第一節「名を正す者が、国を動かす」
第三章:反乱と粛清
第一節「名を正す者が、国を動かす」
アーマイア・コアの大講堂。
王座の上に、新たな王が立った。
満木翔璃ではない。
だが、誰もそれを指摘しない。
壇上には一枚の書状。
その上に、王が朗々と宣言する。
「本日をもって、我が国家はその名を改める」
「以後、この国は──トーカイハットウミ王国と称する」
ざわめきが広がる。だが、誰も反論はできない。
依柊は、静かにその意味を続ける。
「“トーカイ”は東の海。“ハットウミ”は発と海。
我々が地を治め、海へと広がり、知をもって法を発する国家であることの証」
「武で得た地を、法と理で治める。
これが、翔璃陛下より引き継いだ我が使命だ。」
その声は冷静で、揺るぎなかった。
一部の武将が眉をひそめる。
「王国?帝国じゃないのか……?」
「名前を変えたところで、誰が支配者かは……」
だが彼らもまた、依柊の“次の一手”を知らなかった。
第二節「名を変えるのは、意味を変えること」
依柊は数日後、全軍の階級名を一新。
従来の「将軍・団長・砲兵長」など軍事的肩書を、
すべて「行政指揮官・管区責任者・補給庁担当」へと変更した。
「戦争の時代は終わった」
「今必要なのは、“運営者”だ」
国家は、軍事から政治へ。
支配から統治へ。
野心の国から、構造の国へ。
第三節「旧名を語る者に死を」
そして密かに、各地で「滿木翔璃陛下万歳」と叫んだ者が逮捕されはじめた。
裁判なし。口封じ。
しかし依柊は公には手を汚さない。
すべては匿名の密告と、影の監視者たちの手によって行われる。
「旧き王を恋うるのは、過去を引きずる者だ。
我々は“未来に生きる国”として再構成されねばならない。」
トーカイハットウミ王国の名のもと、
依柊は歴史を書き換え始めた。
この改名の意図(世界観構築の裏)
「満木翔璃の帝国」は表向きに解体された=過去の戦争国家を終わらせた象徴
「トーカイハットウミ王国」は、未来志向・秩序主義・構造改革の国家
国名に“海”を入れたのは、領土拡大ではなく「貿易国家化」への伏線