ラスボス飛び石連休
ワシはこの世界の大魔王、冒険者が最後に辿り着く魔王城の主だ。
いわゆる「ラスボス」ということになる。
だが、だがしかしだな。
…暇なんじゃ。
ここ魔王城まで辿り着く冒険者は稀じゃ。最近はダンジョンの入り口に到達する者さえ絶えて久しい。
ううっ、まったく暇じゃわい!
「シレーヌ!アモン!」
ワシは二人の側近を呼んだ。
「はっ、お呼びですか。大魔王インヘルノ様」とアモン
「ご用は何でしょうか?我が主よ」とシレーヌ。
シレーヌは昔からワシの世話をしてくれている半分側仕えのような女性魔族じゃ。
「シレーヌ、暇じゃ。ちょ~っと南の街へ出かけるぞい」
「主、それはいかがなものかと」
「そうです。シレーヌの言う通りです。魔王たる者、そんなにフラフラとあちこち出歩くものではありません」
そう言ったのは男性魔族のアモンだ。こっちは最近になってシレーヌが採用した秘書で、有能ではあるが頭がカチコチで困る。
「うっさいわい!これじゃワシの身体もなまり放題じゃ。勇者とか来た時にそれじゃ困るじゃろうが」
「それはそうですが…」
シレーヌが考え込む。装いは秘書らしいスーツの上下だが、背中には白い翼が飛び出ている。
ワシの我が儘に困るとそれをパタパタさせるのが何とも愛らしい。
「シレーヌ、お前の翼がパタパタするのは可愛いの」
「…あ、主。そのようなお戯れを。んもう、…わかりました。今日だけですよ、外出は」
フフン、チョロいもんじゃ。
「いやいやいや、魔王様、駄目ですって。いったいどこへお出かけになるつもりですか」
石頭のアモンがまたいらんことを。
「この間、どっかの居酒屋でおいしい焼き鳥を食べたじゃろ。あの街がいい」
「な、何を言い出すんですか。あれは『はじまりの街』です。もう二度とラスボスが登場していい場所ではありません!却下です!」
アモンが眼を見開いてブンブン頭を振った。こいつは頭にコウモリのような黒い羽があって眼はつり目、興奮するとその瞳から炎がメラメラ飛び出してくる。
「アモン。お前、時々あの辺の街に出かけてラーメン食べたり、人間の女の子と遊んだりしとるじゃろう」
ワシはアモンの眼から出た炎を手のひらを振ってポフポフ消しながら、低い声で指摘する。
「…な、な、なんでそれを」
「フン、ベルゼブブに聞いたぞ。お前だってあの街にいたら、変じゃろうが」
四天王のベルゼブブは時々魔王宮まで来て、ワシとゲームとかして遊んでいくのじゃ。
奴からはいろんな情報が入ってくる。
「お前も四天王と同じくらいの実力じゃ。そのお前が出かける街にワシが遊びに行って何が悪い」
アモンは四天王なみの実力と言われて満更でもない表情をした後、ハッとする。
「い、いや、その魔王様。それにしたってゲーム初心者の集まるところにラスボスだなんてゲームバランスが」
出たわい。こいつの口癖じゃ。ゲームバランスとか何で魔族が考えにゃいかんのじゃ。
ワシの心を読んだかのようにシレーヌも嫌な顔をした。
「アモン、あなたはすでに大魔王インヘルノ様の従僕でしょう。ゲームバランスとか、そういう考え方は切り替えて魔王様の為だけに勤めなさい」
そう言ってアモンを睨む。アモンは顔を伏せた。
シレーヌが付け加える。
「もちろん、あなたなりに魔王様のことを気遣っての言葉でしょうし、私も主がやたらに出かけたがるのは良く思っておりませんが」
シレーヌが「切り替えろ」と言ったが、この世界は三つの立場が存在する。
プレーヤーすなわち勇者サイドとワシを頂点とする魔族サイド、そのふたつに加えてクリエーターサイドじゃ。
どうやらこの制作者の側の制約でワシは自由に動けない時と場所があるらしい。
人間の勇者なんぞは魔王の国に足を踏み入れた瞬間に魔族軍総掛かりとか、ワシが直接現地でやっつけちゃうとかしたら楽勝のはずなんじゃが、アモンいわく「それをやっちゃあ、お終いよ」ということなんだと。
