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未来の話




 正確には結婚の話題が私の地雷というわけではない。

 けれど、視線が痛いのだ。



 主に二人の視線が!



「ルルはもし求婚されるならそういう言葉を贈られたいの?」



 あああユリーシア様がこの話題を続ける気満々だ!



「エット……、一生独身でも良いですしもし政略結婚とかってなってもお互い思いやれれば求婚の言葉とかは特に……」



 恋愛とかわかんないし。パパーズがアイドルプロジェクトで企業するならそこで手腕を振るって結婚なんかしない予定だし。



「何故その二択なの? 恋愛結婚の可能性だってあるでしょう」



 ユリーシア様もお年頃の女の子ですものね! したいですよね、恋バナ! でもお願いですから今はこの話題はやめていただきたいです。

 私にとってはテストで悪い点取ったらゲームは没収! くらいの感覚で交わしてきたお父様との約束を何故だかクレイスくんとシュシュちゃんがすっごい気にしているのだ。

 友達想いなのは嬉しいし二人とも大好きだけれど、そんなに深刻なことでもないのに。二人とも絶対恋愛結婚マンで政略結婚アンチなんだろうか。むやみなアンチ活動は良くないよ!



「ユリーシア。無理に聞き出すことはないだろう 



 おっと、意外なところからの援護だ。クレイスくんは私に呆れたり怒ったりしていたのではないんだろうか。



「クレイス。貴方は知りたくないの?」



「…………聞いたところで何も変わらないだろう」



「そ、そうですよ! 私が誰と結婚しようと私達四人はズッ友ですから! ねっ」



「ズッ友ってリアルで初めて聞いたよ、ルルちゃん」



 えっ、もしかして死語なんだろうか。でもでも会話の流れが変わったので良しとする。



「まあ、クレイスが気にならないなら良いわ。ルル、しつこくしてごめんなさいね」



「いえいえ!」



 楽しいからね、恋愛トーク。私から提供できる話はないけれど、他人のものなら是非聞きたい。



「二曲目ですね! 参りましょうっ。もう本当にこの曲を歌ってくれた子が大好きで大好きで……本当に格好良いんです。王子様なんて呼ばれて……」



「……ルル。我が家の家系を遡っていけば王妹殿下が輿入れされたこともあるし……わたくしたちにも多少は王族の血が入っているのよ」



「? はい」



 公爵家ともなればそんなことは珍しくない。私でも知っているようなことだけれど、なぜ急に?


 ……あ。そうか。



「ユリーシア様なら本物の王子様にだって負けないくらい格好良いお姿になれます!」



「…………ありがとう」




 その穏やかな微笑みは、そういうことではないと伝えてきている気もしたけれど気にしないことにした。




「弾き始めて良いだろうか」



「あっ。はい! ユリーシア様、宜しくお願いします」



「ええ、行くわ」





 一曲目に比べて歌も振りも多少激しいところのある曲だったのだが、ユリーシア様は見事に歌い切って見せた。こちらも本番までにアレンジは必要だけれど、それにしても今までのレッスンでこれだけコツを掴んだのかというほど素晴らしいものを見せてもらった。




「かっっ……こ良いですユリーシア様」



「ユリーシアしゃま、わたし夢女子になっちゃいましゅ……」




 シュシュちゃんがまたおかしな方向に行きかけているが、それだけ素晴らしかったということだ。



「本当? わたくし、もし三曲目を提案されても披露出来そうよ」



 とっても魅力的な話だ。けれど、ファーストライブでそれは止めたほうが良い。



「個人的にはすっっっごく見たいんですけど、無理をしてお身体の負担になったらいけませんから今回はやめておきましょう」



 でも、でも。




 まだファーストライブも終えていないこの状況でこんなことをお願いして良いのか分からない。



 けれど、……言ってしまおう。



 伝えなければ後悔するから。




「……もし、ファーストライブを終えて……ユリーシア様にそういった気持ちがあったなら、その先も私のもとでアイドルを続けてくれますか……?」




 サイリウム代わりに握っていたリボンにじっとりと手汗が染みていくのを感じる。



 答えを聞くのが怖いけれど、早く返答がほしい。なんて矛盾だ。



 ユリーシア様は穏やかに微笑んで──、先日と同じように私の頬を撫でた。



「もちろんよ。ずっと一緒に居ましょうね」




 先程の曲の余韻か、今のユリーシア様はいつもの女神様ではなく、まるで精悍な王子様のようだった。




「格好良い……」



「羨ましくて死ぬ……」




 私の口からは感嘆の言葉が漏れ、シュシュちゃんは再度その命を散らそうとしていた。




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