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ヒロイン対アイドル育成者



 そういえば先日クレイスくんが彼女に追い掛け回されたと言っていた。あのあと同様の愚痴を聞くことが無かったものだから、またクレイスくんの自意識過剰が出たんだろうな〜と気にせずに過ごしていたのだが。

 ごめんねクレイスくん。きみの言っていること、信じてなかったし何なら今この時まで忘れていた。


 けれど、こうなってくると分からないのはシュシュちゃんの行動だ。



「クレイスくんとお近付きになりたいのにユリーシア様を排除しようとしていたんですか? お二人、姉弟ですよ。仲も宜しいですし」



「そんなの知ってるっ。クレイス様と仲良くなりたいって思ったのは最近なのっ。それに……ユリーシア様に何かしようなんて私は思ったことないっ」



 いやいやいやすれ違っただけであの騒ぎでしょ? 無理があるって。



「あの伯爵こぞ……令息のユリーシア様への振る舞いを見て止めもしなかったじゃないですか」



 止めたところであの暴走機関車ぶりだ。彼女に良いところを見せようと更に加速した可能性はあるけれど。

 わけがわからん、という顔をしている私に気付いたのか、シュシュちゃんがちょっぴりもじもじしながら野太い咳払いをした。

 ほんと、ビジュアルは優勝というかとんでもなく可愛いんだよな。この子。



「どうしよう、やめてねってちゃんと言ってたでしょ……」



 とんでもなく舌っ足らずで甘い声。普段のシュシュちゃんより糖分二割増しといった感じだ。

 そういえば。小僧の後ろでどうしようどうしようやめて〜とか言ってたような気がする。



「それじゃ止まりませんって」



「ングォッフォン!!」



 突然の野太い嘶きのようなものに威嚇か!? と柄にもなく構えてしまう。この場にクレイスくんが居なくて良かった。泣いちゃうかもしれない。



「この声がフォンスたちにバレるわけにはいかないでしょ。幻滅されちゃう」



 どうやら威嚇かと警戒したものは咳払いだったらしい。フォンスというのはあの伯爵小僧の名前かな。三分後には忘れてしまいそうだ。

 

 シュシュちゃんの声は、重厚感のある低い声で定着している。



「本気で止めると低い声になってしまうから、そうならないように抑えて喋るとあんな止め方しか出来なかったってことですか?」



「そう。私だって毎日毎日あんなわけのわからない見せ物に巻き込まれてイヤだったわよ! 一番最初にユリーシア様を見たときにあんまり綺麗な人だったから驚いてビクッてなっちゃっただけなのに私を守るだとか何とか言って勝手に盛りあがって……しかも、クレイス様がグループを抜けてから私の探してた人だっていうのが分かるしっ」



 クレイスくんは以前少しだけ彼女達と行動を共にしていた。その時に何にも感じなくても、後から運命の人だと分かるとかそういうのもあるんだろうか。

 私自身は恋愛的な運命の人だとかそういうのを信じていないが、ここが乙女ゲームの世界だというならあるのかもしれない。ヒロインであろう彼女の身になら特に。



「んー、女の子ですからね。私はその声も素敵だって感じるんですけど、地声が低い声でそれを出したくないとか可愛い仕草と声で男性によく見られたいって気持ちはあって当然ですよね。……でも、あの人たちのユリーシア様への無礼を本気で止めなかったのに彼女の弟であるクレイスくんと仲良くなりたいとか、そういうのは勝手だと思います」



「……っ!」



 シュシュちゃんは顔を真っ赤にして言葉を飲み込むようにして黙ってしまった。


 お話はもう終わりかな? と横をすり抜けて行ってしまおうかとも思ったけれど、どうにも様子が変だ。


 言ってしまって良いのか悪いのか分からない、というように口を閉じたり開いたりしている。


 そして、地声の低い声で叫んだ。



「貴女だって勝手じゃない! リアルの知識なんて何にもないくせにゲームのプレイ知識だけでその気になって! ゲームの知識でアイドルなんて育てられるわけがないでしょ!! 自分の目的のためにユリーシア様を巻き込んでるのは貴女も一緒だわっ」



 図星を突かれて、今度は私が言葉を発することが出来なくなった。

 そうなのだ。自覚していたことだが、本来ゲームの知識でリアルのアイドルを育てるなんて無謀でしかない。



「……なんでユリーシア様アイドル計画を知っているんですか?」



 本来なら反論したいところだが、今の私には反論する言葉も元気もない。



「貴女、今度開催するっていうパーティーに色んな人を誘ってるじゃない。その話を聞いたのと、この前この場所で会ってから貴女のことを調べていたら十年前の妖怪パーティーのことも耳に入ってきたから……そこでユリーシア様にアイドルごっこをさせるんでしょう?」



 妖怪パーティー、などと言われていても私が何をしたかなんてもし彼女が誰かから詳細を聞いたならすぐに分かっただろう。そこにこの前の歌と開催予定の我が家でのパーティー。自ずと答えは出てくる。



「……貴女に邪魔はされたけれど私は必ずクレイス様と仲良くなってみせるわ。そして目的を果たすの。貴女に邪魔されたのは許していないけれど、みんなにお茶会の内容を知られたくないんでしょう? 黙っていてあげるわ。だから貴女も私の声については言い触らしたりしないでよねっ」



 言いながらびしりと指を差して、シュシュちゃんは駆けていってしまった。


 シュシュちゃんはたくさん喋る子です。


 読んでくださってありがとうございました! もし評価や感想、ブクマにリアクションなど何かしていただけたなら喜びに咽び泣きます。


 これからもお付き合いいただければ嬉しいです!

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