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メンチカツは好きだけど




 とりあえずはシュシュちゃんの自害を阻止出来たので、一曲目の確認に入る。


 クレイスくんが伴奏をしてくれているので、私はしっかりユリーシア様のパフォーマンスを確認出来るのだ。



 ──うん。歌声は問題ない。透明感のある伸びやかな歌声。アイドルソングに合わせるには少し大人っぽい声質かもしれないが、その意外性がまた良い味をだしていると思う。



 で、振りだが。これが意外と難しい。ユリーシア様のダンスは完璧である。私が教えた通りの動きだ。けれど、今回のライブに於いて完璧であることよりも大事なことがあるわけで。

 それは、ユリーシア様の可愛さで『魅せる』こと。そしてそれを観客の皆に『楽しんでもらう』こと。

 可愛さに重きを置きたいのでなるべく大きな動きを取り入れたいのだが、そうすると裾が広がってしまったり、場合によっては襟元が乱れてデコルテの守りが疎かになってしまう。

 日本基準で言えばいかがわしいと言うような度合いの露出でもないし、幼い頃の私のライブではそんなことを気にしなくても良かったけれど、学園に通うような年頃になった今それははしたないと敬遠されてしまうだろう。

 かといってそれを恐れて小さい動きで纏まってしまうと見せ場に欠ける。

 なのでその辺の調整をしつつユリーシア様の持ち味を活かすアレンジに仕上げなければならないのだ。

 


「今のところは腕はこう……肩の位置くらいまで上げるのが目を引けるかもしれません」



「そう? いち、に……、服の乱れは大丈夫かしら」



 うん可愛い。大胆さもあるけれどはしたないなんて言われない範囲だろう。



「良いです良いです。問題があるときは言うのでユリーシア様の好きにアレンジも入れてくださって大丈夫ですからね」



「分かったわ。……ふふっ、楽しいわね」



 木登り熟練者のユリーシア様はやはり身体を動かすことが好きなのだろう。楽しんでくれて良かった、と思う。アイドル本人が楽しんで活動してくれていたらファンはもっともっと応援したくなってしまうものだから。



「しゅてきですユリーシアしゃまあぁぁ」



 ……うん。隣に具体例があるしね。こういうファンの存在も本人のモチベーションになるだろうし、シュシュちゃんが居てくれて良かった。

 さて、ユリーシア様トップオタのクレイスくんは……、何故か伴奏の合間に私の方に視線を向けている。

 他のことをしながらパフォーマンスの助言までするのは難しいだろうからユリーシア様を眺めていてとは言わないけれど、だからって私を凝視してくるのは違うだろう。


 ……あっ、これが噂のメンチを切るとかそういう? 不良漫画でお馴染みの! でも悪意とか敵意は感じないんだよなー。遊びの一種だとしたらお返しにこちらからも視線を送らないといけないのだろうが、怖がらせてしまったら可哀想だからやめておこう。



「ルル? どうかして?」



「えっ? あ、いや……メンチカツが食べたいなあ、と」



「腹ペコなの? 今度作ってあげるから今はユリーシア様の方に集中しようよ」



 うう、腹ペコ令嬢に腹ペコ扱いされてしまった。けれど注意力散漫になっていたのは確かなのでそう言われてしまっても仕方がない。



「ごめんね。えっと……続きをしましょう」



「ええ。ねえルル、サビの部分なんだけれど、こう……ターンを入れてみても良いかしら」



「はい! 可愛いです!!」



「ユリーシア様、そこでファンサも入れてくれたら私は歓喜のあまり死ねます」



 ユリーシア様も積極的に意見を出してくれて、シュシュちゃんも……表現が過激なのは置いておくとして、いろいろと提案してくれて一曲目については全員が満足する仕上がりになった。

 大きな問題が起こらない限りはこちらについてはもう安心だろう。もちろん前日までレッスンは重ねていくけれど。



 ……で、余力があれば二曲目も披露しようという話であった。そちらについては一曲目を仕上げてから、ということで少しずつしか練習をしてこなかったのだが、この調子なら今から追い込めば大丈夫そうだ。

 曲と共に衣装を替えるかはなども考えなければ。流石に今からオーダーメイドは間に合わないので、こちらは有り合わせのものでなんとかすることになるだろう。

 一曲目とは打って変わって格好良い寄りのパフォーマンスになるだろうから、クレイスくんの手持ちから何か借りても良いかもしれない。




「少し休憩してから次の曲に取りかかりましょう」



「そうね、はぁっ……こんなに何かに熱中したのは久しぶり」



 公爵令嬢ともなれば私生活も多忙だろう。最後にユリーシア様が熱中したことは、やはり木登りだろうか。



「あのあのっ、スポドリもどき作ってきたんで飲んでくださいユリーシア様っ」



 緊張した面持ちでシュシュちゃんが差し出したのは水筒だ。運動後の水分補給にスポーツドリンクを自作してきてくれたとは流石である。



「ありがとうシュシュさん。……美味しい。染みるようなお味ね」



「ユリーシア様のためならスポドリだってお味噌汁だって毎日作りますうぅぅ」



 スポドリは毎日飲んだら太るし、お味噌汁は……毎日飲むのは良いことだけれどなんだか言い回しに含みを感じる。



「お味噌汁を毎日作りますとか作ってくださいとか、プロポーズで使われるやつですよ」



 と、ツッコんでから気付いた。



 自らの地雷を踏み抜いてしまったことに。







 いつも読んでくださりありがとうございます!



 自分の文章力や表現力の不足に身悶えする日々ですが読んでくださっている方の存在がとても励みになっております。


 これからも宜しくお願いいたします!

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