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ライブ開催の危機



 流石におサボり二回目はマズくて、ギリギリではあったけれどなんとか午後の授業には間に合わせた。


 成績余裕なクレイスくんは二回目だろうが問題がないらしく、ずっっっと私にへばりついていて、引っ剥がすのは苦労したが説得の末なんとか離れてくれたのだ。



 なんというか、クレイスくんは……大分私のことが好きらしい。なんでもしてやる、なんて言っていた。政略結婚云々も自分が手を打つからのびのびと笑っていてくれたら自分も幸せだと。



 メンタル幼女のくせに! 急にイケメンぶるな! ああでも嬉しい。格好良い。



 じったばったとエール公爵邸のピアノの鍵盤に向き合いながら身悶えていると、ユリーシア様が心配そうに声をかけてくれる。



「ルル? 大丈夫? やっぱり調子が悪いなら無理はしないで。今日はおやすみして良いのよ」



「あっ、ユリーシア様。あのっ……違うんです」



 朝にあった悩み事はもう綺麗さっぱり消えている。本日のレッスンはそれぞれの都合でクレイスくんとシュシュちゃんは学園から一緒の馬車に乗ってきて後で合流するのだが、羨ましいとは思っても嫉妬はしない。だって心に余裕があるから。


 今はまだやるべきことに集中したいし、パパーズとの約束の件もあるからライブが終わるまでは今までと同じ距離感でいよう、ということで話は纏まった。

 けれど、想いが通じ合ったということをユリーシア様に隠す理由もない。お姉ちゃん大好きっ子なクレイスくんが既に学園で伝えているかもしれないけれど、私からも報告したほうが良いよね?



「実はクレイスくんと……」



「クレイス? 顔も見たくないなら到着してもこの場から締め出すわ」



 あ。これまだ何の知らせも聞いてないな。こんなに心配してくれて有難い限りだけれど、握り拳が怖いですユリーシア様。



「違うんです。あのっ、えっと……ユリーシア様、私


「大変だよ!!!」




 クレイスくんのことを好きになってしまいました。クレイスくんも同じ気持ちみたいです、と伝えかけたタイミングで息を切らしたシュシュちゃんがレッスン室に駆け込んできた。

 ぜえ、はあ、と息を切らしている。いつかのクレイスくんのようだ。



「どうしたのシュシュちゃん」



「落ち着いて。ゆっくりで良いから、何があったか話せる?」



「……っ。はい」




 そういえばクレイスくんの姿が見えない。一緒に帰ってきたんじゃないのだろうか。



「あの、ルルちゃんのおうちでお茶会──、ライブするの。次の十九の日ですよね?」



「ええ、そうね」




 日数にしてあと十日余り。私のファンを自称する人たちに声をかけた際にそれなりに人数が集まったので、招待客についてお母様に協力をしてもらうことはなかったけれど、舞台の設営などの準備の方は侯爵家で進めている。



「その日──、学園生は絶対参加の文化交流会をするらしいんです。よほどの理由がない限り欠席は禁止。場合によっては欠席者は単位を落とすって」



「……ええ?」




 次の十九の日、というのは本来なら休日である。そういった日に学園生強制参加のイベントが入ることは別に珍しくはないけれど、でも、こんなに直前に知らされるのは異常だ。

 学生とはいえユリーシア様やクレイスくんのように社交活動をこなしている生徒もいるし、そうでなくとも実家の領地運営や事業の手伝いに精を出す者も少なくはないのだから、普段ならば最低でも二ヶ月前には通告があるはずなのに。



「直前だから普段より公欠の基準は甘いと思うけど、だからって私達が欠席申請を出したところで招待してくれた人たちが来てくれるかどうかは──」



 アイドル活動したいんで休みます、がそれぞれの家の事情として通るか否かも定かではないけれど、それ以前に今回の催しに招待したのはほぼ学園生なのだ。いくら私やユリーシア様に好意や厚意を寄せてくれていても、単位を落とすリスクを負ってまでライブに来てもらうのは難しいだろう。




「困ったわね。……日程を変えるしかないかしら」



「……他の日程となると、我が家の方で都合をつけられるかどうか」



 今更別の日に我が家の庭園を使わせてもらえるだろうか。家族が私に甘いとはいえ、当然お母様やおねーちゃんの社交場としての利用の方が優先順位は高い。私もそこは弁えているからこそ、事前に日程の調整をしていたのだ。



 頭を抱えたところで、圧のある低い声が室内に響き渡った。





「私のせいかもしれない。ごめんなさい二人とも……うわああああん!!!」




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