勇者のレベルにあわせて小出しに魔物を送り込み、ちょっとずつダンジョンも攻略させ、魔王城に到達できるよう『いい塩梅』で邪魔をするようになっている。
よくよく考えるとワシらで勇者を育成しているようなもんじゃが、何か間違っておらんか。
だがアモンは言う。
「でもそうしないと魔王様、ず~~~っと暇ですよ。誰も魔王城来れませんよ。魔王様だけじゃなくて四天王だってその前の中ボスも丸っきり開店休業・閉店ガラガラです」
確かに。こうやってほんの時折とはいえ、勇者の来る緊張感を保つにはあんまり早めに壊滅させてはならんし、なにより魔王城がずっと平和ではワシの存在価値がなくなってしまう。
勇者が中ボスを何匹かボコボコにして、魔王城の入り口にいるベルゼブブもミンチにして(奴はそれでも数時間で生き返るんじゃ、心配ご無用)、そこでワシが『ブハハハ、よく来た、勇者よ。人間の分際でワシに逆らおうとはいい度胸じゃ。だが残念じゃったな。今からお前を絶望の淵に…』と啖呵を切ってこそ、見せ場となるというものだ。
あのセリフはシレーヌと何百回も練習したからの。時々は使わんと。
…とはいえ、側近がやたらゲームバランスなどと口にするのは不愉快じゃい。
ちょっと前までそっち側だったらしいからの、アモンは。
「アモン、まだ制作者側だった時の記憶が消せんのか」
ワシが奴の目を覗き込むとアモンはしょんぼりする。
「すみません、魔王様。そんな記憶は消去したつもりなのですが、時折ゲーム制作者だった時の思考が顔を出してしまいます。お許しを」
「まあ、よい。転生してここへ来るまでの長年の思考回路だったからの。だが、お前はもう魔王の側近じゃ。忘れるな」
「はっ。すべては魔王様のために。何なりと」
アモンが跪く。
「ウヒヒ。そいじゃ、行こうか♪。あの『はじまりの街』へ。アモンくん」
「…魔王様、それとこれとは」
「ぐはははは、うまいのお!人間の食い物は!」
ワシがモモと皮の串を手に大声で言うと、シレーヌが眉をひそめる。
「我が主、少しは自制してください。周りの眼が」
「ふむ、そうか。確かに目立つな。特にシレーヌの『我が主』という呼び方がな」
今度はネギマを口にしながら、ワシは人間に偽装した側近二人を交互に見た。
アモンがボンジリにかぶりつきながら眼を瞬かせる。
「魔王様でも我が主でもないとすれば…何とお呼びすれば?」
「ま、社長と秘書と平社員でいいじゃろ」
「えっ、私『ヒラ』ですか。ゲーム制作のチーフに昇進したばかりで転生して、今はようやく魔王様の側近まで出世したのに…」
ガッカリするアモンにシレーヌがレバーをさしだして微笑む。
「可愛いヒラ社員の阿茂さん、アーンして」
「な、何を、シレーヌ。いや秘書の白井さん、からかわないでください」
「ワハハ、何かお前らいいムードじゃのう」
「まお、…社長まで!」
などと生温いほのぼの系のやり取りをしつつ、おいしい焼き鳥と酒を楽しんでいた時じゃった。
眼をギラつかせた一行がワシらに因縁をつけてきた。
端正な顔立ちに凶悪な瞳というアンバランスな若い男、いかにも冒険者の風体でこいつが多分リーダーじゃろうな。腰の剣は勇者っぽいやつで判りやすい。
他に顔も身体も四角のいかつい男、こいつはレストランだというのに鎧まで着込んでいるから戦士だ。
少し長細い長身の男は僧侶、そしてリーダーの横できつい眼をしている女の子が魔法使い…まあ、典型的な勇者パーティじゃな。
居酒屋の入り口でワシらを見つけるなり、近寄ってきてテーブルの横に仁王立ちしおった。
「おい、怪しい奴らだな。何者だ」
…何じゃ、そりゃ。お前らに言われたくないわい。
しかし、なんだ。…ワシらって怪しいかぁ?
