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アイドル育成ゲームが好き ──ルルシアの転生デビュー──

 アイドル育成ゲームが好き。キラキラした女の子たちを自分の手でトップアイドルに育てるの。相棒が最高の舞台で最高の笑顔で輝いているときが一番好き。



 ──そんな、人生だった。



 ルルシア・グラシュー侯爵令嬢、六歳。自分の掘った落とし穴に自分で嵌って思い出した記憶のメインは前世でプレイしていたアイドル育成ゲームのことだった。



「転生ってファンタジーとか乙女ゲームの民がするものじゃないの……?」




 もちろん私だってそういったジャンルも好きだ。けれどメインでよくプレイしていたのは育成ゲームで、不思議な生き物を育てる系もよくやったし、何と言っても専ら嗜んでいたのはアイドル育成ゲームだった。


 更に言うなら男の子のアイドルを育てるのも良いのだが、女の子のアイドルを育てるのはもっともっと好き。何よりも大好き!!

 自分が着たことのないような服を着て、キラキラ輝いてみんなに愛される女の子たちをみていると幸せな気持ちになれるのだ!



 

 ………さて。少々取り乱してしまったのだが、思い出に浸っている場合ではいのだ。こういう時はまず状況を整理しなければならないといけない。


 先程も言ったが、今の私はルルシア・グラシュー。なんと侯爵令嬢様だ。


 お人形のように美しい亜麻色の髪に翡翠の瞳。あの日育てたアイドルには及ばないが美少女といって差し支えないだろう。


 生家も侯爵家ということで、高位貴族ではあるものの王家に近過ぎるということもなく行動に制限も少ない。なんとなく前世は多忙による過労死だった気がしているので、もしかしたら今度の人生はイージーモードなのではないだろうかなどと喜んだのもつかの間。とんでもない問題に気付く。



「……っ、私の、生きがいがない!!!」



 そうなのだ。この中世ヨーロッパ風の世界。むろんテレビゲームなんて概念は存在しない。ファンタジーも乙女ゲームも、アイドル育成ゲームだってないのである。それどころかリアルでのアイドルという概念だって存在しない。


「そんなそんなそんなっ……!! 生きるための潤いがないなんて!! 干からびてしまうカラッカラの干物になってしまう人間の七割は水分で出来ているというのにいいぃぃっ」



 咆哮を上げながら手に持ったスコップで更に深く穴を掘り進める。そういえば落とし穴作りにハマってその落とし穴に嵌っていたのだったが、この悲しみを紛らわすには少しでも身体を動かすしかない。それに深く深く地中に潜ればもしかしたら少しは気持ちも落ち着くかもしれない。


 ……そんなわけがなかった。しかし、ぜえはあと肩で息をしながら、この絶望と折り合いをつける方法を見つけた。



 ないなら作れ。



 それが偉大なる先人たちの教えだ。



 それなりの深さになってしまった落とし穴の壁を蹴り上げて、どうにか地上に這い出る。



「お嬢様っ? 居なくなったと思ったらまた無茶苦茶してっ……」



 泥んこ姿の私を目にしたメイドたちが顔面蒼白で追いかけてくるがそんなものは気にせず駆けていく。邸内に入って土の着いた靴で床を汚しながら辿り着いた先は衣装室だ。ここが一番大きな鏡がある。


 鏡の前でくるり、と回転してみせる。やはり、どこからどう見ても美少女だ。



「……私がアイドルになればいいんだわ!!」



 そうと決まれば話は早い。前世で大好きだったコンテンツのライブでは観客も何曲か一緒に踊らなければならなかったので、オタ芸程度ではあるが多少の心得があるといっても過言ではないだろう。過言かもしれないがとりあえず今は過言ではないということにしておく!


 侯爵家の金と伝手を使ってカラフルなランタンや小さな風車を用意してもらって、庭園に小さなステージを作る。それをお茶会で披露する。よし、構想は完ぺきだ!!



 お父様とお母様に頼み込んで頼み込んで、なんとか得ることの出来た晴れ舞台。なんだかんだ言っても末っ子の私に甘い両親だ。

 落とし穴作りよりは怪我人の出る可能性が低そうだから許可が出たのかもしれないが。



 お父様のお仕事関係の方までは呼べなかったけれど、お二人が個人的に親交のある貴族の方々をたくさん招いてくれた。お二人のお友達の方々は、お子さんを連れてきてくれた方も多い。大体が私と同年代くらいの子息子女だ。お茶会と銘打たれたこの場だが、その実は私のアイドルデビューのステージである。



 小さな小上がりのステージに足を踏み入れ、メガホン型の大きな拡声器を右手に持ってご挨拶する。



「皆さま、来てくださってありがとうございます。いきなりで驚かれるかもしれませんが、本日は皆さまに見ていただきたいものがあるのです」



 そう言って、床を踏み締める。現地で推しやオタク仲間と踊ったあのステップだ。



 ──さあ、見て。


 これがアイドル。


 知らないなら私が拡めてやる!!




 そんな気持ちで歌って踊りきった私の初舞台。成果はというと──



 ──盛大に失敗した。


 こんにちは。読んでくださってありがとうございます。

 私の『好き』をたくさんたくさん詰め込んでしまいました。もちろん楽しく執筆しましたがちょっぴり恥ずかしい気持ちもあり……。

 

 これからルルシアにも嬉しいと楽しいがたくさん待っています。この作品を読んでくださった方が同じ気持ちになってくださったら嬉しいです。


 完結まで駆け抜けますので何卒よろしくお願いいたします。


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