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妖怪令嬢



 さて、人間とは苦い思いを糧に成長していくもので。私は十六歳になっていた。あの日のステージはなぜ失敗したか?単純にスベったからだ。アイドルという概念はまだ真新しすぎてこの世界の人たちに受け入れ難かったらしい。

 一度受け入れてしまえばあんなに素晴らしい曲はないとおもうのだが。なんたって私の推しの持ち歌である。

 斬新すぎたことと、演者である私の力量不足もあったのだろう。



 お転婆娘がなんだか奇妙な動きで奇妙な歌を歌って招待客をドン引きさせた。一部の人たちの間でちょっとだけ噂になったけれど、人の噂も七十五日。その性質はこちらの人々にも当て嵌るようで有難い限りである。

 一時期とはいえ一部の人達の間で悪魔崇拝だとか魑魅魍魎扱いまでされていたなど令嬢にとって黒歴史以外の何物でもない。




 あと、単純に私が自分がアイドルとしてなにかやるなんていうのは解釈違いでもあった。どうしてもゲームで女の子を育てている時のような熱量が持てなかったのだ。もう自分では二度としない。なんか違った。   

 再度ステージで輝く女の子を見たいという気持ちも諦めきれないけれど、執着したところで現実が変わるわけではない。何か他のアプローチでアイドルという概念を拡めるか、それとも割り切って他の楽しいことを探すか。考えあぐねる毎日だった。



 ところでなんとなくだけれどこの世界、乙女ゲーム風というかもしかしたらなんかの乙女ゲームの世界なのかな〜なんて思い始めていたのだが、最近それが確信に変わってきた。



 よくある話でそれなりの歳になったのだから通いなさいと学園なんていう場所に放り込まれたのだけれど、なんだかヒロインとか攻略対象とか悪役令嬢とか呼ばれそうな人たちがいる。



 ヒロインと呼ばれそうな子は小柄な茶髪の女の子で、ショートカットなのは珍しいななんて思ったけれど周りに男の子を侍らせてきゃっきゃしている。どこから声出してますの? なんて言いたくなるような甲高い声には感心すらする。基本的に貴族しかいないこの学園でもし彼女が平民だったならば特待生だと噂になるはずなので、それがないということは恐らく子爵家か男爵家か……数の多い下級貴族だろう。高位貴族は身に付けている小物の品質や振る舞いで見ればすぐにわかるのだ。



 悪役令嬢らしき方はつり目で腰まで伸ばした金髪、赤い瞳の圧倒的美人。美貌の公爵令嬢として有名なお方だ。所作全てに気品があふれているが、その美しさからか威圧感強めですれ違ったヒロインちゃんがわざとらしくビクビクしてるのをよく見る。



 ちなみに攻略対象らしきやつらにはあんまり興味がないので割愛。キャラが立っていれば観察のしがいもあったけれど、三人だったか四人だったかヒロインちゃんの周りに集まって常に同じことを言っている印象しかない。なんかキラキラしているだけで個性がないのだ。

 というわけで、私の興味はヒロインちゃんと悪役令嬢様だ。二人とも良いキャラしている。もし私の大好きなコンテンツで新キャラとして実装されたら絶対にお迎えして大事に大事に育てるのに。


 とか、なんとか妄想に浸っていたら眼前で盛大に何かが始まっていた。




「ユリーシア様、ごめんなさぁいっ私そんなつもりじゃ……」



「わたくし何もしてませんわ! すれ違っただけでしょう」



「すれ違い様にシュシュを睨んでいただろう!!」




 うわー、すっごくテンプレなやり取りをしている。仲裁とかに入った方がいいだろうか?今の私はヒロインの友達でも悪役令嬢の取り巻きなどでもなくモブ中のモブという立ち位置なのだが。

 揉め事に関与したくない気持ちもあるっちゃあるが高位貴族を面子に入れてこんな廊下のど真ん中で揉めるんじゃない一般人がビビってるぞ、と。



 一応私も高位貴族の括りには入るので多少の口出しくらいなら家へのお咎めなどはないだろう。仲裁の仕方によっちゃあの中の誰かに嫌われるくらいか。あんま人に嫌われるの得意じゃないけどしゃーない。この先を通りたいのに通れなくて子鹿のように震えている女の子たちが可哀想だ。



「……あのー、皆様落ち着かれては?」


「なんだ! 外野は引っ込んでろ!」



 うるせえ顔が良いだけの小僧がよぉ。



 …………そう思って口に出さなかった私はとっても偉いと思う。こいつんちは確か伯爵家だったっけ。我が家も悪役令嬢風の彼女の公爵家も家格的には上なのだが良く楯突く気になったものだ。

 とはいえ私のマインドは清く正しく控えめな昔ながらの日本人。家柄でマウントをとるなんてナンセンスだし前世を含めたらこんなガキよりずぅっとおねーさんなのできちんとお話を聞いてあげようじゃないの。



「周りをご覧になって。可憐なお花たちが怯えていますわ。そのお話し合いは往来でやらなければならないことなんですの?」


「なんだその気持ち悪い喋り方は!!」



 ……この小僧、どこまでも失礼なやつだな。


「……グラシュー侯爵令嬢。助言をありがとう。皆様お騒がせしてすみません。……さ、貴女もお行きなさい」



 黙って成り行きを窺っていた公爵令嬢がくるりと周りに集まっていた生徒たちを見渡して頭を下げた。



「はっ、やっと自分の非を認めたか」



 先程の伯爵令息とその後ろの男子たちの何人かが鼻息荒く何かを言っているが、いやいやあんたらに謝ったんじゃないから。

 ヒロインちゃんはなんかずっと『どうしよう〜』みたいにくねくねうるうるしている。



「……もうなんでも良いですわ。此処にずっと居ては皆様のお邪魔になるので、通していただけないのでしたらわたくし他の階段を使います」



 目的地がどこかは知らないが、小僧どもが塞いでいる先の階段を使うのが一番早かったのだろう。迂回することになって気の毒だが、こいつらの相手をするよりは歩く距離が長くなる方が楽だろうな。


 公爵令嬢が消えていったのを見て、ギャラリーたちも解散していく。ヒロインちゃんと愉快な愉快な取り巻きーズも踵を返していったので私も教室に戻ろうとしたのだが、背の高い男子に腕を掴まれた。

 先程の物知らずな小僧の後ろにいた奴だ。



「やっと、見つけた」



 はて、なんとも、ロマンチックな発言だが私はこの小僧その二に見覚えなどない。まあこの美貌でいつの間にか虜にしててもおかしくないが〜〜?



 ……なんて、調子に乗ったことを死ぬほど後悔した。




「妖怪令嬢!!」





 連載作品というものが初めてでドキドキしてます。


 ルルシアのお口がちょっぴり悪いですね。私にとってはそこも愛しいところなのですが。読んでくださった方にも受け入れていただけたら幸いです。

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