「社長、どうもプレーヤーは何となく魔物に反応しやすい仕様になっているようです」
「仕様て」
「このくらいの初心者だとちょっとした違和感なんでしょうけど」
アモンはそう言って勇者パーティを一人ずつ睨みつけた。
「うっ」「何だ、こいつ」「むむむっ」
明らかに一行が気後れする様子がわかって面白い。
「社長もういいでしょう。面白がってないでそろそろ帰りましょう」
シレーヌが促すが、こっちは何だか面白くない。いちゃもんつけられてシッポを巻くようで魔王の威厳が丸つぶれだ。
「ふふん、まあ待て。秘書の白井くん」
ワシは立ち上がって勇者に自分の顔を近づけた。
「ぐはああっ」
「ひいいいっ」
ワシがゲップをしただけなのに勇者は腰を抜かしてヘナヘナとそこに尻餅をついた。
「あああ、もうっ!社長。ゲームバランスが…」
アモンが嘆いてワシを見た。
「あいつらが実力差を感じてすぐに引き下がるくらいの『初心者の中でも上級者寄り』だったからよかったものの、ホントの本当の初心者だったらどうするつもりだったんですか、社長」
社長呼びが板についてきたの、アモン。
「パーティ全員ひねり潰すとどうなるのかね、平社員の阿茂くん」
「ゲームバランスをそこまで崩す因子は運営側が放っておきません。最悪、制作サイドが乗り出す可能性だって…うぐっ」
そこまで聞いていたシレーヌがアモンの口をふさぐ。
「運営がどうのとか、制作サイドがどうのって魔王様はねっ!この世界の頂点なのれすよっ。口を慎めっちゅうの!」
アモンが青くなって、元々青い顔なので元の色に戻りながら弁明する。
「す、すみません。けれど、大事な存在の方だからこそ妙なアクシデントを起こさないようにと」
「うるせえぞ、阿茂。てめえヒラのくせに」
シレーヌの手に怪鳥の爪が生えかかっている。完全に出来上がってしまったようだ。
「ひええっ、やめてください。白井の姉さん」
両頬から血が滴っているアモンが嬉しそうなのも微笑ましい。
「ワハハハ。白井くん、阿茂くん、楽しいなあ」
「楽しそうじゃな。お前ら」
その不遜な言葉遣い…今度は誰じゃい。ワシはその声の方角を見る。
ふうむ、なんじゃろう。ワシは自分に何となく似た雰囲気の初老の男から目が離せない。
居酒屋の入り口にはその初老の男、それに従うかのように若い男女の三人組が立っている。
どういうことじゃ。この世界では基本的に絶対的強者のはずのワシが冷や汗をかいている。
「お前は…誰じゃい」
ワシはつい震えてくる声を隠せない。
アモンもすっかり酔いの醒めた青白い顔に戻っている。
「…こんな馬鹿な」
シレーヌはすでにベロベロになっているため、焦点のあわない眼で3人組を見上げる。
「なんらの、このアホみたいな3人組」
どことなくアモンに似た若い男が顔をしかめたが、無視してアモンに言う。
「お前がこの世界の魔王の側近アモンか。俺はエイモンだ」
「や、やはりそっちは…裏の魔王…裏ボスか。なぜここにいる?ハアハア」
アモンはありえないものを見た恐怖で息が荒い。
「さすがはクリエーター側からの転生者だ。わかりが早い」
エイモンと呼ばれたアモンもどきが嫌な笑い方をした。
もう一人のシレーヌによく似た女が鋭い犬歯をチラリと見せて微笑む。
「あんまり脅かすもんではなくてよ、エイモン。私は裏の魔王様の側近、シレウィーヌ。そっちの酔っ払いがこっちの世界の私ってこと?がっかりね」
「何ら、テメー。やるんか、こら。しばくぞ」
シレーヌが呂律の回らない舌で怒鳴って立ち上がりかけた。
「駄目だ!シレーヌ。手を出すな!」
アモンが慌ててシレーヌを押さえ、自分が前に立つ。
