恋愛相談・2【シュシュSide】
神妙な面持ちのクレイス様の話の続きを固唾を飲んで待っていたのだが、内容は普通の恋バナだった。
普段なら興味がないと適当に流すところだけれと、今回に限っては事情が違う。政略結婚云々については私も思うところがあったのだ。
ちなみにルルちゃんの定位置に座っても良いと許可を得たのでそこに体操座りで腰を下ろしたけれど彼女のように茂みに身体を突っ込んだりはしない。汚れるので嫌だ。
「……どうしたら意識してもらえるだろうか。好きになってもらえたら、ユリーシアのお下がりをルルに押し付けるな、俺がもらうからと父に直談判しに行くのに」
私には高位貴族様のあれやこれやの勢力図はわからないけれど、ルルちゃんの気持ちさえ得られれば公爵様相手の説得にも勝機があるのだろう。
ならば意地でも振り向かせてしまえば良いのに。容姿端麗な公爵子息様に言い寄られて簡単に袖に出来るような女の子はそうそう居ない──と、言いたいところではあるけれどルルちゃんだからなあ。
「告白しないんですか?」
「十年片想いをしてきた。振られたら立ち直れない」
「えぇ……」
想像以上に重い。この相談をする相手は私で良いんだろうか。いや絶対に間違ってる。昨日の政略結婚云々の発言について話し合いたいと思っていたけれど、公爵子息様の十年越しの片想いの話を聞くとか荷が重すぎる。私の発言ひとつですごいおうちの将来偉くなるであろう人の恋の行方が右にも左にも転がってしまいそうなこの状況、怖すぎる。……あ、でも公子様に恩を売るチャンスと考えたら悪くはない?
「クレイス様、その……おも、いえ……うーん? クレイス様に十年想われて袖にするような女子は……いえルルちゃんは……うーん……?」
「他に楽しいことがあれば俺の告白なんかすぐに忘れるだろう」
それはそうかもしれない。ぴゅーってどっかに飛んでいっちゃいそうだ。
「げーむというのに、前世のルルが好きだった人物が居ると聞いた。少しでもルルの好みに近付きたい。理想の人物になれたと自信がついたら想いを告げたいと考えていたが……あまり猶予もなさそうだ。そいつはどういう人物だったか教えてほしい」
要は振られないという確信を得られるのを待っていた、と。
しかしゲームが何かも分からないだろうから仕方ないけれど、推しをそいつ呼ばわりは人によっては地雷だ。
「えっと……そいつじゃなくてその子とかその人とか呼んであげてくださいね。まずはそこからです」
「わかった」
たかが男爵令嬢の指摘にも素直に頷いてくれるので、クレイス様は意外とお話しやすい方のようだ。人によっては生意気を言うななんて言われそうなものだけれど。
「推しがどんな子だったか教えるのは出来るんですけど……うーん、クレイス様の役に立つかなあ」
何しろルルちゃんの推しはボーイッシュな女の子だ。クレイス様は逆立ちしたって彼女のようにはなれないだろう。
それに、彼女はリアコ勢とかそういうのでもなく普通にそのキャラと中の人を応援していただけみたいだった。癖といえば癖なんだろうけど、恋人に同じものを求めるのだろうか。
「あ。でも将来を誓ったとか言っていたなあ」
今でこそ私もユリーシア様という推しがいるのだが、前世ではそこまで熱量を持って誰かを応援なんてしていなかったから羨ましいと思ったものだ。
「将来を……誓った」
あ。いけない。これは婚約者とかそういう類だと勘違いさせてしまったかもしれない。
「恋愛とかそういうのじゃなくて、これからずーっと応援しますとかそういう感じの誓いですっ。ルルちゃん、前世でも彼氏はいなかったと思うって言ってましたしっ」
前世の記憶ははっきりしていないって言っていたから、恐らくといった感じなのだけれど。クレイス様の顔がぱぁっと明るくなる。
なんだこの人。今まで散々迷惑を掛けておいて何だけれど面倒臭いな。
これが学園人気ナンバーワン男子の公子様の実態か。
恋愛感情を抱いていたわけでもないけれど、幻想を打ち砕かれてちょっぴりがっかりする。
「どうすればいいだろうか。アドバイスがほしい」
もう知りませんそんなのと言いたかったがぐっと堪える。正直推しを意識するよりもクレイス様がこのままおもしれー男路線でいった方がルルちゃんの興味は引けそうだ。頭に芋けんぴでもつければ良い。
……などと提案出来るはずもなく。そもそもその芋けんぴも私が作らなければ存在すらしない。
「ルルちゃんの推しは……とんでもなく優しい子だったので。優しくしてあげれば良いと思います」
結局月並みなアドバイスになってしまった。けれど顔の良い男子に優しくされて嫌な気分になる女の子はいないだろう。
「王子様って呼ばれて、女の子にもすっごく人気っていう子だったはずなので」
「王子……王位簒奪か」
あ。余計なことを言ってしまった。王子様って本物の王族だと思ってる? 公爵家って王族の方と少なからず血縁関係があったりするよね。そんな方の口から出たら洒落にならない単語が出てきた気がするんだけど。
「あだ名ですからね、あだ名っ。……あとは、やっぱりはっきり好きって言わないとルルちゃんには伝わらないと思います」
あれだけわかりやすく態度に出されたらクレイス様の気持ちにも気付きそうなものなのだが、彼がちょっぴり変人……いや、個性的なのもルルちゃんがそこに辿り着けない原因なのかもしれない。
ならばもう振られるのが怖いだのなんだの言ってる場合ではないのだ。
「一度しか告白しちゃいけないなんて決まりはないから、もし振られちゃってもルルちゃんが本気で嫌がってないならまたアピールすればいいです」
もちろんストーカーなんて以ての外だし、もしクレイス様がそうなってしまったら私が責任を取って止めるが。
目から鱗、とでもいうようにクレイス様はその紅い瞳を見開いて頷いた。
「そうか。……ありがとう。俺は良い友人を持ったようだ」
おお、一応友情は感じてくれていたんだ。なら軽口も許されるかな?
「将来はウィゼル男爵家をお引き立てくださいね」
「俺とユリーシア、どちらが家を継ぐかはわからないが覚えておく」
正直恐ろしいと思った恋愛相談だったが、得難い成果があったのだった。
タイトルの〜←これ前後一個ずつ没収しました。どうでも良い報告。
良いですよね王子様な女の子。見るのも好きですがいつか書きたいなあ。
今月中は毎日投稿目指していたのですがちょっぴり怪しくなってきました。いえ、諦めず頑張ります! もし当日中に間に合わなくても翌日には必ず投稿しますので見捨てないでくださると嬉しいです。投稿出来なかった日には活動報告で報告します。
活動してないのに活動報告っていうのも変な気はしますがお許しくださいませ。




