これからについて
三人で話し合って決まったユリーシア様のお披露目会は三週間後に決まった。少し駆け足な気もするが、今回の件の最終的な目的はシュシュちゃんに傾倒している男子たちの何人かでもユリーシア様に推し変させることであの態度を改めさせようということだ。
あんな状況を長引かせてはユリーシア様のストレスが溜まるばかり。だから、早めで良いのだ。
気に入った曲があれば二曲目もお披露目しましょうと何曲か弾き語りして二人に聴かせたので私も疲れた。ピアノは前世で小学生の頃少しだけ習い事をしていたのと、今世でも教養として嗜んでいたがそれほど得意ではない。
けれど魅力的な曲がまだまだたくさんあると二人に知ってほしくて、めちゃくちゃ頑張った。神経を使いすぎて額から汗が滲んでいるくらいだ。
「明日またお邪魔いたしますわ。お気に召した曲がありましたらその時に教えてくださいませ。それからユリーシア様は……、本日は童心に帰ったつもりでお過ごしいただければと思いますわ」
さすがに穴掘りや木登りなんてこの歳で出来ないだろうけれど、それが楽しかったと思い返したりちょっぴり幼い頃のような気持ちで過ごしてもらうだけで良い。
それがきっと、彼女の味になるから。
「俺は何か出来ることはあるか?」
「そうですね……、クレイスくんはお庭でユリーシア様のお名前を力の限り叫んでください」
途端にクレイスくんの顔が曇る。
「姉に依存してるおかしなやつだと思われる」
きみ、シスコンやんけ。コーレスの練習くらいしなさい。知らんのかコールアンドレスポンスを。知らんか。
「場を盛り上げるための観客の役目です。クレイスくんにはTOになってもらわないといけませんから」
「てぃーおー……??」
ぐっ。先程のユリーシア様もそうだったが、知らない横文字を発音するときの美形ってかわいいな。私にはないあざとさだ。
「トップオタク……、その人を一番応援してる人みたいな感じですかね。クレイスくんにしか出来ませんから、後日簡単な振り付けも覚えてもらいます。ピアノもあるから大変だとは思いますけど」
練習のためにピアノは覚えてもらうのだが、本番当日は私が演奏してクレイスくんには観客として客席にいてもらう予定だ。
「……庭で姉の名前を叫ぶのは無理だが、大きな声は出せるようにしておく」
「宜しい。では、私は帰って家の許可を取ってきますわね」
最近私が大人しくしているのに安堵しつつも少し寂しそうだったので、両親の許可はすぐ取れるだろう。
ただし、我が家で開催となるとグラシュー侯爵家と親しい人間しか招待出来ないのがネックだ。
おまけに、内容的にお父様の仕事上の関係者は呼べない。お母様や私の交友関係を漁ってお友達のお友達も歓迎ですからねーと触れこむのだがその方法であの物知らず小僧どもの何人にたどり着けるやら。
……まあ、その辺は後々考えよう。やることはまだまだたくさんある。
「ルルシア。今日はありがとう。遅くなってしまったし我が家の馬車を用意させるからそれで帰ってくれ。次からは夕食も用意しておくから、家の許可が取れそうなら遅くなった際には遠慮せず食べていってほしい」
数時間前の態度からは信じられない親切さでクレイスくんが提案してくれたので、帰りの馬車はお言葉に甘えることにした。明日の夕食をご一緒するかはわからないけれど。距離の詰め方おかしいんだよなー、大丈夫かあの子。
王族に最も近しい公爵家の馬車はそれはもう乗り心地が良かった。我が侯爵家も腕の良い御者と賢い馬、馬車自体の質にもこだわっているのだがそれよりも数段上だ。
心地良い空間に眠気が誘われてしまう。さすが公爵家クオリティ。やっぱり次回はお夕飯もご相伴に与ってみようかな。とんでもなく美味しいものがいただけそうだ。
馬車の心地良い揺れを感じながら、これからのことを考える。
楽曲決めに譜面の書き起こし、ユリーシア様のイメージカラー決めに衣装や髪型決め……舞台装置ももう古くなってきたし改良できるかな?
あー、やることが多い。
楽しみで仕方がない!!




