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馬車の中で



「……ねぇ、付き合ってないのは分かったけど。ルルちゃんはクレイス様のことどう思っているの?」 



 どう、とは。クレイスくんの印象を聞かれているのだろうか。



「……すんごい顔の良い幼女?」



 見たまんまである。手がかかる時もある。でも純粋だし優しい。大好きな友達だ。



「そういうことじゃなくって。ちょっといいなーって思ってたりとか。あんな態度取られて靡かないの?」



「靡くもなにも……」



 クレイスくん本人にそんなつもりはないだろうし、条件反射でドキドキしてしまうことはあるがそれが恋愛感情かどうかはまた別の話だろう。

 私の前世での最推しは女の子で、中の人も可愛らしいお姉さんだったがその方に手を握られたり優しくエスコートされたら、と考えてみる。もっともっとときめいたと思うし、もしかしたら皮膚とかが推しの光で溶かされたかもしれない。

 今までこういった妄想をしたことがなかったのだが、夢女子さんたちの気持ちが分かってしまった。



「あの子の中の人にエスコートされたい……」



「……クレイス様が可哀想になってきたんだけど」



 なんだか知らないけど慮られている。良かったねクレイスくん! 怖いものを見てしまった時に私やユリーシア様以外にフォローしてくれる人が増えたかもしれないよ!



「もしクレイス様とそういう仲なら聞きたいことあるのかと思ったんだけど、聞いてこないし今聞いたら付き合ってないって言うし……。付き合ってないにしろそういう意味での好意を持っているとしたら、クレイス様は攻略対象かどうかとか、ルルちゃんじゃなくて私と結ばれる運命だったりしないのかとか。だとしたらそのルートではルルちゃんが悪役令嬢役になったりしないのかとか、知りたくないの?」



「えっ、シュシュちゃんクレイスくんのこと好きなの?」



 意外である。一時期はその可能性も考えていたけれど、一緒に過ごすようになってからは愉快で怖がりなクレイスくんにちょっぴり引いているように見えたのに。庇護欲をかき立てられるだとか、そういった感じだろうか。



「好きじゃないよ。変な人だなあって思ってる。ユリーシア様の弟君だし、私の今までの無礼も許して仲間に入れてくれたしいい人だけどね」



「そっか。良かった」



 友人の恋路は応援してあげたいが、どうにもクレイスくんの中ではまだシュシュちゃんは警戒すべき怪異らしくて時折怯えている。嫌悪とかそういったものはないらしいが、人慣れしてない猫みたいになっているのだ。



「良かった、って……考えてることは大体分かるけどね。で、知りたいの? それとも知りたくないの?」



 やれやれ、のポーズである。なぜ私の周りにはこんなにやれやれ系が多いのか。ちょっぴりバカにされている気もするけれどまあいいか。



「どっちでもいいよ。多分言われても知らんゲームだし今仲良くしてくれてるシュシュちゃんとクレイスくんが私にとっての本物だもん。ゲームではうんたら言われてもそれは私の知らない人だし」



 もし何かの拍子で知ってしまうことがあってもへー、そうなんだという反応しか出来ない気がする。だから自ら知ろうとも思わない。

 六歳の頃にライブをして、十年経ってユリーシア様やクレイスくんと会ってまたアイドルを育成するという目標に向かって歩き始めて。

 描かれたシナリオをなぞっていないという自信はある。目の前の人たちだって自分の考えで足で歩いている。運命と呼ばれるものももしかしたらあるのかもしれないが、それは誰かが頭上から糸を引いてその人の総てを動かしているということではないのだ。



「…………そう」


「そーだよ。だからシュシュちゃん。これからも仲良くしてね!」



 せっかくお友達になれたのだ。いい関係でいたい。

 頬杖を付くのをやめて頷いたシュシュちゃんはちょっぴりはにかんでいて可愛かった。



「あ、でもシュシュちゃんに聞きたかったことはあるよ。あの男子たちは大丈夫だった? 最近大人しいみたいだけど」



 流石に彼らのお友達であろうシュシュちゃんの前で伯爵小僧などとは呼べない。かといって名前も覚えていないので、なんとかこれで伝わるだろう。



「フォンスたちのこと? 地声を出してやめてって伝えたんだけど風邪引いてるってことにされちゃってね。これが本来の声だって言っても信じないし……魅了もどきも解除された様子がなくって。しばらく一人になりたいからって単独行動しているところ。ユリーシア様に変な難癖つけるのは私の前でいいところを見せたいからみたいだし、一緒にいなければあんな茶番は起こらないから」



 そういえば学園で見かけるシュシュちゃんは彼らと一緒にいなかった。一人でいるか、ごくたまに同じクラスらしい女の子たちと談笑しているくらいだ。

 小僧どもは小僧どもで固まっていて、たまに私とすれ違うとちょっと睨んでくるのだが別に怖くはないので哀れみの視線を返してあげている。

 そしてぷるぷると怒ったように震えるのだが、お子様だなーと思う。


 同じ幼い部分を残した子でもクレイスくんは優しいのに。彼の方が女子に人気なのは圧倒的顔の良さだけじゃなく思いやりもあるからだろう。


 それにしても、伯爵小僧どもの敵意がシュシュちゃんにまで向かなくて良かった。




「シュシュちゃんが嫌なことされたり傷付いてないなら良かったよ。もし何かあったら言ってね、守れるように頑張る」



「ルルちゃん……お人好し」



 人差し指で頬をつつかれて、やめてやめて〜なんて言っていたらウィゼル男爵邸に到着した。




「明日、シュシュちゃんも来る?」



「行かないよ。明日はお料理研究するし。っていうか私がいたらクレイス様が怯えるでしょ」




 馬車のステップを降りきったシュシュちゃんが振り向いて言う。



「明日のデート、楽しんでね」




 デートじゃないってば!








 


 いつも読んでくださる方ありがとうございます。ルルシアがやりたいと思っていることや恋愛模様をしっかり書ききれるように頑張ります。




 もし宜しければ評価、ブクマ、感想やいいねやレビューなどいただけたら飛び跳ね舞い踊ります。そして以前にしてくださった方々、ありがとうございます! あなたを神と崇めて感謝の祈りを捧げています!



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