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物理系魔法少女、ぬぉぉおおおお(※ごちゃごちゃな感情を表しています)

 自分の中に秘めているモノを言葉に変換して全てを伝える事は不可能に近い程に難しい。


 喋っている途中で頭が真っ白になり、考えていた言葉を忘れて思いついた言葉を出すだけに終わってしまう。


 だから時々言葉につまり、そして安っぽい言葉になる。


 長々と身の上話をしたところで何も変わらない。強いて言うのなら、俺がどれだけ最低なのかを物語っただけだ。


 紗奈ちゃんの事をいくら『好き』だと言葉を並べたところで、真に自分の心を伝えられたとは思わない。


 だけど、否定されようとも俺は紗奈ちゃんが好きだ。


 俺が俺自身に言い訳をしない、否定しない。


 今まで逃げた分、全力以上の力で向き合う必要があるんだ。


 「はぁ」


 数時間にも感じられた長い沈黙の後、紗奈ちゃん父は深く重いため息を吐いた。


 「おめぇさんがどんな想いでここに来て、頭を下げたか十分に理解した。娘を任せたいとは、思わない」


 歯を食いしばる。


 「娘と支え合っていきたいと言ったな。その言葉に嘘は無いな。俺はそう感じた」


 「はい」


 「ならば、結婚は許す。だが、支えられるだけの存在に成り下がったら、覚悟しておけ」


 「もちろんです!」


 認められた、と言う事なのだろう。


 緊張の糸が切れたせいか、足に力が入らなくて正座が上手くできない。


 紗奈ちゃん父は察しが良いのだろう。


 俺の気持ちを分かってくれたのかもしれない。


 「んで、会社をクビになって探索者ってのは、どういうこった?」


 「あらあら」


 紗奈ちゃん母が昼食の準備を始め、紗奈ちゃんも手伝いをする。


 俺は社会人生活、そして探索者生活の話を詳しく話した。


 「脱サラして探索者として成功した例は多くは無いがある。おめぇさんもその一人って訳だ。実際、月の収益はどんな感じだ?」


 「そうですね。社会人時代の数倍はあります」


 「夢が広がるなぁ。しかし、年もあるし長くは続かないだろ?」


 確かにその通りだ。


 だけど俺の場合は魔法少女になるので、その辺は気にする必要は無いかもしれない。


 それを言ったら軽蔑されそうなので、さすがに言えないけど。


 「その通りです。老後も安心できるように貯金をしてく所存です」


 「成功した探索者の殆どがその道に行く。だが真の探索者はそれでも未知を求めると聞くが⋯⋯おめぇさんは?」


 「正直に申し上げますと、金さえ稼げれば良いかなって」


 そう言うと、真っ白な歯をむき出しにするくらいの笑顔を見せる。


 「正直者は嫌いじゃねぇ。それに大学時代におめぇさんの人柄は聞いてたからなぁ」


 紗奈ちゃんは一体何を話していたのか、それはすごく気になる。


 「アイツも昔は探索者で金を稼いで、学費やらなんやら自分で払って、家にまで金を入れてくれた良い子なんだ。不幸になって欲しくない。幸せになって欲しい」


 任せてくださいと言えたら、俺はどれだけかっこいい人間なのだろうか。


 そんな言葉を口にできるほど、俺は立派な人間じゃないと自覚する。


 だけど、一言だけは言える。


 「不幸にはしません」


 もしも俺が原因で不幸になるのなら、即刻離れる覚悟はある。


 「そうか。経済的に心配はいらないんだな?」


 「それがですね。どうにも今の状態だと紗奈さんの貯金額を越えられそうにないんですよ」


 「は?」


 今の生活費は全部俺が払っている。家事全般を任せてしまっているしね。


 手伝ってはいるが、毎回ご飯を作るのは紗奈ちゃんだ。一番上手いので。


 だからって貯金できない訳じゃないし、社会人時代と比べたら貯まる方だ。


 だが、紗奈ちゃんの貯金額は億に上るため、未だに追いつけるビジョンが見えない。


 「そんなに探索者って儲かるのか⋯⋯」


 「あそこまで行くのはひと握りの人間だけらしいです。自分もそうなれるように精進して行く所存ですが、すごく高い気がします」


 「そんなに金があんなら、なんでギルド職員なんてしてんだ?」


 「安定志向なのでしょう。それか恩返し? 支部長さんにはお世話になったらしいので」


 詳しくは聞いた事ないのでなんとも言えないのが事実だ。


 その後は晩御飯を頂いて、泊めてもらわせられる事になった。


 紗奈ちゃん父⋯⋯義父と義母とで酒を飲みながら、会話を重ねる。


 紗奈ちゃんをどれだけ大切にしているかが伝わって来て、俺の心を締め付けてくる話だった。


 ちなみに義母さんも元探索者らしい。


 幼少期から紗奈ちゃんに武芸を少しだけ教えて、身を守る術を叩き込んだらしい。


 今なら魔法で一発だろうけど、それは知らないらしい。


 ちなみに紗奈ちゃんの酒癖を知らない義両親は紗奈ちゃんに酒を飲ませた。


 度数の高い酒ではないので、大丈夫だと思っていたが、飲み過ぎは良くない。


 止めようとしたけどそんな空気にはならず、紗奈ちゃんは酔った。


 「これで憂いなく入籍だぁ!」


 「ちょ、紗奈ちゃん! 秋も半ばで寒いから、今は落ち着こう!」


 冷気を周囲にばらまいて、家の中を冷やしていく。


 義父さんの酔いが覚めた。


 「あとはぁ星夜しゃんのご家族に挨拶して、市役所行くぅのだぁ!」


 「あらあら」


 義母さんが紗奈ちゃんの背後に行き、素早く手が動いたかと思ったら紗奈ちゃんは寝た。


 一体何をしたのか、義父と一緒に戸惑っているが、何も教えてはくれなかった。


 紗奈ちゃんを部屋まで運んだ。

お読みいただきありがとうございます!

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