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恋愛相談【シュシュSide】


 


 公爵邸侵入事件から数日が経った。



 今思えばあの時の私は焦っていたとはいえ本当にどうかしていて、学園を退学になったり下手したらウィゼル男爵家がなくなったりしてもおかしくないほどのことをしてしまった。


 けれどあの時居合わせた三人はお人好しというかなんというか、ユリーシア様は女神のような慈愛で許してくださったし、ルルちゃんは当然のように私を友達扱いしてライブの手伝いをしろとまで言ってきた。クレイス様には避けられているので流石に彼だけは私が許せなくて怒っているだろうと思っていたが、ルルちゃん曰く私のことが怖いらしい。


 この低い声が原因なのかと尋ねたら、そういうわけじゃないし割と何でも怖がるから放っておいて良いといっていた。ご姉弟なのにユリーシア様も同じ意見のようだった。

 ユリーシア様ご自身も私のこの野太い声については何も気にした様子がなく、むしろ個性があって素敵だと言ってくれた。やっぱり女神だ。


 ルルちゃんからは自分が侯爵家の名前を使ってエール公爵領の食材を買い取れないか交渉してみるから、それを使った料理をユリーシア様のデビューライブで振る舞ってくれと言われていた。

 もちろん腕を振るうのは吝かではない。……ない、のだが。

 昨日の彼女の話を思い出す。



 ライブのための経費などを援助してもらう代わりに、自分の身を投げ出すような約束をしていると。

 正直、今回のライブ計画はもっとお遊びの色が強いものだと思っていたのだ。ユリーシア様の魅力でフォンスたちを黙らせるにしても、例えるなら学園祭の出し物で高い評価を得て見返すとかそういった類いと同等の。いくらユリーシア様が素敵な人だとはいえ、ルルちゃんが自分の人生を賭けてまで成し遂げようとしているのは理解が出来ない。



 というか、クレイス様。あのお方は完全にルルちゃんにベタ惚れみたいなんだけれど、大丈夫なの? そのお父様の仲介で政略結婚? とんでもない修羅場になりそうであんまり見たくない。



 昨日はうやむやになったまま解散してしまったけれど、やはりもう一度話さなければと昼休みを使って学園中を探していたのだが、こういう時に限って見つからない。




 他に探していないところは……と彷徨っていたら、例の中庭に辿り着いてしまった。なるべく避けていたのに。此処によくクレイス様が来ていることを知っていたから。たまたま遠くから見掛けた時にはルルちゃんと二人で談笑していて……それがなんだか良い雰囲気を出しいるように見えたので、近寄りがたくて引き返した。

 それでなくとも何故だか私はクレイス様に恐れられているようなので、レッスンの見学をする時はこちらからは話しかけないようにして、それ以外でもなるべく出くわさないようにクレイス様がいそうな場所は通らないようにしていた。



 だというのに、茂みに屈み込むクレイス様に気付いてしまった。しかも向こうも私の存在に気が付いたようで、視線が合う。

 定位置にルルちゃんの姿が見えないのでよりによって一対一での邂逅だ。



 まだクレイス様とは距離があるけれど、どうしよう。頭を下げて……声を掛けないのも変だよね。


 こういうときは……そう。視線の高さを合わせてあげれば良い。


 中腰になって、いつもの低い声だと余計に怖いだろうから……作り声でそっと話しかける。


「こんにちは、あの、悪だくみとかしてないので大丈夫ですから」



 そう語り掛けながらそーっとそーっと。



 結構頑張って対応したと思うのに、近付いた時にはクレイス様の顔色は真っ青だった。


 なにが怖かったのだろうと尋ねようとした瞬間、遮るようにクレイス様は声を絞り出した。



「…………地声で話してくれ」



 なんと変わった人だろう。作り声より野太い地声の方が良いらしい。

 私としてもその方が楽なので、声のスイッチを切り替えた。



「ンゴッホン。……改めましてこんにちは、クレイス様」


「ああ」


「私、クレイス様に危害を加えるつもりはないので普通にお話してもらえたら嬉しいんですが……」



 一時期私がクレイス様の貞操を狙っている疑惑があったので、それで警戒されているのかもしれない。付き纏っていたのは食材のためだと理解してもらえたのではなかったのだろうか。




「……きみの、魅了を掛けられたら困ると思って……疑っているわけではないが、誤作動もあるだろう」



 私の魅了能力はあまり自分で制御出来ていない。だからそう思われてしまっても仕方ないのだけれど、クレイス様には例え魅了を掛けようとしたとしても失敗してしまうだろう。



「他に好きな人が居る方には効きませんって。一緒に行動してた時も効果なかったでしょ」




 元から私が何かしらの能力を使っているというのは予想していたらしいが、その特殊な力が確実に存在すると分かったところで恐怖が増大してしまったのだろう。

 そんなに警戒されるような強い力でもないのに。




「…………なぜ俺に意中の相手が居ると知っている?」



 ええ? この人本気で言ってる? 今度は予知能力とか読心術とか疑われてしまいそうだ。



「ルルちゃんでしょ? あれだけいつもいちゃいちゃしてれば誰が見ても分かりますって。噂にもなっているし」



 エール公子とグラシュー令嬢の仲睦まじい様子はここのところ学園で毎日のように目撃されている。

 二人とも噂を否定する素振りもないものだから、てっきり良い仲なのかと信じていた。

 けれどルルちゃんと直接話して分かった。めちゃくちゃクレイス様の一方通行なのだ。仲睦まじい様子というのは彼の必死のアピールの一幕である。



「そうか……ウィゼル男爵令嬢。きみは、俺よりルルのことを知っているのだろうか」



 ここに来てまで変な女とは呼ばれなかったことに安堵しつつ、その質問には答えかねてしまう。



「ほとんど知りません。お友達になったのも最近だし……あっ、でもルルちゃんの趣味についてはクレイス様たちより詳しいかもしれませんね」



 ルルちゃんが大好きだと言っていたゲーム。超有名だったので私も少しくらいは知っている。



「それなら……相談に乗ってくれないか」

 いつもありがとうございます! 細々と好きなように書き連ねてますがこの作品を読んでくださる方がいることが本当に励みになっております。

 宜しければこれからも見守っていただけたらと思います。


 明日もシュシュSide、後編の予定です。


 明後日よりルル視点に戻りますのでしばしお待ちくださいませ。



 この作品以外にも執筆したい! と構想しているものがいくつも……。けれど時間と私の文章力が足りなくて同時進行が出来ていない状況です。



 書きたいものはいろいろあるのですがまずはこの作品を愛して大事にしたいなあと思います。

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