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物理系魔法少女、筋力は機械生命体に勝る

 おお! ザ、ロボットって感じの魔物を発見した。


 駆動音が男のロマンを呼び起こす。


 「あのロボットに乗れたりとかしないのかな? てか、普通に銃っぽいの使うのね」


 銃口がロボットの両サイドに付いている。


 戦ってみたいけど、怖いので遮蔽物を利用しながら移動する。


 一番上が一階とされて、下に行くほど階層は増えるので頭がややこしくなる。


 下に行くには専用のエレベーターがあるらしく、そこまで移動する必要がある。


 指名依頼のボーナス的な感じで、一階から四階までの地図はスマホに入っている。


 GPS機能は使えないので、現在地は分からない。


 配信はさすがにできない。


 一種の妨害電波があるらしく、俺のドローンカメラでは撮影できないのと、純粋にカメラを気にする余裕は無い。


 だから見た目もプライベートにしようかと思ったけど、アカツキちゃんの肉体に慣れすぎたので、変えるのも億劫に感じる。


 このままでも良いだろう。


 「見た目が抽象的すぎたけど、大丈夫だよな。えーと、なんたらギアだっけ? コアだっけ?」


 カタカナが長く並んでいた気がするけど、覚えてないや。


 地図をこまめに確認して、進む。


 「おお。動物に機械を取り付けたような感じのもあるのか。サイボーグ的な?」


 ま、見つかる事は無いだろうから慎重に移動すれば良いか。


 ほれ、しっし。


 「なーんで、こっちを見てるのかな?」


 あ、装備してあるミニガン的な物の銃口をこっちに向けた。


 これはあれか?


 アンチセンサーの能力が無い装備をした人物が俺の後ろにでも隠れているのかな?


 そんな訳無いよね〜。


 つまりは、俺を完全に認識してますと⋯⋯あぁ、動き出した。


 「くっそ! このマント不良品かよ! 文句言って全額返してもらうぞマジで! ついでに賠償もしてもらおう」


 遮蔽物が穴だらけになった。避けて正解だったな。


 大きな虎だ。外には居ないレベルのサイズ。


 そこに銃やら赤い線のゴーグルみたいな何かを着けてる。


 あれがセンサーなのは間違い無い。


 「虎だから音とか声とかでも気づけたのかな? そんなセンサー以外のところの対策はしてない。つーか、聞いてないよ紗奈ちゃん」


 紗奈ちゃんのミス?


 とは考えにくいな。


 って、考えるのは後か。


 銃撃を受けない為に逃げ回るので精一杯だ。


 あー違うか。逃げてれば当たらないのか。


 じゃあ、弧を描くように逃げ回りながらジリジリと距離を詰めていけば、いずれは攻撃できる訳だ。


 「そら、一発目だ!」


 まずは拳でどのくらいの強度か試させてもらうぜ!


 お、さすがは猫科と言うべきか⋯⋯反応速度が凄いな。


 初撃をステップで避けられたが、片方の銃は潰した。


 「って、普通に爪攻撃もして来るんかい!」


 だが、近接攻撃なら尚の事俺好みだ。


 ステッキをバットに変えて、衝突させる。


 お、中々の力だな。


 「でもなぁ。虎程度に力は負けらんねぇよ。機械を装備したお前に、筋力で負けるか!」


 押し返した。けど、相手は銃を乱射して来るんだよな。


 「あれ? 普通に見えるな」


 少しだけゆっくりに見える弾丸をバットで弾く。


 この意識が凄く速く動いている感じは、音の使徒での戦いに似ている。


 右側だけしか残ってないから、散らばる場所も限られる。


 「銃のない方から攻めるのが確実か? いや、そのくらい読まれそうだな。戦闘の駆け引きとか分かんねー」


 足に力を込めて、ステッキを盾にする。


 色々な物になり代われるのが、ご都合ステッキの良いところだ。


 防げれるのなら、後は走るだけだ。


 直線で突っ込んだら、相手は俺の横側に移動して攻撃して来るだろう。そこを反撃で倒す。


 「⋯⋯ん?」


 さっきまでそんな位置には無かっただろうミニガンさん。なぜ貴様は斜めの方向から俺を見下ろしている?


 ⋯⋯死角からの攻撃か。たまたま見れて反応できて良かった。


 そうじゃなかったら、今頃床のように蜂の巣になってたわ。


 「盾を構える事でできる死角からの攻撃⋯⋯それにその付属した銃って、伸ばせるのかよ」


 虎は動いてない。銃の部分だけ動かして攻撃して来た。


 そんな事もできるのかと、感心している場合では無い。


 推奨レベル3と言われたけど、賢い分厄介だぞ。


 「まぁただ、俺的にはこっちの方が嬉しいけどな」


 魔法を使ってこないから、魔法を掴んで投げ飛ばす俺の十八番ができない。


 だけど、どこぞのリッチやゾンビのように再生したりとか耐性が高いとかじゃない。


 「殴ったら簡単に倒せる。マジで最高だよな」


 盾もバットももう要らねぇ。


 相手の底は見えた。


 なら後は⋯⋯全力で殴るのみ。


 「必殺マジカルシリーズ、本気走り(マジカルダッシュ)


 再び放たれる銃弾の雨を掻い潜り、懐に到着した。


 強く拳を固め、走った勢いをそのまま拳に乗せる。


 「なんだお前。これには反応できんのか?」


 それとも撃っている間は動けないのか?


 どうでも良いな。


 これで、終わりだ。


 「しゃっらあ!」


 ふさりとした毛皮であり、生物感がかなりあった。


 そんな部分を殴って、弾き飛ばす。


 かなり高く飛んでから、床に向かって落下して強い音を出した。


 確実に絶命した。


 「お、本当に魔石じゃないんだ」


 このダンジョンの魔物は倒すと魔石ではなく、エーテルリアクターと言う機械のコアがドロップする。


 この、『エーテルリアクター』と言う単語が心に刺さり、覚えている。むしろこれだけしか覚えてないのかもしれない。


 「これ、依頼品が分からずに彷徨う⋯⋯とかはヤバいかもしれん。帰り道が分からなくなるし、落下も避けたいな。先進むか」


 もちろんドロップアイテムは回収する。金は欲しい。


 これはしかたないバトルであり、決して自ら挑んだ訳じゃない。


 必死に説得したら、紗奈ちゃんも分かってくれるはずだ。

お読みいただきありがとうございます

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