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ライブを終えて


「ルルシア様、格好良かったよ」


「寂しいけど、ユリーシア様のことも応援してますから」


 講堂に残っていた何人かが、去り際に私に声を掛けてくれる。嬉しいけれど寂しいような複雑な気持ちで、けれどぐっと堪えながら笑顔でお礼を伝える。


「ありがとうございました。また、こういうイベントを企画するから! 見に来てくださいね。ステージに立つ側に、『アイドル』に、なりたい子も大歓迎だよっ」


 この感触なら。きっと、アイドル事業の始動も最早夢ではない。思い描いたものが、次第に形になっていく。

 魂が抜けたように空のステージを見つめていた人々も、次第に講堂を後にして。

 残ったのは、私とシュシュちゃん。それから、小僧とリリィさんの四人だけ。


「本当に、皆様が仰っていた通り……格好良かったです。ルルシアお嬢様も、何より、ユリーシア様が……本物の王子様のようで。あんなに素敵な存在は初めて目にしました」


 リリィさんが、放心したようにぽつりと呟く。頬がほんのりと染まって、ステージの余韻がまだ残っているようだった。

 小僧は黙って何かを考え込んでいる。


 

「ルル! シュシュさん!」


 そこに、制服に着替えたユリーシア様が駆けつけてきてくれた。小僧には目もくれず、右腕にシュシュちゃん、左腕に私を抱えるようにして抱き着いて。


「あわわ、ユリーシアしゃまっ」


「ユリーシア様! お疲れさまですっ」


 ステージ後だというのに、相変わらず秋の花のような良い匂いだ。隣のシュシュちゃんが興奮で倒れないかが心配だが、この位置ならなんとか支えられるだろう。


「ただいま。ユリーシア、ルルは後で返せ」


「クレイスくんもお疲れさま。ありがとうね」


「ルルは物じゃないもの。返さないわ。ルルもシュシュさんも私のだーいすきなお友達なんだからっ」


 ユリーシア様ご自身もライブでのパフォーマンスに引きずられているのか、舌をべーっと出してクレイスくんに反論している。普段ならば絶対に見せない仕草だ。可愛い。


「お前ら、本当に仲が良いんだな……」


 衝撃を受けた、というように、小僧が口を開く。そして、シュシュちゃんとユリーシア様を見比べて。


「エール公爵令嬢。見応えのある舞台だった。シュシュを虐げていたというのは、俺の……勘違いだったようだ」


 私とシュシュちゃんを抱えていた腕を解いて、ユリーシア様が小僧へと向き直る。


「これからは謂れのない言い掛かりをつけないでくれるのならそれで良いわ。ああ、でもわたくしのルルを不細工扱いしたことだけは許せなくってよ」


 ユリーシア様ってば相変わらず寛容、なんて途中まで思っていたけれど。そういえば私はこいつに不細工扱いされていたんだっけ。別にどうだっていいんだけどな。ユリーシア様もクレイスくんもルルは可愛いって言ってくれるし。クレイスくんの目の前で私の容姿を褒めるのも気まずいだろうし。


「大丈夫ですよ。私は自分が可愛いって知っているので傷付いてなんかいませんし。変な言い掛かりをつけられないで、普通に過ごせるならそれで充分です」


 そう伝えると、『ングォッホン!!!』と、低い咳払いが講堂に響き渡った。


「ルルちゃんも! ユリーシア様も! 甘いです!! フォンスっ! 勘違いだったじゃないでしょ、ちゃんと謝りなさいっ!!」


 圧のある重低音。普段より渋さ三割増しだ。小僧が慄いて、リリィさんは目を丸くしている。ついでに、クレイスくんは私の後ろに隠れてしまった。いや、はみ出してるってば。


「っす、すま、すまなかったっ。今まで、公爵令嬢たちにはとても理不尽な態度を取っていたと思う。何か償えることがあるのなら、なんでも言ってくれ」


「わ、わたしも。折角のご依頼を途中で投げ出して、ご迷惑をお掛けして。申し訳ございませんでしたっ。こんなに素敵な舞台に関わることの出来るチャンスだったのに……」


 小僧が頭を下げるのに続いて、シュシュちゃんの迫力に気圧されたらしいリリィさんも頭を下げてくれる。

 二人とも、シュシュちゃんの声が怖かっただけではなく、心から悔いているようにも見えた。


「良いのよ、もう。ね、あなたたち。わたくしはきっとまた、今日のようなステージに立つわ。その時に応援してくださるなら嬉しいわ」


 寛容なユリーシア様が、穏やかに微笑む。ああ、これはもう、二人とも駄目だろうな。だって、揃って心を撃ち抜かれた顔をしている。


「はい……」


「……はい」


「でも! ルルが可愛いということだけは理解して帰りなさいね」


 シュシュちゃんは、納得したようにうんうんと頷いている。そして、小僧とリリィさんに向かい合って、先程の二人と同じように頭を下げた。


「ねえ、二人とも。偉そうにお説教しちゃったけど、事の発端は私なんだよ。だから……私も、ごめんなさい。フォンスもリリィさんも、お話を聞いてくれる?」


 これから語るのは、きっとシュシュちゃんが持つ不思議な力の話だ。これまでは聞く耳すら持たなかった小僧だけれど、今なら大丈夫だろう。リリィさんも、きっと。


 これでルルの目的は果たせました。


 あと少し。読んでくださった皆様、本当に本当にありがとうございます。


 宜しければ、ブクマや評価、いいね等を押していっていただけたら励みになります。


 今までそれらをしてくださった方、本当にありがとうございます。

 そして毎話いいねを残していってくださる方、ほぼ毎日の投稿を果たせたのは間違いなくあなた様のおかげです。すごく、すごく、モチベーションに繋がりました。


 此処までお付き合いくださった方々に、読んで良かったなと思ってもらえるよう。気合を入れて書き上げます!

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