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シュシュちゃんのスカートは世界を救う






 あの後、ついでだからパンツ見せてと言ったらシュシュちゃんには断られた。ついでで見せられるような安いパンツではないそうだ。美少女の下着を見るチャンスを逃してしまったのは痛手だが、そんなことを考えられるくらいには精神が安定してきたのである。

 今ならクレイスくんとも普通に喋れるかな。



「……あ、」



「…………ルル」




 なんて、考えてると出会うもので。長い廊下の向こう側に、クレイスくんの姿が見える。人通りの少ない通路には他に人影もなく、私とクレイスくんの二人きりだ。

 時間が経って少しはマシになったと思うけれど、昨日泣き腫らした顔が未だ戻りきっていないのであんまり近くで対峙したくはない。


 そんな私の思いを見透かしたかのように、何故だがクレイスくんも距離を詰めては来なかった。



「……クレイスくん?」



 向こう側から歩いてきたということは、私の後方に目的地があるんじゃないだろうか。



「……朝は、すまなかった」



 えっ、なに? 何にもされた覚えがないんだが。




「昨日……優しくするなと言われた。けれど、俺はルルを見れば笑っていてほしいと……何かをしてやりたいと思ってしまうから、こうして距離を取っている」



 つまり、一緒に居たら優しくしてしまうけれど、それは私が望んでいないだろうからその願いを叶えるために近づいてこないと。



「……っ、可愛すぎなんだが……」



「ルル?」



 思わず漏らした言葉は、距離があるお陰で彼の耳には届かなかったようだ。



「……いえ、あの。すみません、昨日はちょっぴり取り乱していて……クレイスくんがいつも気遣ってくれるの、嬉しいです。だから普通にしてください」



「そうか、良かった」



 そう言って、一歩、二歩……と距離が詰められる。近づいてくるその顔は、綺麗な銀混じりの金髪に、燃えるような紅い瞳。睫毛も長くて……やっぱり格好良いなあと思ってしまう。



「……どうした」



 あ、視線に気付かれた。



「お顔が良いなぁ、って見ていました」



 大丈夫だよね、このくらいの会話はいつもしているし。でも、こういう流れになるとクレイスくんは必ず──



「惚れたか?」



「はい」



「…………え、」





 ………………あ。



 その質問は想定していたはずなのに。



 なんで、なんで! 条件反射でぽろりと口が滑ってしまった。気持ちを伝えようとは思っていたけれど、絶対に今じゃない! だってまだ政略結婚の話だって片がついていない!


 クレイスくんも鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしているし、どうしようどうしよう。えっと、素直に言うしかないよね?



「ああああのっ、昨日、クレイスくんと話して、好きだなあって自覚したばかりなんですけど、つまりシュシュちゃんのパンツは世界を救うらしいのでちょっとスカートを捲ってきます!」



 穴があったら入りたい。でも学園に落とし穴なんて掘れないから、シュシュちゃんのスカートを捲って頭を突っ込んで隠してもらうのだ。

 さっきの教室にまだ居るかな、お願いだから居てほしい。



「ルル、」



「シュシュちゃんのスカートに用が出来たので! 急ぎの用なので私はこれで失礼します!」



 一刻も争う事態だからと踵を返そうとすると、走ってもいないのにもうクレイスくんは私の眼前まで詰めてきていた。脚の長さの違いだろう。身長差とはなんて残酷なものなんだ。


 いや、どうしよう返事を聞く心構えなんて皆無なんだけど!




「あっ、あの……、私とはお付き合いしないって言ってましたから! 分かってますよ、うん」



「……それは、お前にその気がないのに交際はできないだろう。お互いの気持ちがあって成立する関係なんだから」



 あれってそういう意味だったの? いや、待て。相手はクレイスくんだ、希望があるかもなんて浮かれるのはまだ早い。



「あの、振られる準備が出来てないので! まだ返事は聞きません! せめてお返事は保留にしてください。気が向いたらちょっとだけ……その……ちょっとだけ、私と付き合うのもアリかどうかを考えてくれたら嬉しいなあ、なんてっ……」



「無理だ」



 即答だ。やっぱり私のことは友達としか見られないのだろうか。心臓を強い力で捻り潰されたみたいに苦しい。やっぱり走って逃げよう、と足に力を込めたところでクレイスくんが続ける。



「なんでいつも話を最後まで聞かない」




「聞きたくない話だからですよっ」




「ルル。愛してる」





 ──聞き間違いだろうか。なんだかとんでもない言葉が聞こえた。



 私の認識では、それは好きという言葉の上位互換として使われることが多い気がするのだが。




「シュシュ嬢の……、その、下着に用があるなら止めない。流石にそれは、俺では代わりになれないだろう」



 すっごく言いにくそうに、頬を染めてしどろもどろに話している。女の子のパンツの話なんかしたくはないのだろう。


 言葉の意味を受け止められず混乱する頭で、ひとつだけ強く思う。


 恥ずかしげなその姿が、どうしようもなく可愛い。






「だが……俺は、世界なんて救うつもりはなくても、……ルル。お前を救うのは自分でありたいと思っている。好きだ、十年前から、ずっと」





 読んでくださってありがとうございます!


 

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