chapterⅠ † 翼を失った鳥
「出してっ! 閉じ込められるなんてやだ! みなと!!」
「その湊の頼みだよっ」
今にもあきそうな扉がガチャガチャ鳴らしながら引いてるこちら側と、必死に抑えてる向こう側。どうして私が閉じ込められないといけないの? 意味わかんない。湊になにもしてない!
「みなとぉ。助けてっっ! あんたの家燃やすわよ?」
「怖いこと言うなよ! とりあえず落ち着けっ。そしたら湊呼んでやるから!」
それを聞いて、ガチャガチャしてた手を止める。扉を背にして座り込む。もう、疲れたよ。
「……湊とは知り合いか?」
「まぁ、そんな感じ……です」
知り合いと言うよりも、敵というか、友達というか、兄妹というか……。言ってしまったらもう面倒だからそれにしとく。
「科学派と魔法派がねぇ…」
私と湊は属さない時にすでに会っていた。もう少しで言いそうに言いそうになった。これも言ってはいけない。真実も言えない。言葉ですら自由を奪われた。
なんとしてでもここから出ないと。私は誰かに囚われるなんて人生は望んではいない。
扉が開かないなら窓がある。そう思い窓に手を掛けるもののどんなに力を入れても開かない。
「お前結構上の身分だろ?」
こっちは脱出するのに頭を使っているのに、暇そうに聞いてくる。一応答えたほうが、怪しまれないはず。
「それなりによかったですよっ。普通の人と比べれば」
王族ですから、血は繋がってなくても。
窓ガラスを割って出れるかもしれない。割るのに丁度いいものはあるだろうか。部屋を一通り見ると、
「あった…!」
広い部屋に何個かあった椅子。赤いクッションに、背もたれがやや高め。思わず感嘆の声が漏れる。
「何があったんだ?」
その返事には答えず椅子を持ってすぐに窓に近づく。もう怪しまれてもいい。何階か分からないけど、とにかく出れるならいい。閉じ込められるなんてごめんだから。サーラさん、ごめんっ。
――――――割れろ!
粉々に割れた窓ガラス。床に散乱するガラスの欠片。荷物も何もないからすぐに出られる。心残りは湊とサーラさんだけだけど。
魔法でほうきを取り出した時扉が開いた。
「おま…っ! 修理代がかかるだろうが!」
「えっそっち!?」
私はもう何が壊れても関係はない。窓を抜ければ『自由』が手にはいるから―――。
走ってくる歩夢さんが近づく前に窓から降りる。けど、予想以外に高さがあった。ほうきに乗っててよかった。
「させるかっっ!」
あまりに突然のことで声すら出ない。ほうきの端に、飛び乗ってきた。えっここ4階!
「ばっ揺らすな!」
「それは私のセリフっ。う、動かないで!」
ぐらぐらゆれるほうきで、バランスを崩して落ちた。なぜか私が。それなのに歩夢さんは残って、浮いてる。
最悪っっ。出来れば魔法派の領土で死にたかった。
「――――っと…。大丈夫? 美咲ちゃん」
いつの間にか瞑っていた目を開けるとすぐ近くに爽やかな青年。墜ちてきた私を受け止めようとしたのか、墜ちてきた速度と私の体重で下敷きになっただけだった。
「…っ……平気、です…」
失敗した。あいつのせいで、あいつのせいでつかまった。いまだほうきにぶら下がってる人を、ほうきごとどっかに飛ばす。
「魔法派に、戻ります…」
追放されてもきっとなんとかなる。私が住んでいるところは誰も来ない。使用人は口止めすればいい。魔法を使って。誰にも見つからないように生きよう……
「それは許さない」
どこからか出てきた湊。本を片手に持って、黒髪を揺らす。
「監禁でもして、私を戦争の引き金に使う?」
何故私を出してはくれない。科学派は魔道士を嫌っているのだから、湊だって同じになった。私は彼らの敵。城の者を戦争の道具としてあつかうのが当たり前。
「いや、それはない。お前と戦争なんて起こしたら科学派は間違いなく、壊滅だ」
「自嘲すんな」
もう魔法派と科学派が戦争を起こしてもいい。沢山の人が死んでもいい。私には関係の無いことだから。でもまぁ魔法派は私には加戦してくれないだろうけど。私監獄のほうだから。
「ただの暇つぶしだ。お前も嬉しいだろ?」
「えっ別に」
「おい」
この時私は気付かなかった。この時点でつかまってから、もう逃げられないことが。逃げることが許されない。
逃げたら自由は手に入る。
でも逃げることは出来ない。
誰かがずっと見張っているから。
翼を失った鳥みたいだね
はい、編集ー