「裏の世界の魔王…さま?何故ここに?」
「暇だからに決まっとるじゃろうが!」
その言葉にアモンがガックリと腰をおろした。
「そ、そんな子供みたいな特徴が裏表で反映されているとは」
「アモン、誰なんじゃ、その裏ボスとは」
ワシの問いかけにアモンがチラチラと3人組を見ながら説明する。
「魔王様、ゲーム上のシステムで…あなたが勇者に倒された後、あなたの玉座の後ろに回り込んで聖剣を紋章に突き刺すと…」
裏の魔王が続ける。
「そうじゃ。プレーヤーはワシの世界に飛び込み、冒険の第2弾が始まるのじゃ…で、よかったかの?エイモン?」
「その通りです。裏大魔王インヘールナル様」
ふむ。多分このエイモンという奴も制作側からの転生者なのだな。
「私たちの主、インヘールナル大魔王様にかかれば、あなた達なんて瞬殺よ。ホホホホホ」
シレウィーヌの言葉に反応した酔っ払いのシレーヌが立ち上がる。
「なんですってえ。しょうもらいこと言うとぶっとばすわよ!」
「ま、待て待て待つんだ」
アモンがまたシレーヌを抑え込んだ。
「なあによ!その女、気に食わらいわ。はっ、アモン。まさかアンタああいう年増が好みなの?」
シレーヌが手足をバタバタさせると、今度はシレウィーヌが掴みかかろうとする。
「何ですって!誰が年増よ!あんたと設定上は同年齢よ!この酔っ払い女!」
「えええい!いい加減にせんかい!」
ワシは一喝して裏ボスとやらを見る。
「つまりお主はワシの影で、ワシよりも少しばかり実力が上ということか」
「そりゃ向かい合えばわかるじゃろ。ただまあ、少しの差じゃ。うちの側近の言うように瞬殺とはならんじゃろうが、ワシの勝ちは間違いない」
裏ボスのインヘールナルがムハハと笑った。
「しかし、こんな暴挙を…ラスボスと裏のラスボスが『はじまりの街』でケンカなどありえない。ゲームバランスがめちゃくちゃだ」
アモンの嘆きをエイモンが冷たい眼で見る。
「お前らに言われたくないな。お前達はとっくにあっちこっちへ出現してるだろうが」
それからため息をついた。
「まあ…どっちの魔王もこんなんでゲームバランスの問題は確かに…あるがな」
なんじゃい、こいつもやっぱ石頭なんじゃな。ワシは二人を見較べた。
インヘールナルもまたアモンとエイモン、二人の転生者を見て不機嫌そうじゃ。
「あのな、ゲームバランスといえばな、これまで裏の世界にやってこれた冒険者は一人もおらんぞ。そこの馬鹿魔王が全部阻止してしまって、ワシは一度も出番なしじゃい。こっちの方が問題じゃろうが!」
そりゃそうじゃ。ワシらは基本打ち負かされて死んだとしてもしばらくしたら蘇ることが出来る。
しかし…そういえばワシは死んだ記憶がない。つまり表のゲームをクリアできたプレーヤーはおらんことになる。
「では…お主は今まで何しとったんじゃ」
「暇で暇で暇で暇で(×10)どーしよーーーもなかったわいな!」
裏魔王インへールナルが叫んだ。
「表の魔王インヘルノを上回る魔力を持ちながら…一切出番がないという我が主インヘールナル様、何とおいたわしや」
シレウィーヌがハンカチで目頭を抑えた。
「確かに気の毒ですが…それでもここはあなた方が登場していいような場所ではないでしょう」
アモンが生真面目に指摘した。
「お前らが言うな!」
エイモンがアモンを指さした。
「じゃあ何か?ここへ来たのは要するに」
ワシの言葉を最後まで聞かず裏魔王インへルナールはまた叫ぶ。
「只の暇つぶしじゃあっ!悪いかあっ!」
どうやら裏魔王の一行はワシらより少しだけ強いが、圧倒的ということでもないようだった。
