな父と母。その光景に目を奪われた。

 家族の暖かな愛情。それを見ているだけですぐにわかった。幸せな家庭なんだって。両親のいない私には、羨ましいだけで触れることが出来ない、遠い光景。


「美咲…?」

「……なんでもないです。帰りましょう、叶恋さん」


 自分も親の愛情に触れることが出来ればよかったのに…。自ら突き飛ばしてしまった。

 叶恋の後ろをゆっくり歩いていると、近くで聞いたことのある声がした。


「歩夢、この子犬可愛いよな?」

「それ子犬のレベル超してね、未来?」

「……」


 この二人の声も聞いたことがある。叶恋さんに目をやると、迷惑そうにその光景を見ていた。道のど真ん中で子犬(のレベルを超した犬)を抱いた未来さんと歩いている歩夢さんに、彼女は近づいた。


「その犬持って帰る訳?」

「叶恋、もちろんだよ。かわいいじゃんか」


 彼らに近づいてみてわかった。学生・・とやらの服を着ている。もしかして、サーラさんや湊も学生のなのだろうか。


「ほら、美咲も可愛いと思うよね?」


 抱きかかえたまま私に犬を向ける。ふとその犬と目が合った。これはただの犬ではない。そう感じた。


「これ、狼ですよ。犬じゃないです」


 狼だけでなく、アニマル派の人でもある。この暗い黄色い目はアニマル系の知り合いに居た。しかもその知り合いは狼型だった気がする。


「貸してもらってもいいですか?」

「お前、喰われんなよ」

「大丈夫です」


 それを聞くと彼はその生き物を私に渡してくれた。少し暗い黄色い目にこの毛触り。これはやはり私の知り合いだ。しかしここで名前を呼んでも面倒になるだけだ。「可愛い…」それだけ言い、彼に狼を返す。


「ということで持って帰ろうか」

「人の物ってこともあると思うんだけど」

「首輪もないし、飼われてはないはずですよ」


 実際彼は飼われていないし、人の物でもない。これが知り合いでなければ親から勝手に引き離しているのと同じことになる。


 私としては、引き離される気持ちがわかるし、愛情にも触れた覚えがない。














             どうか、本物の愛情を私に教えてください

最終的にはこの話はあんまり必要なかったと思いますね((笑い


でも狼を持って帰らなければ話があんまり進まない…



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