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妖怪令嬢への依頼




 小僧その二、改めクレイス・エールくんだが。先程のユリーシア・エール公爵令嬢の弟らしい。同学年なので双子なのだろうが、通りでそこはかとなく顔立ちが似ているわけである。瓜二つというわけではないので二卵性だろうか。



「あのちっこい女が現れてから、周りの友達はみんなあいつに傾倒してなぜか姉を敵視するようになった。……よく考えたらお前……いや、きみが周りを夢中にさせても誰かが冷遇されるようになったなんて話はなかったのに」


 しゅんとうなだれて、言葉を選ぶように話すその姿は悪いやつには見えない。初対面の印象こそ最悪だったが反省した子にねちねちと根に持つつもりもない。



「……話しやすいようにしてもらっていいですわ。謂れのない言い掛かりさえつけなければお前でもルルシアと呼び捨ててもらっても結構です。まあ、そんなに馴れ馴れしい人は友達認定しますがね!!」


 えっへん。と胸を張って言ってやる。私はどちらでも良いのだが流石に引くかな?



「わかった。じゃあ、ルルシアも俺のことはクレイスと呼び捨ててくれ」



 もじもじ。ちょっと恥ずかしそうに両手の指を組みながら答えるその姿は乙女だ。友達だなんて冗談のつもりだったのに。

 まあ、友達が増えるのは悪いことではない。この素直さだし本当はいい子なのだろうから、仲良くなったら楽しいかもしれない。



「……さすがに今日が初対面だし公爵家の方を呼び捨てにするわけにもいかないのでクレイスくんって呼びますね。ご自分で提案されたので、それでも不敬だとかはナシですよ。……なんか成り行きでお友達になっちゃったけど、私はお友達は大事にします。なので、お話聞いてあげましょう。ユリーシア様はアイドルになりたいと仰ってるんですか?」



 そう。この子は自分の姉をアイドルにしてくれと言った。この子たちがどれだけアイドルというものを理解しているか分からないが、その舞台に立つ手伝いをしろというなら大歓迎だ!

 ユリーシア様ならたくさんの人を魅力出来るだろう。



「……いや。俺がなってほしいだけだ。姉はあんな変なちっこい女よりよほどしっかりした人なのに冷遇されているのが見過ごせなくて……アイドルというものになれば同じ術を使えるだろう?」



 おや、お姉さんが推しってことかな。彼にとってアイドルは目的でなく手段らしい。けれど、アイドルに対する理解も全くの不正解ではない。だってあの子達は魅了の魔法を見せてくれる。……物を浮かせたりとか水を出したりとか、そんな不思議パワーではないけれど。ファンタジー的な魔法というものとは違うけれど。それでもあの子たちは魔法使いなんだ。



「シュシュちゃん……でしたっけ。あの子が周りを虜にしてるのは別の方法や理屈だと思いますし、アイドルとは貴方がイメージしているような魔術士の類ではないですが……良いですよ、ユリーシア様ご自身がそれを望めばですけれど」



「本当か? ありがとう!! それと、改めて先程までの態度はすまないっ!!」


「わわっ……」


 ぎゅっと右手をそのでかい掌で包みこまれた。急に距離感の近い子だな。とっつきにくいよりは良いか。



「もし用事がなければ本日我が家に寄ってもらえないだろうか? 急ですまないが」



「いいですけど……貴方そのお顔とお家柄で私みたいなかわいい子を連れ込んだら女の子たちが噂するんじゃないですの? もちろん私にその気はないですけれど」


 外野に事情なんてわからないのだから。恋人だなんだと勘繰られたら面倒だ。



「そのあたりは問題ない」



「ならいいですけど……」



 噂の対処をしてくれるというなら否やはない。こうして放課後、エール邸へお邪魔することとなった。



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