第三章:反乱と粛清
第三章:反乱と粛清
第二節:「逆臣は、泳がせてから吊る」
1. 翔璃派の動き
帝国改名から2ヶ月後。
旧将軍・カラン・ドースを中心とした“翔璃派”が、密かに動き始める。
「翔璃様は、戦いの中でこの国を築いた。
あの冷血男に“王”を名乗らせておくわけにはいかない」
「戦の国には、戦の王が相応しい」
地方都市フォナ・マードにて、兵器庫の爆破と民兵の武装蜂起計画が立案される。
2. 依柊の予見
しかしその作戦計画は、立案の3週間前にはすでに依柊の手元に届いていた。
ジャッカル製の**魔導式監視虫**により、反乱分子の会話・行動・物資の移動が記録されていたのだ。
依柊は部下に命じる。
「計画を止める必要はない。進行させろ」
「むしろ、こちらから“些細な抜け穴”を提供してやれ。勝てると錯覚させるために」
3. 偽情報の流布と“勝利の幻想”
依柊の命で、密かに「兵器庫の守備が手薄になっている」という情報が流される。
さらに、裏から一部の兵士を金で買収し、わざと“協力者”を装わせる。
反乱軍のカランは確信する。
「今ならやれる。やはり民も軍も、翔璃を望んでいるのだ!」
だがそれは、すべて**依柊が設計した“勝利シナリオ”**だった。
4. 決行日
フォナ・マードにて、反乱軍が決起。
だが兵器庫に突入した瞬間──扉が閉鎖、鎖錠。
屋根の通気孔から、鎮静ガスが流れ込む。
数分で全員が倒れる。
同時刻、反乱計画に関与した者は全国で一斉に拘束。
彼らが使っていた「暗号通信」はすべて、依柊が設置した偽装回線だった。
5. 処罰
公開処刑は、1件も行われなかった。
代わりに、依柊はこう宣言する。
「本件に関わった者たちのうち、処罰の詳細は一切公開しない」
「ただ一つ確かなのは──彼らはもう、この国にはいないということです」
人々は怯えた。
姿を見せずに反乱を起こさせ、
戦わずに潰し、
罪を見せずに処罰する。
恐怖よりも深い、“不可視の支配”がそこにあった。
6. 関係者の末路(補足)
後日談として:
カラン将軍:“病死”として報道。家族は国外追放
彼の部下たち:全員、姿を消す
内通者:依柊により後に高位に抜擢(「報酬」も忘れない男)
権謀王の権謀術数(読者向け分析)
ステップ依柊の動き
情報収集魔導監視虫、偽通信網、密告システム
意図的な“勝てそう感”守備の手抜き、協力者、抜け道
作戦実行と制御無力化・ガス・拘束
処罰の演出情報を一切外に出さない“見えない恐怖”
「戦争を起こす者の心理には、**“勝てるという錯覚”**が必要だ。
それを与え、確信させ、最後に地面ごと崩せば、二度と立ち上がれない」
──それが、依柊の流儀。
この章の最後は、依柊が窓辺で報告を受けながら静かにこう言います:
「戦わないことが、最も美しい勝利だ」