戦えばワシらが敗れるじゃろうが、相手も大ダメージを受けることになる。
そして戦う理由は特にない。お互い暇で暇で仕方ないだけじゃ。
結局ワシらはその後大いに語り、飲み食いして意気投合したのじゃ。
シレーヌとシレウィーヌなどは表と裏の魔王に仕える苦労で愚痴を零し合い、終いには肩を組み合って酔い潰れる有様じゃった。
「ギャハハハ、魔王軍バンザーイ!」
「裏魔王様、最高っ!」
「ワハハハ、ゲームバランスなんて糞くらえーっ!」
「そうじゃそうじゃ!ゲームバランスなんてぶっこわせーっ!」
「うひゃひゃひゃっ、ぶっこわせーーっ!」
そんな夜が更けてきたところにまた違う気配がする。
ワシらは魔王同士で顔を見合わせ、側近のアモンとエイモンの背筋が伸びる。
シレーヌとシレウィーヌは酔い潰れて眠っていたが。
この世界では見かけない風体の男が店の入り口に立った。
背広に銀縁眼鏡、中肉中背で大きな特徴はないが異様な存在感、魔力は一切感じ取れないのに立ち昇るこのどす黒いオーラはなんじゃ。
「どうなってるんだ、このゲームは」
背広眼鏡の男がワシらなど眼中にないように店内を見回す。
アモンの様子がおかしい。
飲み過ぎたのかと思ったが、裏ボスと出会った時よりも遙かに緊張しておる。
「あ、あ、あなたは」
背広の男がアモンとエイモンに声をかけた。
「よう、阿茂。栄藻田。どっちも魔王の側近とは出世した……のかな?まあどうでもいいが」
「開発部長…なぜゲームの中に」
エイモンの言葉がブルブル震え、膝がガクガク揺れている。
「誰なんじゃ、アモン」
ワシの言葉に答えたのはアモンではなく背広の男の方じゃった。
「この世界の創世神。つまりクリエーター…の上司ですよ」
「魔王様、ゲームの制作サイドの頂点です。鈴木開発部長…私達の元上司です」
アモンは倒れそうだ。エイモンも貧血気味にフラついている。
「ユーザーから苦情が来てますよ。最近ゲームの序盤で変に強い魔物が出現したり、魔王城などはまるで攻略できる気配がないと。そして明らかにここの世界観とは違うカラーのモンスターが現れたり…」
「違うカラーって、そりゃ裏ボスの仕業じゃ、カイハツブチョー」
ワシはインへルナールの方をチラリと見た。
「ひ、暇だったんじゃ。許せ。設定を崩すつもりはなかったんじゃ」
インへルナールが緑色の顔を赤くして…したがって補色混合で黒い顔になって言い訳をした。
「しかし…鈴木部長、部長はどうしてゲーム内に…」
アモンが声を潜め、エイモンは恐る恐る質問する。
「そ、それよりも、私たちに何かペナルティとか…」
「お前達がいればきちんと管理するかと思ったんだが…一度全部デリートするか」
カイハツブチョーの声は冷たい。
「こ、今後はきちんと、そのゲームバランスを」
「だ、ダイジョーブです。ですです。はい」
「何卒、しばらく…そのしばらく」
アモンとエイモンが弁解している最中にワシと裏ボスはコソコソと店から出て行こうとした。
何だかわからんがこのカイハツブチョーには敵うはずがない気がしたのじゃ。
ワシはシレーヌを裏ボスの方はシレウィーヌをかついで店の裏口へと向かう。
「ちょっと待ちな。裏表の魔王ども!」
カイハツブチョーが呼び止めた。
「まったく…ちょっと懲らしめる必要があるな。お前らは」
アモンは必死にカイハツブチョーにとりすがった。
「部長!部長!こんな『はじまりの街』なんかでラスボスや裏ボスがやっつけられたら大変です。ほらあの、そのつまり」
ワシと裏ボスが声を合わせる。
「そ、そうじゃ!ゲームバランスが崩れるわーい!」